世界の教室から 北欧の教育最前線(23) 思考力を育み評価する高校の試験

スウェーデンの高校では、いろいろな教科でレポートやプレゼン課題が出され、その評価が成績に反映される。思考力や表現力を育成し評価するための課題や、その条件整備について紹介する。


学年末にレポートとプレゼン

学年末が約1カ月後に迫った5月、ウプサラ市の高校2年生の教室を訪れた。生徒たちはこれまで学んできた美術史からひとつの時代を選び、時代背景とアートの特徴についてレポートとプレゼン資料を作成し、それらを用いて口頭発表をする課題に取り組んでいた。これは歴史(文化・美術史)の授業の学年末課題だという。

生徒らは、個人あるいはペアで「シュールレアリスム」「印象派」「ロココ」などのトピックを選び、インターネットで関連する動画を見たり、紙の資料を読んだり、考えをメモしたりしていた。不安そうに、教師に口頭発表のスケジュールを確認している生徒もいた。

この課題は授業6回分、合計約7時間半を使って行われる。宿題として家庭で作業を続けてもよい。担当のマリア先生によると、授業中に作業させることで盗作を防ぎ、どのようなプロセスで取り組むかを生徒と話し合い、指導することができるという。

カートで運び込まれた参考文献

課題を遂行するために、先生はさまざまなサポートを提供していた。レポートの骨子をまとめるのに役立つ質問を書いたプリント、ショッピングカートいっぱいに積まれた文献、先輩のレポートやプレゼン資料の例示、参考文献の書き方や概要の紹介である。授業中には、一人一人の机をまわってサポートしており、この課題が試験であると同時に、課題遂行の過程が学習にもなっていた。

論述・口頭発表の評価方法

こうした課題はどう評価されるのか。基本的には、ナショナルカリキュラムに記されている成績A、C、Eの習熟度が基準となる。

例えば、上述した歴史の評価基準の一部を紹介すると、「さまざまな時代の変化の過程、出来事、人物について簡単に描写することができる」とE、「詳細に」描写できるとC、さらに「詳細かつ繊細に」描写できるとAと定められている。こうした基準は、本連載第16回で述べられているように、小学校から成人教育までのすべての科目について記載されている。

マリア先生は、ナショナルカリキュラムをもとに、授業で行う課題に関する具体的な評価基準を作成し、それを用いてレポートや発表を評価するという。評価基準は生徒にも共有される。

このように評価基準がはっきりとしていることは、不合格になる生徒も当然いることを意味する。

評価を支える仕組み

こうした論述課題や口頭発表課題は、確実に遂行すれば、いわゆる思考力や表現力の育成と評価につながるに違いない。しかし、評価基準の整備など、実現にはさまざまな条件が必要であることも確かだ。

課題遂行をサポートする教師

スウェーデンでは、ナショナルカリキュラムで評価基準を詳細に記載しているほか、学校教育庁は評価のサポートのためのポータルを持っており、いくつかの科目に関して評価課題の例も提供している。教師が課題を工夫できるように、土台が整えられていると言える。

高校生の思考力や表現力を育み評価するようなレポートやプレゼン課題は、全国的によく整備されたシステムの上で、教師の創意工夫が生かされている事例と言えるだろう。

(中田麗子=なかた・れいこ ウプサラ大学教育学部客員研究員。専門は比較教育学)

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