OECD国際教員指導環境調査 TALIS2018 詳報

6月19日に発表された、経済協力開発機構(OECD)による国際教員指導環境調査(TALIS)2018の報告書では、国際比較から日本の教員の長時間労働が改めて示されただけでなく、若手教員の増加や職能開発への参加状況など、さまざまな課題が浮き彫りとなった。国立教育政策研究所が作成したTALIS2018の報告書から分かった、日本の教員を巡る諸課題をリポートする。


1. 日本は小学校も参加したTALIS2018

TALISは教員・校長の勤務環境や学校の学習環境に焦点を当てた国際調査で、2008年に第1回、13年に第2回を実施。今回は3回目の調査となる。日本は第2回から参加し、今回から中学校(前期中等教育段階)に加え、小学校(初等教育段階)も参加した。

調査に参加した国・地域ごとに小学校200校、中学校200校を抽出し、1校につき非常勤を含む教員20人と校長を対象にした。中学校は48カ国・地域が参加し、小学校はそのうち15カ国・地域が参加した。小学校については、参加国・地域が少ないため、参加国平均(以下、平均)の値は示されていない。

日本では、中学校196校(校長196人、教員3568人)、小学校197校(校長197人、教員3321人)から有効な回答を得た。小学校は国公立が98%、私立が2%、中学校は国公立が88%、私立が12%を占めている。

報告書は▽第1章 TALISの概要▽第2章 未来に向けた指導と学習▽第3章 変化する指導環境▽第4章 教職の魅力▽第5章 教員の成長と職能開発――で構成。なお、学校におけるリーダーシップや教員評価については、OECDから20年3月に結果が公表される予定。

2. 日本は週当たりの仕事の時間が最長

第2章「未来に向けた指導と学習」では、指導実践や評価方法、教員の仕事時間、教員の自己効力感、変化と革新に対する教員・校長の意識などを分析した。

教室での指導実践では、16種類について調査。教員は学級でこれらの指導実践をどの程度行っているかを「ほとんどなし」「時々」「しばしば」「いつも」の四つから選択して回答した。

批判的に考える必要がある課題を与えることを「しばしば」または「いつも」行うと回答した中学校は平均の61.0%に対し、日本では12.6%(小学校は11.6%)だった。また、全生徒が単元の内容を理解していることが確認されるまで、類似の課題を生徒に演習させるのは、平均が71.3%だったのに対し、日本は31.3%(小学校は55.8%)だった。

生徒に課題や学級活動でICTを活用させているのは、平均が51.3%だったのに対し、日本は17.9%(小学校は24.4%)。前回の13年調査と比較して7.9ポイント増加した。また、完成までに少なくとも1週間を必要とする課題を与えているのは、平均が30.5%なのに対し、日本は11.1%(小学校は9.9%)。前回調査と比較して3.0ポイント減少した。

学習評価については、前回と比較し、国・地域ごとに統計的に有意な変化がみられたものを分析。生徒の学習成果に対して点数や評定による成績評価だけでなく、文書によるフィードバックを行っているのは、日本の中学校で26.3%(小学校は45.3%)で、3.4ポイント増加した。また、生徒に学習の進ちょく状況を自己評価させているのは、中学校で30.8%(小学校は30.6%)となり、3.9ポイント増えた。

教員の直近の「通常の1週間」における仕事時間について、中学校で平均が38.3時間なのに対し、日本は56.0時間(小学校は54.4時間)で、小中共に最長だった。

教員の自己効力感は、13種類の指導について「全くできていない」「いくらかできている」「かなりできている」「非常に良くできている」の4段階で聞いた。

日本の中学校の教員で「かなりできている」「非常に良くできている」の割合が6割を超えたのは「生徒がわからない時には、別の説明の仕方を工夫する」(62.9%)と「生徒を教室のきまりに従わせる」(61.9%)だった。一方、3割未満だったのは「生徒に勉強ができると自信を持たせる」(24.1%)「生徒の批判的思考を促す」(24.5%)だった。

変化や革新への対応では、自分が所属する学校のほとんどの中学校教員が変化に対して前向きであるかに「当てはまる」または「非常に良く当てはまる」と回答した教員の割合は、平均の76.4%に対して日本は70.1%だった。この割合は、50歳以上で79.0%、30歳未満で64.1%と差がみられた。さらに、勤務経験年数別では、5年を超える教員は71.4%、5年以下は65.0%だった。

3. 女性教員の割合は最低

第3章「変化する指導環境」では、教員と校長の年齢、勤務経験、性別、指導・学習環境、学校の雰囲気や教育資源の不足などを取り上げている。

中学校の教員・校長の国・地域別分布(OECD資料)

