子供の学びのサポート役に徹する

ピアニストの生演奏から感じ取ったイメージを、プログラミングソフトを使って動く絵にする――。東京都三鷹市立第一小学校の図工専科の﨑村紅葉主任教諭は、こうしたICTの活用や教科横断型の授業実践に積極的に取り組んでいる。「ICTはあくまでツールの一つ。それを活用することで子供の創造性が高まるから取り入れている」と語る﨑村教諭に、これまでの授業実践や教員としてのスタンス、授業デザインの発想法について聞いた。全3回。


曲からイメージした動く絵づくり
――﨑村先生はさまざまな「図工×ICT」の授業実践に取り組まれています。特に昨年、東京新聞教育賞も受けられた、児童がピアニストの生演奏を聴いて、そこから得たイメージを絵に描き、プログラミングソフト「viscuit」を使って動く絵づくりに挑戦した授業について、詳しく教えてください。

本校がある東京都三鷹市在住のピアニストの方に曲を演奏していただき、その曲をイメージした絵(静止画)を描くという活動を5年生で行いました。完成した作品はデータ化し、三鷹市芸術文化センターで行われたコンサートで演奏に合わせてスクリーンに投影しました。また、会場ロビーにも作品を展示させていただき、来場者に鑑賞してもらいました。

いきなり「曲からイメージした絵を描いてみよう」と子供たちに言っても難しいので、導入としてまず子供たちが描いた絵をピアニストに曲にしてもらうという体験をしました。そして、その上で「じゃあ、今度は曲を聴いたところから自分たちで絵を描いてごらん」と展開していきました。

3曲弾いていただいたのですが、その中から自分が一番気に入った曲を絵にします。5年生になるとクレヨンやクレパス、コンテ、絵の具、ポスターカラーなど、さまざまな画材を使う経験をしてきているので、それぞれがその曲に合うと思った画材を組み合わせて絵を描きました。

「この曲は淡い感じだから水彩絵の具にしようかな」とか、「まずはローラーで一面青に塗りつぶしたい」といったことを全て自分たちで考えて描いていきました。

音楽に合わせて首を動かしながら描く子もいれば、じっくり聴いてから描く子もいました。同じ曲からイメージされた絵でも、一人一人見事に違う作品となり、そうした経験をさせてあげられたことがすごく良かったと思っています。

――この経験を踏まえた上で、6年生ではプログラミングも取り入れた活動にされたのですね。

はい。高学年になるにつれて「絵を描くよりも工作の方が好き」「自分の作品に自信がない」と考える子供も増えてくるのですが、プログラミングを取り入れた新しい描き方を経験させることで、苦手意識を持っている子供でも絵を描く楽しさを感じてほしいと思いました。

子供たちが自らやり方を見つけられるように授業を進めている

そこで6年生になったとき、「viscuit」というプログラミングソフトを活用して、曲に合わせてパソコンで「動く絵」を描くという発展的な活動をしました。具体的な風景を表現している子もいれば、抽象的な形で表現している子もいました。

「viscuit」を使って絵を描くことで、描いたり消したりしてつくり変えることも簡単にできます。失敗を恐れてしまうタイプの子供でも、さまざまな表現方法を試したくなるタイプの子供でも、納得がいくまで何度もやり直すことができました。また、作品の色合いもくっきりとした色合いを表現できたり、透明度を高くして水彩絵の具のように描いたり、さまざまな色合いを表現できます。

友達の作品をPC画面上でいつでも鑑賞することができるので、友達の作品の良さを共有したり、新しい表現を発見したりできました。

この作品は、コンサートの最中に壁面に投影させていただいた後、校内の展覧会においてそのコンサートの音源を流しながら、発泡スチロールで作った巨大なお城にプログラミングの「動く絵」を投影するプロジェクションマッピングにして発表しました。

プログラミングソフトを使うことが目的なのではなく、「viscuit」をうまく活用することによって子供たちの創造性を高めることができると考え、取り組んだ実践です。

子供が夢中になった「未来の遊園地」づくり
――他には「図工×ICT」でこれまでどのような取り組みをされたのでしょうか。

例えば、「チームラボ」に知人がいた関係で、平面に絵を描いてそれをスキャンすると、それを立体化できる展開図が出てくるという機器を使った実践を3年生で行いました。その展開図を組み立てていき、立体的な街をつくっていきました。

機器を使うことによって展開図が苦手な子供も理解できるようになるなど、算数の視点も取り入れた授業になったと思います。

また、プログラミング系で例を挙げると、6年生の授業で「MESH(メッシュ)」というソフトを使ってピタゴラ装置をつくる授業も行いました。

普通のビー玉迷路でも十分面白いのですが、そこに「MESH」を組み合わせることによって、例えばビー玉が通ったら音が鳴るとか、ビー玉が「MESH」に当たって倒れると光るなど、自分たちでいろいろと組み合わせてつくっていきました。

