世界の教室から 各国の消費者教育(5) オーストラリア(下)

大阪教育大学教授 鈴木 真由子

「マネースマート」とは

2011年にスタートした「マネースマート」は、オーストラリア証券投資委員会(ASIC)が運営する無料のウェブサイトで、老若男女、すべての人を対象にしています。

ナショナルカリキュラムに対応した教員と保護者向けのセクション「マネースマート ティーチング」は、プロとしての能力開発のためのワークショップやオンライン学習、スキルアップを目指したリソースやアクティビティなど、情報満載です。

「消費者と金融リテラシー」学習

筆者が2018年10月に訪問した西オーストラリア州のシングルトン小学校は、「マネースマート学校」の一つです。

写真2:報酬・罰金リスト
写真1:シングルトン・ドル

特徴的なのは、学校全体で展開している「報酬プログラム」。「シングルトン・ドル」(写真1)が発行され、正しい行動やマナーに対して報酬が設定されており(写真2)、児童は学校生活で何らかの報酬を得る仕組みです。逆に、好ましくない行いには、罰金を払わねばなりません。低学年は通帳(写真3)や貯金箱で、中学年はスタンプカードで収支を管理します。

驚いたのは、教室で使う机や椅子に対して使用料を支払っていたことです。教員いわく、「机や椅子は公共物。税の仕組みや社会のルールを学ぶことにつながる」そうです。

写真3:通帳で管理(算数の学習)
写真4:ダンボール製のATM

手作りのATM(写真4)で学ぶキャッシュカードの仕組みは、児童に大人気です。人に見られないように暗証番号を入力し、預貯金を引き出すアクティビティでは、皆こぞって「ATMの中の人」になりたがるとのこと。おかげでATMは「現在、故障中」でした。

「楽しい」消費者教育

シングルトン小学校の消費者教育のコンセプトは「楽しく学ぶ」こと。そのための工夫は教室の掲示やノート、プリント、ファイルに貼るシール、教材、小道具など至る所で見つかりました。

中でも、児童をすっかり「その気」にさせるのが、探偵に扮装(ふんそう)して行う広告チェック(写真5)です。虫眼鏡で広告をクリティカルにチェックし、問題を探します。

左は保護者やコミュニティーの協力で作られたキャラバン。右は児童が毛糸で作ったミサンガ
写真5:探偵に扮(ふん)して虫眼鏡でチェック

保護者やコミュニティーの協力も不可欠です。訪問当日もお手製のキャラバンが出動していました。隣の机では児童の手作りミサンガが売られています。売り上げをどう使うかも、児童が話し合って決めるとのこと。今回は、津波の被害を受けたインドネシアに寄付するそうです。

どの活動にも、児童が主体的に「楽しく学ぶ」仕掛けがあり、教員自身も楽しんでいる様子が伝わってきました。

「キャッシュレス化の進行で、お金の動きが見えない時代だからこそ、リアルなお金をバーチャルに学ぶ意味がある」
担当者の、この言葉が強く印象に残っています。