参加国における中学校教員の平均年齢は43.4歳で、日本の中学校教員の平均年齢は42.0歳(小学校は41.7歳)だった。中学校の校長の平均年齢は51.4歳で、日本の平均年齢は58.0歳と平均年齢が高いグループに属している。日本の小学校長の平均年齢は57.7歳で参加国中最も高かった。年代別に見ると、日本は小中共に40歳未満の校長の割合は0%だった。

年齢構成は、日本は30歳未満の教員が中学校で21.0%、小学校で22.4%を占め、いずれも他国と比べて若年教員の割合が高い傾向にあった。特に小学校では、参加国中2番目に高い割合だった。

中学校の女性教員の割合は平均が69.2%なのに対し、日本は42.2%で参加国中最も低く、小学校(61.4%)でも一番低かった。さらに、中学校の女性校長の割合は平均48.9%なのに対し、日本は7.0%で、参加国中最低。小学校(23.1%)も参加国中2番目に低かった。

校長の回答によると、日本の中学校で「少なくとも毎週発生している問題」は▽器物損壊・窃盗 0.5%▽生徒間の脅迫またはいじめ 0.4%▽生徒間の暴力による身体的危害 0.4%▽教職員への脅迫または暴言 1.3%▽薬物の使用・所持、飲酒 0.0%▽生徒についてのインターネット上の中傷的な情報に関する生徒や保護者からの報告 0.5%▽生徒間のオンライン上での望ましくない接触に関する生徒や保護者からの報告 0.5%――で、いずれも平均よりも低かった。これは、小学校でも同様の傾向だった。

学級の規律や学習雰囲気に関する項目で「当てはまる」または「非常に良く当てはまる」と回答した割合は▽授業を始める際、生徒が静かになるまでかなり長い時間待たなければならない 11.4%▽この学級の生徒は良好な学習の雰囲気を創り出そうとしている 85.2%▽生徒が授業を妨害するため、多くの時間が失われてしまう 8.1%▽教室内はとても騒々しい 12.4%――だった。

学校における教育資源の不足について、中学校の校長が「かなり妨げになっている」または「非常に妨げになっている」と回答した割合をみると、日本は「教材(教科書など)が不足している、あるいは適切でない」が3.0%と、平均(15.6%)よりかなり低い一方、「生徒と過ごす時間が不足している、あるいは適切でない」が49.1%で、平均(23.6%)の約2倍だった。

小学校ではこれらに加え、「特別な支援を要する児童への指導能力を持つ教員の不足」(40.3%)が参加国中で高い数値を示した。

4. 教職の魅力は高いが満足度は低い

第4章「教職の魅力」では、教職になる際の動機、教員や校長の学歴、公的な研修、仕事に対する満足度などを整理した。

教員になる際の動機について日本の中学校の教員が「非常に重要」または「ある程度重要」と回答した項目の中では▽教職に就けば、子供や若者の成長に影響を与えられるということ 89.0%▽安定した職業であること 85.6%▽確実な収入が得られること 84.8%▽教職に就けば、社会に貢献できるということ 81.6%――の割合が高かった。

教職が第一志望の職業だった中学校教員の割合は平均が68.9%なのに対し日本は81.5%。そのうち、男性は83.4%(平均61.9%)、女性は78.9%(同71.6%)だった。

日本の場合、小中学校の教員、校長の最終学歴は学士相当レベルが8割以上を占める一方、修士相当レベルや博士相当レベルの占める割合はいずれも平均より低かった。

教員になる際に重要と感じた動機

中学校教員が受けた公的な教育や研修の上位4項目は平均・日本共に「担当する教科の内容」「担当する教科の指導法」「自分の担当する教科の指導実践」「一般の指導法」だった。日本では、これらの項目に続き、「生徒の行動と学級経営」や「生徒の発達や学習の観察・みとり」が続いた。

小学校についても、同様の傾向だった。一方、「多文化または多言語環境における指導」や「教科横断的なスキルの指導(例:創造性、批判的思考、問題解決)」は、公的な教育や研修内容に含まれている割合が低かった。

新規採用や人事異動による新たな赴任校での研修(初任者研修)について中学校の校長に聞いたところ、「公式な初任者研修がある」と回答したのは平均で56.2%なのに対し、日本は89.4%だった。また、初めて教職に就いた人を対象とした公式な研修プログラムがあるのは、平均が19.8%なのに対し、日本は77.7%で、参加国中最も高かった。

