
人工知能(AI)時代を迎え、教育に求められる質が大きく変わろうとしています。【AI時代の教育を探る】は、変化し続ける教育現場の最前線を報告する企画です。
こうした一連の変革は、ひとつの大きな潮流の中で起きている。高校現場で不安が高まっている英語民間試験の採用も、この大きな流れの中で台頭したものだ。決してバラバラに起きている事象ではない。
この動きを見極め、次のステップに進むために、ここで少し立ち止まり、変革の潮流がどのようなものなのか、その大きな流れのなかで現在位置はどのあたりなのか、きちんと確認してみたい。そう考えて、元文科副大臣で、昨年10月まで文科相補佐官として教育改革に深く関わってきた鈴木寛・東大教授にインタビューした。多岐にわたる内容を4回にわけてお届けする。(編集委員 佐野領)
教育機関が『失業者量産装置』となる恐れ
一連の教育改革は、なぜ、いま実行されなければならないのか。現在の日本の教育はなぜ変えなければいけないのか。現在の日本の教育はなぜ変えなければいけないのか。まず、スタート地点を確認する。最大の課題は、人工知能(AI)時代の到来を迎え、これからの社会に生きる若者はどういう能力を身に付けておかなければいけないのか、にある。「林芳正元文科相のときに、私も座長代理となって『Society5.0時代の人材育成の在り方~社会が変わる、学びが変わる~』という報告を出した。その議論でオクスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授は『AIによって、いまの仕事の5割がなくなる』と説明した。そのうえで、彼が発したもっと重要なメッセージは『いまの若者のうち6割が、いまは存在していない仕事、に就く』ということだ」
AI時代を巡る議論では、2045年前後にAIが人間の知性を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が到来すると予見したレイ・カーツワイル氏らと、約半数の仕事がAIやロボットに置き換えられると見込むオズボーン准教授らの未来予測が、世界規模で衝撃を与えている。……
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