世界の教室から 各国の消費者教育(1) 新たなステージへ

横浜国立大学名誉教授 西村 隆男

消費者教育は、毎日の生活のなかで、さまざまな機会での意思決定や批判的思考力の能力を高めることにより、自分自身ばかりでなく、他者や社会をもより良いものに作り上げていくための学びです。

本シリーズでは、地球上で実践されている消費者教育を幅広く紹介します。おそらくは明日の授業のヒントになるものばかりでしょう。

消費者教育は、今回の学習指導要領改訂では、外国語教育、主権者教育などと並び、特に重視する教育として位置付けられ、最近保護者向けに配布された文科省パンフでも明示されています。

例えば、小学校3年社会科では、商店の学習のなかで「消費者の多様な願い」の理解が、家庭科では、「売買契約の基礎」が加わっています。

中学校社会では、消費者が「公正で持続可能な社会の形成」に参画することを取り上げ、技術・家庭では、高校で扱われていた「クレジット契約」(三者間契約)や「消費者被害の背景」が入ってきました。

高校で新科目「公共」が始まり、「多様な契約」や「私法に関する基本的な考え方」を扱います。

これらの改訂は大きな変化といえるでしょう。もちろん、背景には昨年6月の、民法の120年ぶりの改正によって、成年年齢の引き下げがあります。成人=20歳(はたち)から成人=18歳への大幅な変化です。契約の未成年者取消権が18歳、19歳の若者には適用されなくなるものです。

2022年の4月以降は、高校3年で迎える誕生日に成人になっていきます。18歳選挙権での政治参加に加え、経済社会への参加の責任がもとめられることになりました。したがって、買うか買わないかの選択は、これまで以上に、より慎重に行われる必要があると言えます。

スウェーデンの消費者教育

さて、考える消費者を育てる教育は、北欧では早くから実践されてきました。古くはマルメプロジェクトと呼ばれるスウェーデンの消費者教育がよく紹介されました。北欧では自立を促す教育に重点がおかれ、幼少期から、あらゆる教科で生活力を鍛えるプログラムが実施されてきました。

1970年代には、マルメ教育大学に設置された北欧4カ国の協議機関によって、教材や指導法などの研究開発が進められ、消費者教育を独立教科とはせずに、従来の教科に統合的に行う方式を採用しました。例えば広告宣伝の表現と影響力を考えさせることを、国語や図工で扱う例などが挙げられるでしょう。

同時に欧州をはじめ海外では80年代以降、環境破壊の深刻化に対応する教育カリキュラムの開発が進み、環境教育やESDの進展へとつながっていきます。今日では、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)を推進する教育との連携へと、消費者教育も進化してきています。

日本では特に、2012年に制定された消費者教育推進法によって、持続可能な社会構築へ向け、将来世代への社会的経済的影響力をも意識した消費選択の重要性を認識する消費者教育が注目され広がってきています。

新たなステージに入る消費者教育の充実に向け、次回からは、スペイン、オーストラリア、韓国、フィンランド、スウェーデンと順に紹介していきます。どうぞお楽しみに。

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