世界の教室から 北欧の教育最前線(28) 余暇活動の専門家

スウェーデンの学校では8月後半に新学期が始まる。6月半ばからの宿題のない長い夏休みの終わりだ。スウェーデンでは大人も長い夏季休暇をとるが、それでも学校の休みよりは短い。そこで活躍するのがフリーティッズヘム(fritidshem)、一般的にはフリーティスと呼ばれる学童保育だ。


遊びと学習の場

フリーティスは公教育の一部として、義務教育0年生から6年生(6歳から12歳ごろ)までの子供たちに保障されている。多くの場合、学校に併設されていて、長期休暇中のほか、学校がある日の始業前と放課後に数時間の保育を提供する。

共働き家庭が多いスウェーデンでは、子供の居場所として重要な存在だ。実際に、3年生以下の子供の80%以上がフリーティスに通っている。保護者の就業、学業、そのほか家庭の用事などで保育が必要であれば利用でき、家庭の収入に応じた月謝を支払う。

こうした学童保育は、かつては社会福祉事業に位置づけられていたが、近年は教育機能が強化されつつある。

2010年改訂の学校教育法では、フリーティスが子供たちの成長や学習を促進する機能が強調され、16年には学習指導要領にフリーティスでの「授業」の目的と主な内容が明記された。社会性や思考力などを育むために、活動内容として「言語とコミュニケーション」「創作と芸術的表現」「自然と社会」「遊び、身体活動と野外活動」の4領域について内容が定められている。

国連デー(10/24)に子供たちが作った掲示物

フリーティスの「授業」は学校における授業よりも広い意味をもっており、子供たちの興味や関心に沿ったさまざまな活動、遊び、集団活動や身体運動などを意味する。実際のフリーティスの様子を見てみると、「授業」というよりも自由遊びのような印象を受けることだろう。

筆者の子供は、毎日午後1時半に学校が終わった後の3時間ほどをフリーティスで過ごした。自分の好きなパズルやゲームをしていたようだが、学年の違う子供たちと交わり、おやつを食べ、季節のイベントや記念日のお祝いをするのは楽しそうだった。

余暇活動の専門家養成

フリーティスの活動を主に担ってきたのは、1960年代に養成が始まったフリーティッズ・ペダゴーグ(fritidspedagog)と呼ばれる専門職だ。主に小学校段階の子供たちにさまざまな余暇活動を提供し、見守り、子供の話し相手になる。始業前と放課後のフリーティスのみでなく、学校の休み時間に校庭で遊ぶ子供たちを見守ったり一緒に遊んだりすることもある。休み時間の安全管理を行う専門職がいることで、教師は授業に専念できるというわけだ。

フリーティッズ・ペダゴーグは現在では、「フリーティスの教師」という名称で、小学校段階の教員養成課程の一専攻として大学3年間の課程で養成されている。教育学の基礎に加えて、野外教育、言語、芸術、自然などの学習や活動について学ぶ。通常の小学校教員養成課程よりも1年短いが、余暇活動にも子供の成長に資する専門的で質の高い活動が期待されていると言える。

フリーティスの教育機能の強化に伴って、その活動の質に対する要求も高まっている。学校監査局は昨年、訪問調査したフリーティスの8割以上で校長の監督に改善が必要だと注意した。そして多くのフリーティスに対して、活動の中でもっとコミュニケーション能力や数学的思考の育成に取り組むこと、デジタル・ツールを取り入れること、社会との接点をもつこと、長期的な活動に取り組むことなどを促した。

フリーティスの質向上は、規制や監査の方向からのみではなく、より肯定的な評価を通しても促されている。2010年以降、教員組合は、毎年10月にフリーティス教師の最優秀賞を選び、表彰している。努力、協力、改善の3分野から教育活動を評価。活動の質への関心を高めると同時に、グッドプラクティスを広める機会になっている。

こうした変化の中で、これからのフリーティスでの活動がどう変化していくのか楽しみだ。

(本所恵=ほんじょ・めぐみ 金沢大学人間社会研究域准教授。専門は教育方法学)