詳報 20年度文科省概算要求 文教予算4.4兆円のポイント

8月29日に文科省が公表した2020年度予算案の概算要求では、小学校高学年での教科担任制の推進や不登校支援、学校安全対策の強化など、喫緊の教育課題への対応だけでなく、「GIGAスクールネットワーク構想」をはじめとする未来の教育の姿を見据えた先行投資も盛り込まれた。文教予算として計上された4兆4450億円の中から、注目のポイントを取り上げる。


教育基盤の整備

教職員定数の改善では、新学習指導要領の全面実施を控え、小学校における専科指導の充実が挙げられる。これまでも充実させてきた英語専科指導のための加配定数1000人増に加え、義務教育9年間を見通した指導体制への支援として、2090人の加配を行うことが特筆される。

専科指導に積極的な学校や子供が切磋琢磨(せっさたくま)できる学習環境を整備し、小学校高学年の教科担任制に先行的に取り組む学校を支援するのが狙い。小学校高学年における教科担任制の導入は現在、中教審で検討が進められているが、先行実施している学校に財政的な支援を行うことにより、小学校高学年の教科担任制の普及や効果検証の後押しにつながると期待される。

教員定数の改善

昨年に相次いだ大規模地震を受け、19年度予算で拡充された公立学校施設の耐震化に関しても、継続して取り組む。公立学校施設では、建築後25年以上を経過した建物が増加している状況を踏まえ、計画的・効率的な建物の長寿命化を図り、長期間の使用を前提としたライフサイクルに移行。築80年以上の使用を可能にするための改修や空調設置、バリアフリー対応などの費用として、2322億6900万円(前年度予算比1655億4900万円増)を要求した。また、私立学校や国立大学、認定こども園についても施設の耐震化のための予算を拡充する。

喫緊の教育課題への対応

カリタス小学校の児童や保護者が犠牲となった「川崎スクールバス襲撃事件」は、これまで安全性が高いとされてきたスクールバスによる登下校でも、安全上の盲点が存在することが浮き彫りとなり、安全対策の再考に迫られた。文科省では、スクールバスの乗降場など、子供が集合する場所の合同点検を全ての小中学校で実施するとともに、警察OBによるスクールガード・リーダーの大幅増員や、国立・私立学校の安全対策の取り組みを支援する。

いじめ対策や不登校支援では74億9200万円(同6億700万円増)を計上。スクールカウンセラーの全公立小中学校への配置や、スクールソーシャルワーカーの全中学校区への配置に引き続き取り組み、教育支援センター(適応指導教室)の機能強化を図る。新規として不登校児童生徒に対する支援推進事業に2億円を計上し、教育支援センターを核とした教育委員会と民間団体との連携体制の整備や、連携を支援するコーディネーターの配置などを行う。

高校生への修学支援では、私立高校の授業料の実質無償化や高校生等奨学給付金を充実。さらに高校や特別支援学校の専攻科に通う生徒を対象として、都道府県が授業料などの助成を行う場合に、国が都道府県に所要額を補助する制度を新設。高校で学び直す人を対象とした修学支援も拡充する。

主要な教育課題に対する概算要求額

特別支援教育には28億9000万円(同3億400万円増)を充てる。医療的ケアが必要な幼児や児童生徒のための看護師配置を447人増やすほか、難聴児の早期支援につなげるため、保健、医療、福祉の各機関と連携した聴覚障害のある乳幼児の教育相談の充実を新規事業として盛り込んだ。発達障害のある児童生徒への支援として、経験の浅い教員の支援や特別支援教育担当教員の資質向上に向けた人材育成にも新たに取り組む。

また、障害者が学校を卒業した後も社会で学べる機会を保障するために、地域における持続可能な学びの支援に関する実践研究を新規で6500万円計上した。

増加する外国人児童生徒への対応では、9億5800万円(同4億2100万円増)に拡充。日本語指導補助者や母語支援員の活用による指導体制の構築や多言語翻訳システムの導入、外国人児童生徒が多く通う夜間中学の設置を促進するほか、新たに多文化共生に向けた地域課題を解決するためのプログラム開発に取り組む。

今年10月からの幼児教育の無償化に伴い、幼児教育の質向上にも取り組む。「幼児教育実践の質向上総合プラン」では4億8000万円(同1億7000万円増)を充て、数が少ないと指摘されている幼稚園教諭免許法認定講習の開設支援や、幼稚園教諭の新規採用促進・離職防止、新規事業として障害のある幼児や外国人の幼児など、特別な配慮を必要とする幼児への対応を想定した研修プログラムの開発などに取り組む。

未来の学校像を描いた新構想

教育再生実行会議第11次提言を踏まえ、中教審でも議論が行われている高校改革では、「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」に5億7700万円(同3億2600万円増)を要求。高校と地域が連携し、地域の実情や人材ニーズに対応した取り組みを展開するため、20年度はプロフェッショナル型、地域魅力化型、グローカル型合わせて新たに50件程度の指定を目指す。

さらに、各類型から10件程度を新たに高大接続枠とし、地域課題の解決を通じた探究的な学びを大学で継続したり、高校と大学で一貫した教育プログラムの開発を推進したりする。さらに、Society5.0に向けたイノベーティブなグローバル人材を育成するために、高校が海外を含む大学や企業、国際機関などと連携し、高度な学びを実現する「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」には2億5000万円(同1億3700万円増)を計上した。

この他、高大接続改革では、大学入学共通テストの実施に向けた関連事業として、新規に50億5000万円を計上。24年度に共通テストで「情報Ⅰ」を追加することを検討するなど、高校段階での数理・データサイエンス、AI教育の充実を図る。

今回の概算要求の大きな目玉として、学校のICT環境の整備推進がある。文科省は6月に「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」の最終まとめを公表。遠隔教育の推進をはじめ、日本の大学や研究機関を結んだ大容量高速通信インフラ「SINET」の初等中等機関への開放や、学習者用コンピューターの「1人1台環境」の早期実現を掲げた。

これに基づき、「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業」には19億4900万円(同16億9200万円増)を要求。遠隔教育システムの導入のための実証研究や小、中、高校でのSINETの接続に向けた技術的な検討、学校のICT環境整備の充実などに取り組む。

さらに、374億7300万円の大型新規事業として打ち出したのが、「GIGAスクールネットワーク構想」だ。同構想では、学習者用コンピューターの「1人1台環境」の実現や大容量高速通信インフラの整備、先端技術・教育ビッグデータの活用を一体的に推進することで、全ての子供が安心して学べる環境や、基礎学力の定着を図る学校教育を目指す。構想は3年計画で、国立や私立も含む約1万校の整備を計画している。

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