小学校「教科担任制」(下)学級経営から学年経営への意識改革

横浜市は2018年度より、小学校高学年における「チーム学年経営」を推進している。今年度までに計32校を「高学年チーム力強化推進校」に指定。児童の心の安定、学力向上、教員の負担軽減を狙いとした、小学校高学年での「教科分担制」の取り組みを始めている。研究推進校として「教科分担制」を導入している同市立港北小学校(大嶋照美校長、児童796人)での取り組みを取材した。


実際にどのように分担しているのか

港北小学校は、18年度から横浜市が定める高学年チーム力強化推進校として、高学年に教科分担制を導入している。6年生では学級担任を持たない「チーム・マネージャー」(学年主任)を配置し、3学級を運営。昨年度から八田安史教諭がチーム・マネージャーとして学年全体をマネジメントしている。

同校では学級担任制をベースに、各学級担任が一部の教科を分担。分担する教科は、学年の学級担任が交換で授業を行っている。

7月現在、3人の学級担任で社会、理科、書写と外国語を、チーム・マネージャーの八田教諭が体育を分担している。総合的な学習の時間は学年で行い、道徳、学活はそれぞれ学級担任が受け持ち、図工、家庭科、音楽については専科教員が授業を行っている。

教科分担制での授業の様子

当初、4月の時点で八田教諭は国語や算数についても分担する方針だったというが、3人の学級担任から「まず学級づくりをしたい」と要望があり、時数の多い国語(書写は除く)と算数は学級担任が受け持つ形で進めている。

八田教諭は「学級の状況等により、2学期以降は例えば国語も分担するなど、分担教科を変更したり、増やしたりする場合もある」と、臨機応変に対応していく方針だ。

導入2年目で見えてきたこと

現在の教科分担制により、学級担任は週に9コマ程度は空きコマがある。分担制にすることで空きコマが増えるだけでなく、教材研究や授業準備、評価をする科目が減ることが大きいという。

学級担任の様子について、「各自が翌日の授業準備にだけ集中できる。授業準備、教材研究に関しては、導入前よりも効率的に深くできるようになった」と八田教諭は感じている。例えば、分担前は学級担任がそれぞれ行っていた理科の実験や体育のライン引き、各教科での教材・ワークシートづくりに関しても、効率的に行えるようになっている。

また、評価についても大嶋校長は「同じ教員が同じ基準で学年を見られるので、評価が学年で統一されたのは大きい。クラスによって評価基準が変わるということを保護者も感じなくなった」とメリットを話す。

教科分担制を取り入れ、各教員に学年経営の意識も高まっている。6年生108人の児童を4人の教員で見ていくことで、多面的に子供を育てられるようになったと感じる場面も多いという。

八田教諭は「得意な教科を分担することで、それぞれの強みを生かして指導できている。自分より専門性のある先生が指導してくれると、自分では育てられなかったレベルまで育ててくれる。スキルレベルだけでなく、児童の態度面でも同様の効果がある」と話す。

また、来年度から施行される新学習指導要領についても、昨年度は分担している教科ごとにそれぞれが教科の改定ポイントなどを教えあう会を開催した。

「自分が担当していない教科に関しても、そんな指導の仕方があるのかと発見があり、非常に勉強になった。こうしたことも分担してできるというのは思わぬメリットだった」と話し、今年度も実施する方向で検討している。

チーム・マネージャーの役割
チーム・マネージャーの八田教諭が授業のサポートに入ることも

さまざまなメリットを生み出していると言える教科分担制だが、大嶋校長は「学級担任を持たないチーム・マネージャーがプラス1で入っていることが非常に大きい」と話し、「教科分担制のメリットを生かすためには、チーム・マネージャーが重要」と指摘する。

学級担任を持たないチーム・マネージャーがいることで、例えば学級担任に予定が入った場合もフォローに入れるため、休みの調整もしやすくなっている。八田教諭は体育の授業を分担しながら、他の授業でも必要な場合はフォローに入る。

例えば、算数などでは、単元によってはティーム・ティーチングにすることも可能だ。また、総合的な学習の時間は学年で行っており、3クラスを3コースではなく、八田教諭も入れた4コースに分けて活動するなど、よりきめ細やかな指導にもつながっている。

また、同小では週に1回の学年研で、スケジュールや子供の様子を共有している。そこで八田教諭は学年ノートをつくり、行事予定と時間割、確認事項などをまとめたレジュメを毎回作成。大嶋校長も「このレジュメがあるからわかりやすく、学級担任は安心して授業に集中することができる」と評価する。

特に重要な時間割は、3週間分をまとめて出すようにし、先まで見通せるようにしている。学級担任だけでなく専科教員との調整や、理科室などの特別教室や体育館など、他の学年との調整が必要になる授業も多く、さまざまな調整が必要だ。

八田教諭は「チーム・マネージャー1年目の昨年度はうまく時間割を組めないこともあって、メリットを生かしきれていない時もあった」と話し、今年度はその反省も生かしながら取り組んでいる。例えば、1時間目は1組が社会、2時間目は2組が社会、3時間目は3組が社会といったように、1日になるべく連続して分担している教科が並ぶようにする。そうすることで授業準備が格段に楽になる。急な変更などにも臨機応変に対応できるように時間割を組んでいる。

また、最高学年として6年生は学年で動く時間も多いため、毎週火曜日の5、6時間目は学年で動ける時間を確保するようにしているそうだ。

八田教諭は「自分がやりすぎない、入りすぎないように気をつけている」と話し、「主役は3人の学級担任なので、自分はマネジメントに徹している」という。「毎年、組むメンバーは替わる。組むメンバーのキャリアや性格などによって求められるものは違うので、それをどうマネジメントしていくかにやりがいを感じている。なるべくみんながWin-Win (ウィンウィン)になれるよう試行錯誤しながらやっていきたい」と話した。

『学級経営』から『学年経営』へ
八田教諭が作成している学年研のレジュメ。時間割は3週間分作成している

教科分担制については、保護者も好意的に受け止めているという。

大嶋校長は「高学年は中学生に向かっての準備段階。教科分担制は、どの先生に教わっても子供たちが学習にきちんと向かえる姿勢を身に付けるということにもつながる。授業への姿勢や態度を育てるという意味でも大事なこと」と話す。

八田教諭は「教科分担制を導入して、感覚的には効果があるとみんなが感じているので、その効果がデータとして提示されれば、もっと必要性を感じてもらえるのでは。点数や学力に限らず、子供の声や保護者の声をエビデンスとして持っていたい」と話す。

また、「今後はさらに時間対効果を意識してマネジメントしていけるようにしたい。これが学校全体の全職員の働き方改革につながっていけば」と述べた。

大嶋校長は「本当の意味で『学級経営』から『学年経営』へと意識が変わっていけるか。自分のクラスという意識が強い教員がまだまだ多い。教科分担制は全く学級を外しているわけではないので、自分のクラスという意識を少しずつ払拭(ふっしょく)しながら、学級経営と学年経営のいいとこ取りをして、もっとフレキシブルに取り組めればいい。今は教員の意識が学級を超えて学年になっていく段階を歩いているところだ」と展望を語った。

(Edubate企画班)