一方、「非公式な初任者研修がある」と回答した割合は平均が72.8%なのに対し、日本は47.3%と低かった。日本の小学校では、公式な初任者研修があるのは94.1%、「初めて教職に就いた者のみ」の研修プログラムがあるのは88.2%で、参加国中で最も高かった。

初任者研修の具体的な内容では、日本の中学校は「他の新任者との交流及び連携」が最も多く83.8%、次いで「校長や経験豊富な教員との話し合いの設定」(80.5%)、「校長や経験豊富な教員による指導監督」(77.3%)が続いた。また、「オンライン上の講座やセミナー」は9.7%で、平均(28.5%)より低かった。小学校も同様の傾向がみられた。

経験のある教員が経験の少ない教員を支援する校内の仕組み(メンタリング)について、中学校で「初めて教職に就いた者のみを対象としたプログラムがある」のは平均で24.7%、日本は41.6%だった。「この学校に着任した全ての教員を対象としたプログラムがある」のは平均で19.1%、日本は10.3%だった。教員に対して「支援してくれる校内指導者(メンター)がいる」と回答した割合は、平均が11.5%なのに対して、日本は22.4%だった。

仕事に対する満足度のうち、日本が平均より20ポイント以上低い割合だった項目には「もう一度仕事を選べるとしたら、また教員になりたい」「この学校を良い職場だと人に勧めることができる」「現在の学校での自分の仕事の成果に満足している」があった。

5. 職能開発に障壁

第5章「教員の成長と職能開発」では、初任者研修から現職研修までの全ての段階の研修や継続的な職能開発の状況をリポートしている。

過去12カ月間に一度でも職能開発を受けた日本の中学校教員の割合は89.2%(平均94.4%)で、参加国中7番目に低かった。日本で過去12カ月間に受けた異種の職能開発の平均数は▽中学校教員 3.6▽小学校教員 4.1▽中学校校長 4.8▽小学校校長 5.1――だった。

日本の中学校の教員は「他校の見学」(日本65.1%、平均29.5%)「教員や研究者による研究発表、教育問題に関する議論をする会議」(日本60.6%、平均50.5%)「学校の公式な取り組みである同僚の観察・助言、自己観察、コーチング活動」(日本55.2%、平均49.3%)などに参加する割合が、他の参加国と比べて高い傾向にある一方、「対面式の講座やセミナー」(日本37.3%、平均76.1%)「オンライン上の講座やセミナー」(日本9.4%、平均37.9%)「公式な資格取得プログラム」(日本6.2%、平均17.9%)に参加する割合は他の参加国と比べて低い傾向にある。

前回調査と比較すると職能開発に「指導用のICT技能」や「特別な支援を要する生徒への指導」「生徒の行動と学級経営」「多文化または多言語環境における指導」が内容として含まれると回答した割合は増加した一方、「教科横断的なスキルの指導」の割合は、比較可能な参加国の中で最も減少幅が大きかった。

日本の小中学校の教員の職能開発に関するニーズでは、「担当教科等の分野に関する知識と理解」「担当教科等の分野の指導法に関する能力」「児童/生徒の評価方法」「指導用のICT技能」「児童/生徒の行動と学級経営」「個に応じた学習方法」「特別な支援を要する児童/生徒への指導」などの割合が高く、中でも「個に応じた学習手法」の割合は参加国の中で最も高かった。

日本の小中学校の校長は「学校の教育課程の編成」「授業実践の観察」「教員間の連携の向上」「人事管理」「現在の国や地方自治体の教育政策についての知識や理解」「リーダーシップに関する新しい研究や理論についての知識や理解」に対するニーズが高い。

このうち「教員間の連携の向上」のニーズについては、社会経済的に困難な家庭環境にある生徒の割合が「30%以下」と答えた校長(49.3%)の方が、「30%を超える」と答えた校長(79.7%)よりも30.4ポイント低く、この差は参加国中で最も高かった。

教員の職能開発への参加の障壁について、日本の場合、「家庭でやらなくてはならないことがあるため、時間が割けない」(中学校67.1%、小学校71.1%)は参加国の中で最も高く、「職能開発の日程が自分の仕事のスケジュールと合わない」(中学校87.0%、小学校84.3%)や「職能開発は費用が高すぎる」(中学校60.7%、小学校61.1%)、「雇用者からの支援が不足している」(中学校57.3%、小学校56.9%)の回答で半数を超えた。

前回調査では、中学校教員の「家庭でやらなくてはならないことがあるため、時間が割けない」は52.4%で、14.6ポイント増加した。