世界の教室から 各国の消費者教育(6)韓国

横浜国立大学名誉教授 西村 隆男

今回は隣国、韓国の消費者教育事情を紹介します。

消費者教育研究校の授業

韓国の小学校で行われた、消費者教育の実践的授業を紹介しましょう。

ソウル市立のバルサン小学校は、韓国消費者院が20年ほど続けている消費者教育研究校(期間2年)のひとつで、全校を上げて消費者教育に取り組んできました。4年前になりますが、公開授業があり、本連載の執筆者である消費者教育支援センターの柿野氏とともに訪問する機会がありました。

研究主題は「消費体験を通じた合理的な消費生活態度を育む」で、1年生から6年生まで全27クラスが一斉に授業を行っていました。

国語で実践する消費者教育
韓国の授業風景

公開授業では、日本の生活科にあたる低学年の「統合」、家庭科にあたる高学年の「実科」の授業ではなく、「国語」で消費者教育を行うクラスが多く、「道徳」「体育」も若干見られました。では「国語」で消費者教育をどのように教えているのか、不思議にも思えましたが、授業を見学し納得できました。

5年生の「国語」では、「意見と主張」という単元で、商品の合理的な購入と使用を目的にして、テレビCMの誇大表現の有無について話し合いをしていました。消費者教育で重要視している批判的思考力の育成につながるもので、表現の内容や方法が、消費者にどのような影響を及ぼすのかを理解する本格的なものでした。

他の教室では、同じ「国語」の授業で、「他人の前で発言する時に必要なことは何か」という先生の質問を受け、4,5人のグループで話し合いをし、各自が思うことを簡単な言葉にして、手元の紙に書いて発表し合いました。ある児童は紙を見せながら「勇気」と答えました。

自分から発言や発信することは、緊張もするし、迷いもあります。でも、思い切って進んで発言することによってこそ、相手から深い理解や賛同を得られたり、問題解決の糸口となっていったりすることもあるでしょう。

消費者が買った商品に納得いかないときや、トラブルがあったときでも、安い商品だから、面倒だからと何も発信しないことはしばしば見られます。小さいときから、気付いたことに思い切って発言する「勇気」を持つことや、正しいと思ったことを堂々と主張する習慣は、とても大切であると思いました。

フェアトレードが小学校の教科書に

6年生の「国語」では、教科書にフェアトレードチョコレートに対する肯定的な意見と、自分の考えを比較する内容が掲載されていることに驚きました。

教室では、「優しいチョコレート価格」との表題のワークシートが配布され、動画を見た後に、優しいチョコレートの意味(子供の労働力を搾取することなく正当な対価を払って生産された商品)を考えさせ、実際にいくらくらいが適切な価格なのか、その理由などを記入させたうえで、グループ討議をする工夫も見られました。

考え方を一方的に押し付けるのではなく、他者の意見を聴き取り、自らの意見を形成させる思考力、表現力を養う格好の材料と感じさせるものでした。