詳報 2019年度全国学力・学習状況調査 各教科の課題と指導改善

2019年度の全国学力・学習状況調査の結果が公表され、国立教育政策研究所は各教科の問題を分析した報告書を作成した。今回の調査では、従来のA問題とB問題を統合し、基本的な事項から問題解決までを一体的に問う形式となった。また、中学校では初めて「英語」を実施。「読むこと」「書くこと」「聞くこと」を筆記で実施し、「話すこと」は学校のコンピューターに音声を入力する方式で行われた。各教科の問題でみられた課題と指導改善に向けた方策を整理した。


小学校国語 目的や意図に応じて書くことに課題
小学校国語の大問1

小学校国語の平均正答数は14問中9.0問だった。

必要な情報を得るために、本や文章全体を概観して効果的に読むことや、インタビューの場面で、相手の意図を捉えながら聞き、自分の理解を確認する質問をすることはできていた。

一方で、相手に分かりやすく情報を伝えるための記述の工夫を捉えたり、目的や意図に応じて自分の考えを明確にし、まとめて書いたりすることに課題があった。また、漢字の同音異義語を文の中で正しく使うことにも課題がみられた。

公衆電話に関して調べたことを報告する文章を書く大問1の設問三で、調査を基に考えたこととして「公衆電話はどのようなときに必要なのか」「公衆電話にはどのような使い方や特徴があるのか」の両方から分かったことを取り上げて、報告文にふさわしい表現で書く問題は、正答率が28.9%だった。

また、大問1の設問四の、児童が報告する文章を読み返す設定の下、文脈の中の漢字(同音異義語)を正しく書く問題では、「たいしょう」を正解である「対象」と書けたのは42.1%、「かんしん」を正解である「関心」と書けたのは35.8%だった。

指導改善に向け、説得力を持たせて自分の考えを相手に伝えるために、事実を基に書けるようにする必要があることや、熟語などの語句使用が増加する高学年では、漢字辞典を使って調べたり、同音異義語を使い分けた単文作りをしたりする学習を取り入れ、文章の中で正しく使えるようになるよう求めた。

小学校算数 複数の資料からの読み取りに課題
小学校算数の大問4(3)

小学校算数の平均正答数は14問中9.3問だった。

大問1では、(1)で台形について理解していることがうかがえる一方(正答率93.2%)、(2)では、図形の性質や構成要素に着目し、図形をずらしたり、回転したり、裏返したりすることで、他の図形を構成することに課題がみられた(正答率60.5%)。

また、大問2(3)で、二つの棒グラフの特徴や傾向を関連付けて、1人当たりの水の使用量の増減を判断し、その理由を記述することに課題(正答率52.3%)があった。

この他、大問3の(2)で、示された計算の仕方を解釈し、除法に関して成り立つ性質を「割られる数」「割る数」「商」の三つの言葉を使って記述する問題で正答率が31.3%と低かった。

大問4(3)で、遊園地での待ち時間を想定し、レジに付くまでにかかる時間の求め方と答えを言葉と式で書き、判断する問題では、正答率が62.8%だった。

児童への質問紙調査で「算数の授業で活用したことを、普段の生活の中で活用できないか考えるか」という質問項目と大問4(3)の正答率には相関がみられた。

指導改善に向けて、グラフから資料の特徴や傾向を読み取り、それらを関連付けて、一つの資料からは判断できない事柄を判断できるようにしたり、計算に関して成り立つ性質を見いだし、表現したりすることが求められる。また、場面の状況を数理的に捉え、数学的に表現・処理する重要性も指摘する。

中学校国語 根拠を明確に自分の考えを持つことに課題
中学校国語の大問1

中学校国語の平均正答数は10問中7.3問だった。

文章の構成や展開、表現の仕方について根拠を明確にして自分の考えを持つことや、文章の展開に即して情報を整理し内容を捉えること、封筒の書き方を理解し、文字の大きさや配列に注意して書くことに課題があった。

具体的には、大問1設問二で、「全国中学生新聞」という架空の新聞を題材に、記事中で述べられている弁当の魅力として適切なものを全て選択する問題では、正答率が62.2%だった。生徒への質問紙で「国語の授業で文章や資料を読むとき、目的に応じて必要な語や文を見つけたり、文章や段落同士の関係を考えながら読んでいるか」という質問項目と大問1設問二の正答率には相関がみられた。

大問1設問四で「全国中学生新聞」の投書欄に投稿する際の、封筒の書き方を理解して宛名を書く問題の正答率は57.4%だった。

また、話し合いの話題や方向を捉えることはできているが、それを踏まえて自分の考えを持つことには課題があった。文化祭の話し合いの場面を想定した大問2設問三で、「地域とのつながりを大切にした文化祭にするために」という議題で話し合っている内容を踏まえ、決まっていないことに対して自分の考えを書く問題で、正答率は60.9%だった。

指導改善に向けて、各学年で話し合いに関する指導、記述に関する指導を意図的・計画的に実施する必要がある。また、毛筆を使用する書写の指導と硬筆を使用する書写の指導を各学校と生徒の実態に合わせて適切に設定し、書写の能力を学習や生活に役立てるように指導することも挙げた。

