学校が憂鬱な夏休み明け 子供の不安にどう寄り添うか

夏休みが終わりに近づく8月下旬は、学校が始まるのが憂鬱(ゆううつ)になり、不安な気持ちにさいなまれる子供が増える時期だ。こうした子供たちの不安や悩みに、教員はどのように寄り添っていくべきなのか。不登校経験者やフリースクール関係者、相談窓口のカウンセラーらへの取材を通じ、教師が取るべき対応の方向性を探った。


自分の価値観を押し付けないで

「自分の価値観を押し付けてくる。そういう教師が多い学校だった。当時は、学校の先生に心の底から会いたくなかった」――。

現在18歳になるさゆりさんは、中学校で不登校になったきっかけをそう振り返る。元々、低血圧で貧血気味だったさゆりさんは、学校や部活動を休んだり、早退したりすることがたびたびあった。

そうした中で、部活動顧問との人間関係や進路の不安などストレスが重なり、夏休みの終わりごろに「帯状疱疹(ほうしん)」を発症。しばらくの間、学校を休まざるを得なくなった。ようやく症状が治まって登校したところ、担任から「なぜ体調管理もできないのか」と詰問され、教師不信に陥り、不登校になった。

中学3年生の夏休みから不登校になったさゆりさん

そんなさゆりさんだが、学校に「行かなくなった」ときよりも、帯状疱疹で「行けなくなった」ときの方が精神的につらかったと振り返る。「このままでは行ける高校もない。私はどうすればいいのだろう」と誰にも相談できずに一人で悩み続けたという。

そんな中、さゆりさんは友人に誘われ、憧れのモデル、藤田ニコルさんが通っていた、都内の通信制高校のオープンキャンパスに参加。そこで、自分と同じように悩んだ経験のある先輩や親身に話を聞いてくれる教師と出会い、その学校に入学することを決めたという。

通信制高校に入学後、さゆりさんは担任の後押しもあり、高校生が中心となって運営するファッションショーや生徒会活動に積極的に関わるようになった。迎える側になったオープンキャンパスでは、かつての自分と同じような不安を抱えている中学生に「思い詰めなくて大丈夫だよ」と声を掛け、自分の経験を話した。

中学校までは学校に対して良いイメージが全く持てなかったそうだが、高校を卒業するときは初めて学校が好きになり「卒業したくない」と心から思ったという。

さゆりさんは「どん底で死にたいと考えた経験は無駄ではなかった。あのとき悩んでいたことが今、生かされている。この気持ちを同じように悩んでいる人に発信していきたい」と話す。

フリースクールという居場所もある

千葉県習志野市にあるフリースクール「ネモ」の前北海(まえきたうみ)理事長は、学校以外に居場所があることの重要性を訴える。ネモでは、例年8月の終わりから9月の始めにかけて保護者からの相談が増えるそうだが、今年は夏休みに入った直後から相談が増えているという。

学校とフリースクールの連携の重要性を強調する前北理事長

前北理事長は「いじめや教員との関係が原因で不登校になるケースもあるが、子供が授業中ずっと座っていることに苦痛を感じたり、特定のことにしか興味を示さなかったりするなど、学校生活や一斉授業にフィットしないケースも多い。どんなに良い学校でも、不登校になる子供はいる」と指摘する。

また、不登校の子供に対し、学校に来させることを目標に指導する教師はいまだに多いが、この点については「学校に行かないと決めた時点で、その子は相当我慢している。子供にとって学校が合っていないなら、教師は別の方法を提示すべきだ。その選択肢としてフリースクールがある。今後は学校復帰を前提としない支援に、転換しなければならない」と指摘。さらには学校とフリースクールが連携していく必要性も強調する。

最近は教育機会確保法の理念が学校現場にも徐々に浸透し、フリースクールに通うことで学校を出席扱いにするケースも増えてきている。また、フリースクールに不登校の子供が通う前に、学校の担任が見学に訪れたり、子供の様子について日常的に情報共有したりすることも増えているという。

前北理事長は「不登校の子に学校の教師がどのように関わるべきかは、子供によって異なる。本人や保護者の話をよく聞いた上で、そっとしておくことも含め、できる限り希望に添った対応をしてほしい。不登校の子供は、長いトンネルを自分の力で抜け出そうともがいている。周囲の大人は、子供を信頼しながら下支えすることが大切だ」と持論を述べる。

教師のポジティブな言動がプレッシャーに

中高生を対象にしたSNSの相談窓口が全国に広まっている。電話による相談よりも敷居が低いことから、いじめをはじめとする深刻な問題の早期発見につながると期待されている。東京都をはじめ、複数の自治体から相談窓口を委託されている「ダイヤル・サービス」では、SNSのチャット機能を使いながら、カウンセラーが生徒たちのさまざまな悩みや相談に対応している。

SNSで寄せられる相談件数は、例年、夏休みが明ける直前から少しずつ増え始める。学年やクラスが替わったばかりの4月ごろと違い、夏休み明けは人間関係も固まっていることから、友人関係でトラブルを抱えていたり、クラスで孤立していたりする生徒が多い。また、教師による厳しい叱責や体罰に近い指導を受け、精神的に追い詰められて相談を寄せてくる生徒もいる。

実際に相談に当たっているカウンセラーは「『頑張れば何とかなる』『みんなと仲良くしよう』など、教師のポジティブな言動が生徒にプレッシャーになることもある。学校に来ることを無理に求めれば、かえって長引かせてしまいかねない。教師は本人の精神的な状態をよく見て接してほしい」と話す。

「死にたい」と口にした生徒を、「そんなことを言っては駄目だ」と頭ごなしに否定すると、その生徒は「この先生には本音を話せない」と受け取ってしまう。そのため、「そういう風に思っていたんだ。どうして死にたくなったの」と傾聴する姿勢を示すことが大切だという。

また、何かしらのアドバイスをする際は、本人の意思を尊重し、アドバイスした方法を採らないことも認めながら、その生徒が相談をしたいのか、話を聞いてほしいだけなのか、あるいは自分を認めてほしいのかなど、求めているものを見極めて対応していくことの重要性をカウンセラーは指摘する。

子供の悩みや不安は、教師や保護者以外の大人が聞いた方が良いこともある。また、全てを教師や保護者が抱え込む必要もない。カウンセラーは「相談前は不安だと思うが、勇気を持ってメッセージを送ってほしい。一緒に解決策を考えてくれる大人がいるということを知ってもらいたい」と子供たちに呼び掛ける。

(藤井孝良)