世界の教室から 各国の消費者教育(7)フィンランドにおける消費者教育(上)

横浜国立大学教授 松葉口 玲子

今回と次回は、フィンランドです。今回は、消費者教育全体の体系とともに、ナショナル・コア・カリキュラムにおける位置づけについてご紹介します。

北欧閣僚評議会の「消費者教育戦略」

フィンランドにおける消費者教育は、北欧閣僚評議会による「消費者コンピテンスの指導―消費者教育戦略:消費者教育の目標及び内容の提案」(「消費者教育戦略」と略す)の考え方に基づいています。

図1 消費者教育の2大テーマと4領域

消費者教育の2大テーマは「持続可能な消費」と「メディアと技術リテラシー」。これに4つの領域「家庭経営と参加」「消費者の権利と責任」「パーソナル・ファイナンス」「マーケティングと商業メディア」が相互に関連し合っています(図1)。

ナショナル・コア・カリキュラム

2014年に改訂され、16年より施行されているナショナル・コア・カリキュラムでは、基礎教育の価値の前提として、「すべての生徒が独自性を有するとともに、良き教育を受ける権利を有すること」「人間性・一般的な知識・可能性・公平性・市民性」「文化多様性」「持続可能な生活の必要性」の4点が掲げられています。

さらに学校文化の発展を導く原理として、「学校を学びの共同体と捉えること」「日常生活でのウェルビーイングと安全」「相互横断的なアプローチ」「文化多様性と言語」「参加と市民的行動」「公平性と平等」「環境的責任と持続可能な未来への志向」などが明示され、これらがベースとなっています。

その上で、いわゆる教科だけでなく、横断的コンピテンシー(transversal competences)が7つ(「学ぶための思考力や学習力(T1)」「文化的能力・相互関係性・表現(T2)」「自分自身のケア・日常生活の管理(T3)」「マルチリテラシー(T4)」「ICT能力(T5)」「仕事に必要な能力・起業家精神(T6)」「参加・関与と持続可能な未来の構築(T7)」)設けられています(図2)。

図2 教科と7つの横断的コンピテンシー

この中で特に消費者教育と関わりが深いと考えられるのは、T3、T4、T6、T7です。例えばT3では、批判的かつ責任ある消費者、T4では消費者スキルとファイナンシャル・スキル、T6では起業家精神、T7では持続可能な生活様式が明示されています。

社会科と家庭科、地理でも

教科では、従来から社会科と家庭科が主力でしたが、いずれも対象は中学と同等の7~9学年でした。しかし、今回の改訂によって、4~6学年の社会でも消費者の権利、おこづかいの管理や、責任ある消費の基礎などが位置づいたことは特筆すべきことでしょう。

ほかにも7~9学年の地理で、持続可能な生活の仕方と自然資源の持続可能な使用について、個人的な消費者としての行動とともに、責任ある市民としての行動についての内容が入れられました。

もちろん家庭科では、消費者スキルとファイナンス・スキル、持続可能な生活について、生活情報の活用とともに扱われています。