【大前研一氏に聞く(下)】「私が教員なら、こうする」

「学び直さない教員は、児童生徒にとって『加害者』になりかねない」と警告し、教員にとってもリカレント教育は重要だと強調する、経営コンサルタントでビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏。教員はどうやって学び直せばいいのか、そして自身はどう学び直しているのかと、これからのヒントを聞いた。(聞き手・教育新聞編集部長 小木曽浩介)


教員自身の学び直し
――これからの答えのない時代、教員はどう自分をアップデートしていけばいいでしょう。

まず厳しいことを正直に言います。私は学校の先生が「世の中で一番変わりたくない人間」だと思っています。教員免許を取って、それでもって一生暮らしていこうという思考で、自分は何も学び直さない。そういう人が子供を教えるということは、これからは非常に危険なことだと私は思います。

欧米に追い付け、追い越せという時代は「答え」があって、ある意味、大船に乗った気持ちで教えていればよかった。ところが今は、答えがない時代なので、教えるというような態度ではなく、「答えを一緒に見つけようね」と子供と一緒に考えられる、そういう先生でなければいけません。

――教育新聞の読者は、そうしたことはクリアしていて、「変化」「成長」を模索している教員です。では、「もし大前さんが教員だったら、どうするか」で教えてください。
「うまくいっているケースを見に行く」と話す大前研一氏(右)

非常に単純で、うまくいっているケースを見に行くんです。これがもう全てですね。うまくいっているケースを、自分が持っているわけじゃない。つまり答えのない時代というのは、発見するしかないのです。

だから例えばデンマークとか、スウェーデンとか、シュレーダー改革以降のドイツの教育制度とか、こういうのを見に行きます。

自身の学び直し方
――大前さん自身も教育者として、そうやって学び直しているのですか。

ええ、「人生は全て、あらゆる点において『学び直し』」です。ただし私は、自分は教育者というよりも、あくまでも技術者だと思っています。具体的には原子炉なのですけれど。科学技術というのは、観察しないとしょうがない。答えがあるのではなくて、答えを見つけるわけですね。

「これ面白いよね」「どういう発想でやっているのだろう」など、いろいろ知りたいことがあるじゃないですか。相手が若くても、私が学びに行く。やっぱり話を聞かなければ。

私は松下幸之助さんのコンサルティングもやったし、盛田昭夫さんのコンサルティングもやったし、いろいろなコンサルティングをやって、実はお金をもらいながら勉強したんですけどね。それをものすごく生かしています。

そういう意味で私は、「答えがある」という前提を置かないで、技術者として見に行く。そして人の話を聞く。今うまくいっている人がいたら、その人たちから学ぶ。これを繰り返すしかないでしょう。

これを重ねることによって、場合によっては同じようなことを模索している人に紹介したり、語れるものがあったりするかもしれない。答えはないのだから、それしかないんです。

お互いに学び合える場
――教育新聞の役割は、まさにそれです。

教育新聞は電子版があるんだから、読者同士が質問し合える場所を作るといいですね。読んでいる人が「こういうのはどうなの」「ああいうのはどうなの」「自分はこういうやり方をしているけど」と、お互いに学び合える場にするんです。そういう議論の場所を作っていくのが、非常にいいのではと私は思いますね。

一人で悶々(もんもん)としていても答えはないし、同じような悶々としている人が集まれば知恵者もいるだろうし、いろいろ違う考え方が出てくるじゃないですか。

それによって、「学校や教員の心配事の、本当の中心的なテーマは何なのか」ということがお互いにも分かるし、他の読者にも分かる。これ、非常に有効だと思いますね。

ビジネス・ブレークスルー大学も、教育者というよりはある意味、自分が経営をしながら、そういう人たちが来て学べる場を提供する――と、そういうふうに思っています。

これからのヒント
――それでは最後に、読者へメッセージを。

これからの学校教育のヒントは何か。個人教授ですよ。もう全部、個人教授ですよ。クラス全員にまとめて全部同じことを言って、うまくいくなんてことはあり得ないですよ。もしそんなパッケージ化できる教育があるなら、それはネットでいいので、学校が必要なくなります。

「先生は応援団になればいい」と大前研一氏

だから、これからの学校と先生の仕事は、個人教育なんです。児童生徒の個性を見て、その子が伸びる方法を見つけてあげる。「その生徒の持っている能力を発見する」ということです。

だから私は教員の役割とは、子供の個性を見ながら伸びていく方向を見つけ、伸ばしてあげることだと考えます。

オールラウンドに全部強くするなんてことは、もう思わないでいいんです。世の中に出た時は、秀でたところだけで稼ぐんですよ。だからその秀でたところを見つけて伸ばしてあげる。

そしてそこから先、先生は応援団になればいいわけです。私はそう思いますね。