ICTを活用することで子供たちの表現活動が広がっている

見た目はすごくアナログなのですが、アナログにつくっていく面白さと、プログラミングの要素を組み合わせることで、子供たちは新しい発想も加えながら夢中になってつくっていました。

また、6年生の授業で「little Bits(リトルビッツ)」という電子回路を使って、電子工作をしました。ブロックが磁石でつながっていき、スイッチやメーター、音が鳴るものなどをつなげて動かせます。スイッチ一つとっても音に反応するもの、押すタイプ、レバータイプなどいろいろなものがあり、それらを組み合わせて「未来の遊園地」をつくりました。

この授業では、まず製作に取り掛かる前に「自分はこんな遊園地をつくりたい」ということを一人一人にプレゼンしてもらいました。例えば「僕は宇宙みたいな遊園地をつくりたいので、仲間を募集します」とか、「すっごく長いジェットコースターを一緒につくりたい人募集中です」とプレゼンしていき、子供たちが全部グループ決めも行いました。そして、パソコンで自分たちの遊園地についてアイデアスケッチをつくり、それを基に製作していきました。

材料は木材や紙類、プラスチックや紙のカップなど、子供たちが使いそうなものを私がそろえました。

ある女の子グループはシャボン玉が出る遊園地をつくって、とてもかわいらしい世界観を作り上げていましたよ。

新しいこと・モノに子供を出合わせるだけ
――シャボン玉を組み合わせるようなアイデアも、子供たちが考えついたのですか。

このアイデアは、最初のアイデアスケッチの段階ではなかったのですが、材料置き場にさりげなくシャボン液を置いておきました。すると子供たちが「あ、これを使えば、こういうのができるかも!」と自分たちで考えついていくのです。

子供たちは手を動かしながら、どんどん発想を膨らませていきます。この授業に限らず、その発想は私の想像を超えるものばかりです。このように「これは自分たちが思いついたんだ!」と思えるように、さりげなくサポートするようなことはよくやります。

子供が感性を働かせ、感性を豊かにしていくためには、まず自分自身でイメージを持つことが大切です。そして、そのイメージに近づけるために、どんな用具や材料やつくり方を選んでいくのかを考えながら活動してほしいと思います。

だから、授業では私が「まずこうやって、次にこうやって」とか、「こうするとこうなるよ」「こんなやり方があるよ」といった具体的な指示を出さないようにして、子供たちが活動の中で自らやり方を見つけられるように進めています。

――こうした授業の発想法を教えてください。

例えば、ピアニストの曲に合わせて絵を描いた実践も、当初は5年生のみで曲からイメージした絵(静止画)を描く活動を行う予定でした。そこに「6年生でも、5年生で行う内容をもう少し発展的にして何かできないだろうか?」という話を芸術文化センターの方からいただいたんです。

ちょうどその頃、私も活動に参加している「SOZO.Ed」(注)の山内佑輔先生から、たまたま「viscuit」というプログラミングソフトがあることを教えていただきました。「それを使って曲に合わせて絵が動かせるのだったら、もっと表現活動がレベルアップして広がるかもしれない」と思ったので、6年生での活動として取り入れました。

「子供の発想のサポートをしているだけ」と話す﨑村教諭

このように、私の発想は「あの時に教えてもらったこれが使える!」「あの実践の○○とこの手法を組み合わせたら面白そう」ということがほとんどです。

今はソフトやアプリ、ICT機器に恵まれている時代です。私はそういったものを子供たちに出合わせているだけです。出会う機会を与えるだけで、子供たちはもう勝手に素晴らしい作品を生み出していってくれます。

子供たちの新しいものへの対応力や吸収力はとても早い。時々、ICT系が苦手な子もいるのですが、少し教えるだけですぐに使いこなせるようになります。子供は大人よりもずっとずっと柔軟です。

注:東京都内を中心とした「ICT」「Creative」「Education」をキーワードに、 都内の小学校から高校教員を中心に結成したProfessional Learning Community。

(先を生きる取材班)


【プロフィール】
﨑村紅葉(さきむら・もみじ) 東京都三鷹市立第一小学校主任教諭。図工専科。2018年に第21回東京新聞教育賞。プログラミングソフトでつくるプロジェクションマッピングや電子工作など、情報通信技術(ICT)を活用した、新しい時代の図画工作授業を実践している。「SOZO.Ed」メンバー。Microsoft認定教育イノベーター。