小学校「教科担任制」(上)横浜市の先行実践

小学校高学年における「教科担任制」についての議論が活発化してきた。教育新聞電子版「Edubate」では、7月1日から実施した読者投票「あなたは、小学校高学年においては教科担任制と学級担任制、どちらがいいと思いますか?」に、約1600の回答が寄せられ、75%が「教科担任制」を選択。教科担任制導入への期待の高さを示す結果となった。

そこで教育新聞では、2018年度より「教科分担制」の取り組みを始めている横浜市を取材した。教科分担制は教科担任制の一種といえ、教科担任制が「特定の教科を専門的に指導する」のに対し、教科分担制は「複数の教科を分担して指導する」方法。同市教委担当者に導入の経緯や、導入後の児童や教員の変化について聞いた。


「チーム・マネージャー」を配置

横浜市では18年度から市内小学校8校を「高学年チーム力強化推進校」に指定し、児童の心の安定、学力向上、教員の負担軽減を狙いとして、高学年に「教科分担制」を取り入れた。今年度は新たに24校を加え、合計32校を研究推進校に指定している。

「教科分担制」は、複数の教科を分担して指導する方法で、年度途中で担当する教科の変更も可能としている。どの教科を分担して行うか等については、各校の状況に合わせて一任している。

同市の取り組みの特徴は、原則として学級担任を持たない「チーム・マネージャー」(学年主任)を配置していることだ。市が非常勤講師を研究推進校に配置することで、各校で人員配置を工夫し、チーム・マネージャーを生み出している。

チーム・マネージャーは、自身もいくつかの教科を受け持ちながら、定められた時数分の授業と行事などとのバランスを取りながら、学年全体の時間割を組んだり、学年の他の教員と協力して学年経営のマネジメントを行ったりしている。

同市教委の丹羽正昇首席指導主事は「これまでは学年主任であっても自分の担任クラスがあり、なかなか他のクラスまでは目が行き届かない状況だった。そうした仕組みを変えたい思いがあった」と話す。

教科等の担任制の実施状況(文科省「平成30年度公立小・中学校等における教育課程の編成・実施状況調査」より)

また、教科分担制を取り入れた経緯について、「最初のきっかけは、いわゆる中1ギャップを解消したいことだった。高学年の発達状況から考えたときに、6・3制の義務教育課程は今のニーズには合っていないのではないか。教科分担制を取り入れることで、子供たちのストレスを少なくし、心の安定が図れると考えた。そして、それが学力向上や、教員の負担軽減にもつながっていくことを期待している」と語った。

子供のことを把握できるのか

教科分担制を取り入れたことで、推進校の児童からは「担任以外の先生との関わりが増えて、相談できる先生が増えた」といった声が多く上がっているそうだ。

一方で、学級担任制から教科分担制になることで、教員は自分のクラスの子供たちと過ごす時間は少なくなる。子供の変化や成長に気付きづらくなるのではという指摘もある。

丹羽首席指導主事は「この制度の狙いの一つは、教員の意識を『学級経営』から『学年経営』へと変えること」と話し、「教科分担制を取り入れることで、日常的に学年全ての教員が、学年全ての子供と関わるようになる。それによって、子供を見る目が増え、子供に関する情報交換はより積極的に行われるようになっている」と見解を述べる。

研究推進校では学年研を中心に教員が話し合う時間を意識的に多く取るようにしているといい、担当している教科や、それぞれの授業における子供たちの様子などを共有している。担任は「自分と接していない時にクラスの子供たちはどのように授業を受けているのか」「他の先生からみると、どのように映っているのか」といった、これまで知り得なかった子供の一面を知ることもできる。

横浜市「チーム学年経営」導入前後のイメージ図(同市教委提供)

丹羽首席指導主事は「一人の子供像を複数の教員が結んでいくことで、子供を立体的に見ることができるようになる。『あの子にはこんな一面もあるよ』と、子供を再発見できるようなシステムとも言える」と話した。

また、同市教委の大井慶亮指導主事は「例えば『○○さんは、こういう手だてを打てばやる気になっていたよ』といったアドバイスをし合うなど、教員同士で学び合う機会が増えている。教員の指導力向上の面でもメリットを感じている」と述べた。

エビデンスに基づく分析を生かす

同市では、横浜市立大学データサイエンス学部に依頼して、この取り組みについて効果測定・分析を行っている。昨年度は、教職員の意識を中心にアンケートなどを実施。児童との関わりや授業改善、負担感の変化について調査を行った。

今年度からは児童の学力向上に関する効果測定や、児童と保護者の意識調査も行い、多面的に捉えたエビデンスを基に分析し、今後に生かしていく予定だ。

大井指導主事は「学力向上についてのデータはこれからだが、授業改善が進んでいると感じている教員は多い。教科分担制によって同じ授業を何度か繰り返し行うことになるので、子供の反応を見ながら、改善を重ねて取り組めている。担当教科が減ることで、授業準備もこれまでより時間がかけられ、内容も濃くなっている。こうした積み重ねが子供たちの学力向上にもつながっていけば」と話した。

また、研究推進校のチーム・マネージャーを集めた担当者会も開催。時間割の調整など、マネジメントにおいて苦労している点について、アドバイスや情報交換をし合う場をつくっている。

丹羽首席指導主事は「この制度の導入によって、一番は子供の心の安定が望まれるが、教員の働き方改革や人材育成など、さまざまな観点において効果をもたらすチャンスがある。これをどう生かすかは学校長のアイデア次第でもあり、学校長のマネジメント力も試されている」と期待を込めて話した。


次回は、18年度から研究推進校となり、教科分担制を導入している神奈川県横浜市立港北小学校の取材を通して、導入後の授業改善や評価、チーム・マネージャーの役割について、実際の取り組みを伝える。

(Edubate企画班)