【性教育YouTuber】フランクに「性」を語ろう

妊娠、避妊、体の仕組み――。中高生の間で話題を呼んでいるYouTube動画がある。「YouTuberシオリーヌ」こと大貫詩織さんが配信する性教育動画だ。助産師や看護師の仕事を経て、現在は全国の学校を巡って、性教育の出張授業を続ける大貫さん。配信する動画が、なぜ現代の若者に響くのか。全2回のインタビューを通じ、大貫さんが出会った中高生の性実態とともに、現代の若者が抱く性のジレンマを読み解く。


早い段階で正しい性情報に触れるべき
――現在、どのような活動をしているのか教えてください。

全国の小中高校やフリースクール、大学で性についての出張授業をしたり、大人が性の話題をフランクに語れる場を企画したりと、性教育に関わるさまざまな活動を行っています。

特に力を入れているのが、今年2月から始めたYouTubeでの動画配信です。「性教育YouTuberシオリーヌ」として、子供たちが自身を守るために知っておくべき性の知識を配信しています。

――シオリーヌさんのチャンネルは、登録者数が4万2000人に上り、SNSでも話題を呼んでいます。なぜYouTubeに着手したのでしょうか。

子供たちに早い段階で、正しい性の情報に触れてほしいと思い、以前から性教育の講師などをしてきました。また、ブログやツイッターなど、テキストベースでの情報発信もしていましたが、一番届けたい若年層にまで行き届いていないというジレンマがありました。

若者に性の正しい情報を伝えたいと話す大貫さん

さまざまなメディアでも言われているように、今の中高生は活字離れが著しく、動画から情報収集している子がとても多いんです。

ですから、若年層に届けたい情報があるならば、届ける側がそのリテラシーに合わせなくては駄目だと思い、動画での配信に挑戦することにしたのです。

視聴者の約6割が10代、20代
――具体的に、どのような動画を配信しているのでしょうか。

妊娠や出産の仕組み、避妊のメカニズムや中絶など、内容はさまざまです。さらには多様なセクシャリティやパートナーシップ、ファミリープランなど、出張授業や講演活動では伝えきれない内容を広く、深く、イラストなどを使って分かりやすく解説しています。

出張授業の60~120分で伝えられることは、必要最低限の基礎知識など限られています。訪問する学校によっては「直接的な表現を避けてください」と言われることもあります。例えば、コンドームの話題に触れる場合などは、「コンドームの写真を見せたり、どこで売っているか、どうやって使うかを説明したりはしないでほしい」と言われることが、いまだにあるのです。

そんな現状がある中で、私自身も本当に伝えたいこと、伝えなければいけないことがあるのに、伝えられずに不完全燃焼感を抱くことがありました。

でも、動画配信を始めてからは、出張授業の終わりに、「これ以上の内容を知りたい人は、私のYouTubeチャンネルを見てね」と声を掛けることで、アフターフォローできています。

――視聴者は若い人が多いのでしょうか。

シオリーヌの動画視聴者の半数が10代や20代の若者

約6割が24歳以下です。内訳は、13~17歳が約2割、18~24歳が約4割で、届けたかった若年層に届いているのがうれしいですね。

私たち大人はどこかで、「子供たちは性について無知で、性体験とは距離がある」と考えたい節があります。一方で、私の動画のコメント欄には、中学生や高校生から「避妊に失敗したかもしれません」「最近生理がきていないのですが、これは妊娠ですか?」など、多くの相談が寄せられています。

安心して相談できる環境整備を
――誰にも相談できない中高生たちが、シオリーヌに救いを求めているんですね。

本来なら、親御さんや担任の先生、保健室の先生など、顔の見える身近な大人に相談できればいいですよね。

ただ子供たちの多くは、「相談すると怒られるかもしれない」と不安を抱えています。私に対しても「怒られると思うんですけど」と、前置きして相談してくる子がほとんどです。

「避妊しなかった私が悪いのは分かっている。怒られるかもしれないけれど、相談していいですか」――。そんな中高生の声が、とても切なく感じます。

また、性が「怒られる話題」「触れてはいけない話題」になっていることも、悲しく思います。性について関心を持つことは当然ですし、それがなければ私たちは生まれてくることすらできないわけです。

だからこそ、性に疑問や悩みを持った子供たちが、「怒られる」「恥ずかしい」と不安を感じず、安心して相談できる環境を整えなければいけないと考えています。

――そもそもなぜ、性教育の講師として活動を始めたのでしょうか。

助産師として働いていた頃、妊婦さんたちが「自分が妊娠して初めて体の仕組みに興味を持った」「産後初めて女性の体のつくりを知った」と口をそろえていたのが印象的でした。妊娠や出産を迎える世代であっても、正しい性知識を持たない人がたくさんいることに気付き、「妊娠する前に知ってほしいことがいっぱいあったのにな」と日々感じていました。

中高生が助産師など性の専門家と早い段階で出会い、正しい情報や知識を身に付け、妊娠や出産を考える年齢になった頃には、自分に与えられた選択肢をきちんと理解した状態で意思決定をできる。そんな環境をつくりたいと思い、講師としての活動を始めました。

情報精査ができず戸惑う子供たち
――性を巡る、今の若者の現状をどのように捉えていますか。

YouTubeやツイッターなどを通して、性的な単語だったり、知識だったりはたくさん持っています。ただ、そうした単語や知識が本来どんな意味なのか、何が本当で何がうそなのかを判断できず、困っている子が多いように感じます。

例えば、アダルトコンテンツで「外に出せば避妊になる」といった表現があるけれど、それが本当かどうか分からないし、誰に聞いていいのかも分からない。

大人と同じように、子供にもパートナーと触れ合いたい気持ちはあるでしょう。そのとき真偽が分からない情報や不確実な情報を信じて、行動に移してしまっているような実情が見て取れます。

――それが若年層の望まない妊娠につながっているのでしょうか。

そうですね。あと、若者の間での性感染症の流行も深刻です。若い子と接していても、性感染症を自分ごとだと捉えていない子がとても多いのです。

クラミジアや梅毒、淋病(りんびょう)、ヘルペスなどの性感染症は、初期の段階では自覚症状がほとんど無く、自分がウイルスを持っていると自覚できないケースがよくあります。これらの病気が進行すると、不妊症の原因になることもありますが、予防の大切さや早期発見・治療の必要性を知らない子が多く、とても心配です。

学校の性教育でも、性感染症について具体的に教えているところは少ないのではないでしょうか。「その内容に触れるとなれば、目の前の児童生徒が性行為をしている前提になってしまう」と考え、消極的になる先生も多いと聞きます。

根拠のある情報しか発信しない
――YouTubeでの配信で、どのようなことに気を付けていますか?

医学的に根拠のない情報に惑わされる子供を救いたいと話す

「うそをつかないこと」を常に心掛けています。性に関することは、本当っぽいけれど医学的には全く根拠が無い都市伝説のような情報があふれ返っています。そのため、そうした情報を信じて惑わされている若者がとても多い。だからこそ、性の専門家として根拠を持って伝えられることしか言わないよう意識しています。

もう一つ意識しているのは、「子供たちを否定しないこと」です。どんな相談や質問が寄せられても、「何でそんなことしちゃったの?」「何でそんなこと聞くの?」とは言いません。

自分で失敗したと気付いて相談しにきてくれたことをまずは褒めるようにしています。必ず「真剣に考えていて偉いね」「言ってくれてありがとう」などと言葉にして伝えます。

同じく、どんな質問に対しても、その子が抱いた興味を尊重しながら回答するようにしています。

(板井海奈)

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