ペアレンツ・リレーションのダイバーシティとは(中)

「対話」は屋台骨
――より良いペアレンツ・リレーションを構築するために、教職員が取るべき具体的なアクションは、どのようなものがありますか。

非常にシンプルで、「直接会って話す」ことです。自分に見えているのは相手の一部分にすぎないので、相手を理解するためには、対話を通じてさまざまな背景を知る必要があります。

ITの進化に伴い、日常生活のコミュニケーションツールはメールやメッセンジャーなどが主流になってきています。しかし、ITに頼りすぎるとミス・コミュニケーションが生まれやすい。

特に、保護者の方が何かしらの不安を感じている場合、それがどのようなものかはメールの文面や電話だけでは推し量れないものがあります。そのため、可能な限り直接会って面談させていただくようにしています。

――教員の働き方改革が叫ばれる中、保護者と面談を行うのは大変ではないでしょうか。
「対話を何より大切にしている」と語る佐藤校長

長時間労働は解決すべき課題ですが、教員の中には「やりたい」という気持ちもあるんです。保護者が不安を抱えているのに、教員が自分たちの労働時間削減を優先しているようでは、正直、何のための働き方改革なのかと感じてしまいます。

例えば、雨風が強い日に生徒を心配して私が校門に立っていると、保護者の方から「ありがとうございます」とお声がけいただくことがあります。また、夕方さほど遅くない時間帯に校内の電気がついているのを見て「遅くまでお疲れさまです。先生方もご自愛くださいね」と言ってくださる方もいます。

そんな風に声をかけてもらうと、ありがたいという気持ちと同時に、「私たちも自分の体を大切にしなきゃ」と素直に思えます。働き方改革は重要な課題ですが、教師としての働く喜びや、やりがいをいかにつくるかという視点でも議論してほしいと思います。

ちょっとしたことですが、教員の「子供を思いやる気持ち」が保護者に伝われば良い関係性が築かれ、共に助け合いながら学校運営を進化させていけると思います。

そのためにも、保護者が「声をかけやすい」「悩みや不安を相談しやすい」と感じられるような、オープンな学校であることが重要だと考えています。

「開かれた学校」を支えるシステム
――保護者にとってオープンな学校であるために、どんな取り組みをしていますか?
ドアがいつも開け放たれている校長室

「話しかけやすさ」も、個人の主観で変わりますよね。人それぞれ個性があり、相性もある。そんな中、「相談はまず担任へ」みたいな仕組みにしてしまうと、何となくソリが合わず、相談しにくさを感じる人がいるかもしれません。そのため、保護者の方には、「担任や学年主任に限らず、誰にご相談いただいても大丈夫です」とお伝えしています。

私は教職員に対しても、「何かあれば、相談しやすい人に相談してください」と言っています。学年主任でも構いませんし、それ以外の教員でも構いません。もちろん、私に相談してもらっても大丈夫です。

他には、「物理的なオープンさ」も大切かもしれません。本校は今年4月に開校したばかりの新しい学校なため、校舎の施設・設備も斬新な工夫が施されています。基本的に教室も職員室もガラス張りで、外から中の様子が分かります。

校長室のドアは、基本的にいつも開けっ放しです。私が小学生だった頃、校長室の中なんて入ったことがなかったし、当時は校長先生に対しても、どこか怖そうなイメージを抱いていました。

実際には、「校長先生=偉い」ということはなく、「学校の教員は職業的に尊敬されるべし」という社会的な風潮も変化してきています。

「絶対解」がなくなってきている時代だからこそ、何か問題が発生したら、教職員と保護者が一緒になって対応策を協議できる、そんな土壌が必要です。「一緒に考えていきましょう」と言うことができれば、解決策は出てこなくても、みんなが納得した策を見つけることはできます。

そのためには、やはり対話が大切で、同じ目線で対等に話をしなければなりません。私たち教師の方も、「正解」を持っていませんからね。そういう時代だと教職員は認識する必要があります。

システムからこぼれ落ちるものへのケア
――小学生の保護者から、「欠席時の連絡手段がアナログすぎて非効率」という声を聞きます。
ガラス張りの職員室はいつでも中の様子がうかがえる

保護者が欠席の連絡をしようとしたのに、1本しかない電話回線が使用中でつながらないことがあります。また、連絡帳を近所の友達に託すという方法について、非効率だと感じるのもよく分かります。本校も、現在は連絡帳を託すシステムをとっていますが、この方法がベストだと思っているわけではありません。

ただ、このシステムには目的があって、近所で助け合える人、相談し合える人を保護者の方々につくってほしいという願いが込められているのです。効率性だけを求めるならメールやFAXの方が良いのでしょうが、明確な意図を持ってアナログ方式を残しているわけです。

もう一つ、私は「どんなシステムも万能ではない」という考え方も大切にしています。例えば、小学校で配布するプリント類にはふりがなをつけることが多いのですが、とある外国人の保護者から「ふりがなは電子辞書を持ち歩いている人にとっては便利だが、私は電子辞書を持っていない。ふりがなよりイラストを描いてもらえたら、何の話なのかすぐ理解できる」というお声をいただいたことがあります。なるほどと思いました。

私たち学校関係者は、システムからこぼれ落ちる人の声にも耳を傾けなければいけません。画一的な対応だけでなく、個別対応も含めて全体をケアしていく必要があります。

基本的なシステム・ルールは整えつつ、いざという時には柔軟に対応する、ダブルもしくはトリプルスタンダードが必要なのです。

次回は、若手教員がペアレンツ・リレーションにおいて注力すべきポイントを聞く。

(先を生きる取材班)