中学校数学 事象を数学的に説明することに課題
中学校数学の大問6(2)

中学校数学の平均正答数は16問中9.7問だった。

簡単な二元一次方程式を解くことなどに改善傾向がみられる一方、事象を数学的に解釈し、問題解決の方法を数学的に説明することや、問題解決するためにどのような代表値を用いるべきかを判断することに課題がみられた。

具体的には、大問6(2)の、2種類の冷蔵庫について式やグラフを用いて二つの総費用が等しくなる使用年数を求める方法を説明する問題で、正答率が35.6%と低かった。また、図書だよりのグラフから、「わかったこと」の根拠となる代表値として適切なものを選ぶ問題で、正答(中央値)を答えられたのは54.1%だった。

指導改善に向けて、問題解決の方法に焦点を当て、「用いるもの」と「用い方」を明確にして問題解決の方法を説明する活動や、日常生活や社会の事象における問題に対し、目的に応じてデータを収集し、ヒストグラムなどに整理し、データの分布の傾向を読み取ったり、統計的に問題解決をしたりする活動を充実させる必要がある。

中学校英語 文法事項の活用に課題
中学校英語「読むこと」「書くこと」「聞くこと」調査の大問10

「読むこと」「書くこと」「聞くこと」調査における平均正答数は21問中11.9問、「話すこと」調査の平均正答数は5問中1.5問(参考値)だった。

「読むこと」「書くこと」「聞くこと」調査では、話されたり書かれたりしている内容を聞き取ったり、読み取ったりすることはおおむねできていた。だが、理解した内容を踏まえ、目的や場面、状況に応じて、話し手や書き手の伝えたい要点などを捉えることに課題があった。

例えば、大問7のチンパンジーに関する説明文を読み、会話文中の空欄に入る文を選ぶ問題で、書き手が最も伝えたいことを正しく選択できたのは33.5%だった。大問5の書かれている内容そのものを理解する問題と比べて、大問6や7の概要や要点を捉える問題の正答率は低かったが、質問紙調査で「英文を読んで概要や要点を捉える言語活動が行われていた」と思っている生徒の方が正答率が高かった。

また、「書くこと」では、基本的な語や文法事項の知識を活用することに課題があり、自分の考えを何とか伝えようとする意欲はみられたものの、与えられたテーマについてまとまりのある文章を書くとき、相手に伝わる英語で表現できていなかった。

具体的には、大問9設問(3)の与えられた情報に基づいて、ある女性を説明する英文を三つ書く問題(正答率は(1)の出身を書くのが54.3%、(2)の住んでいる都市を書くのが33.8%、(3)のペットの有無を書くのが38.3%)で、人称や時制、動詞や前置詞などの文法の知識を、実際のコミュニケーションの場面で活用することに課題があった。

また、学校を表す二つのピクトグラムの案を比較して、どちらがよいか理由と共に25語以上の英語で意見を書かせる大問10の正答率は1.9%だった。主語や動詞などの主要語の欠落や文構造の誤りなど、コミュニケーションに支障を来すような語や文法事項の誤りがない英語で書いていることを採点の基準としたところ、33.0%の生徒が、正答の条件(25語以上など)を満たしていても、主要語の欠落や文構造の誤りがあったため、正答に至らなかった。一方で、49.7%の生徒が、25語以上の文章を書いていた。

即興のやり取りに課題

「話すこと」調査では、特に即興でやり取りすることに課題がみられた。生徒と外国人教師のやり取りを聞き、その会話が続くように即興で質問をする大問2では、正答率が10.5%だった。

この問題では、質問紙調査で「即興で自分の考えや気持ちなどを英語で伝え合う言語活動が行われていた」と思っている生徒の方が正答率が高かった。

また、海外のテレビ局の取材を受けるという設定で、自分の夢とそれに向けて努力していることを話す大問3の正答率は45.8%だった。

この問題では、質問紙調査で「スピーチやプレゼンテーションなど、まとまった内容を英語で発表する言語活動がよく行われていた」と思っている生徒の正答率は54.6%で、そう思っていない生徒の正答率(32.1%)との間で22.5ポイントもの差があった。

指導改善に向けて、新学習指導要領の実施を踏まえ、一文一文を聞き取る・読み取るだけでなく、目的や場面、状況に応じて「聞く」「読む」言語活動を充実させることや、和文に応じた穴埋めや語順整序だけでなく、文法事項を言語活動の中で理解し定着させること、即興のやり取りをはじめとした「話す」「書く」など発信の言語活動を充実させることが求められる。

分析によると、平均正答率が全国平均を上回っている地域では、▽4技能を使う言語活動や技能統合的な活動など、生徒が授業で英語を使う言語活動の取り組み状況が高い学校が多い▽英語学習への意欲や興味関心が高い生徒が多い▽日常的に学校の授業外で英語を使う機会がある生徒が多い――のいずれかまたは全てが全国平均を上回っていた。

言語活動の取り組み状況が高く、平均正答率も高い地域では、学習意欲も高い傾向がみられる一方、平均正答率が平均より高いが言語活動の取り組み状況が平均以下の地域では、平均正答率が高い割に学習意欲は高くない傾向がみられた。