世界の教室から 各国の消費者教育(3)スペインの消費者教育(下)

(公財)消費者教育支援センター総括主任研究員 柿野 成美

地方自治が進むスペインでは、自治州ごとに独自の取り組みが行われています。筆者が2011年当時に訪問して驚いたのは、17自治州のうち8自治州で、児童・生徒が訪問して授業を受ける消費者教育センター(英語表記はConsumer Learning Center)が開設され、そこで体験的な学習が行われていたことでした。

アストゥーリアス州消費者教育センター
アストゥーリアス州消費者教育センターのサイト

今回紹介するのは、1997年にヨーロッパで初めて、スペイン北部のアストゥーリアス州に設立された、公立小学校を改装したリバデセリャの施設。大きく分けて10の学習ゾーンが用意されており(食生活、環境、広告、銀行、ICT、紛争解決、健康と安全、テキスタイル、薬局、市場コントロール)、訪れる児童・生徒によって、100種類以上あるプログラムから、実施内容を決めています。

筆者の訪問当時は、5施設合計で年間4万5千人が訪れており、障害がある児童・生徒、移民、失業者、教員向けのカリキュラムも用意されていました。2017年に20周年となり、Web上にセンター紹介の動画が用意されているので、活動状況を見られます。

買い物体験やCM制作を通じた消費者学習

施設全体のテーマは、「持続可能で責任ある消費」。

買い物体験する子供たち

例えば、食生活ゾーンのスーパーマーケットでは、ジャムやコーヒー、乳製品や肉などのスーパーと同様の商品構成で、買い物体験ができます。写真の子供たちは、「予算内で健康的な朝食の用意をするためには?」といった施設の専門講師の言葉かけで、グループに分かれて、ラベルを見ながら制限時間内で商品をカートに入れていました。施設内で使用できる通貨も用意されているため、レジで精算をします。施設内にはさらに銀行も用意されていて、 銀行の機能について学習できるプログラムもありました。

広告ゾーンでは、テレビCM作成のための収録・編集施設があり、CM制作を通じて、消費者として批判的なCMの見方を身に付けるプログラムとなっていました。

全般的にスペインの消費者教育では、責任ある消費者として、批判的思考力を身に付けることを重視している印象を持ちました。

CM制作できる広告ゾーン

スペイン調査報告の最後に、この調査をコーディネートしてくださった、E-cons代表のニアベス氏の言葉を紹介します。

「企業は消費者に商品を買うようにメッセージを出し続けている。消費者はこれにのって、無責任な消費を繰り返し、多くのゴミを出している。物をたくさん持つことは幸せだろうか。『無料』につられて、必要でないものまで手にしていないだろうか。地球温暖化は待ってくれない。まだ間に合う。消費者は無知ではいけない」