世界の教室から 各国の消費者教育(2)スペインの消費者教育(上)

(公財)消費者教育支援センター総括主任研究員 柿野 成美

海外の消費者教育情報の第1弾は、スペインを紹介します。筆者がスペインを訪問したのは2011年3月、くしくも東日本大震災の混乱のさなかでした。

訪問先にスペインを選んだ理由は、消費者教育の実践を進める教員のネットワーク組織E-Consの本部が、カンタブリア州サンタンデールに存在していたためです。

E-Consの発足の経緯は、欧州委員会の助成金を受けて発足した「ヨーロッパコンシューマースクール」(1996-2009)の活動であり、そこでさまざまな消費者教育の教材や実践が生まれました。

今回は、スペインの国および各地の自治州が取り組む具体例(消費者教育センター)をご紹介したいと思います。

「責任ある消費者」を育む

スペインでは、1978年に制定された憲法の「消費者および利用者の保護」(51条)を法的根拠として、消費者教育が行われています。地方自治が進むスペインでは、消費者政策が自治州に権限委譲され、国レベルの消費者庁では主に調整機能を担っています。

2009年、OECDではスペインや日本を含む世界各国に対して消費者教育の実態調査を行い、さらに08年に開催された国連マラケッシュ・タスクフォースと国連環境計画が開催したステークホルダー会議の結果などを踏まえて、「消費者教育の政策提言」を出していました。

このような国際的な流れを受けて、スペインでは、「責任ある消費者」を育てることを目的とした消費者教育を進めているという話を当時、お聞きしました。その具体例は、「CONSUMOPOLIS」というWEB教材で、現在まで毎年実施されている学生対象のコンテストです。

WEB教材のコンセプトは「責任ある消費の街」
WEB教材「CONSUMOPOLIS」

このWEB教材は全国の小中学生を対象としたもので、「責任ある消費」をテーマに仮想都市で、教員が編成した5人で一組のチームがクイズの得点を競い合うコンセプトです。参加者は、キャラクターのニックネームや属性などをカスタマイズすることができ、ゲームを攻略するような感覚で取り組めます。

テーマには、食品、省エネ、おもちゃの購入の安全性や消費者の権利と義務などがあり、これらの質問に答えて学校ごとに得点を競います。また、チームワークを評価する方法として、責任ある消費や健康的な生活についての映像、ポスターをグループで作成し、全国のチームと競い合う仕組みも用意されています。

この教材の目的は、チームワークの大切さと、チームや家族との話し合いにより、答えを求めるそのプロセスを学ぶことです。そのため、質問の中には「1カ月の電気代はいくらか」など、家庭で調べなければ答えが出せない問題も含まれています。

参加者の中で最高得点だった子供たちの学校は、マドリッドの会場で行われる表彰式に招待され、表彰されるそうです。18年度には、全国で1万350人の小中学生が参加する取り組みになっています。

(参考文献)消費者教育支援センター「海外における消費者教育2011 韓国・スペイン・PERL」