【北欧の教育最前線】教員不足にあえぐスウェーデン

スウェーデンは深刻な教員不足にあえいでいる。現職教員の高齢化と教職の不人気により、2035年には全国で8万人弱の教員が足りなくなると推計されている。資格を持った教員を雇えない自治体が続出し、教師不在のまま新学期を迎えた学校も多い。


大量退職時代の到来

スウェーデンでは慢性的に教員が不足している。今までも景気の浮沈に伴って過不足が生じていたが、現在の状況はこれまでに経験したことのない深刻さだ。中央統計局によると、2016年時点ですでに全国で約6万4700人の教員が不足していたが、今後10年間でさらに約4万5000人が定年退職を迎えるため、新規採用者と相殺しても2035年には約7万9000人が足りなくなる見込みだ。大学入学者の6人に1人にあたる約1万8000人を教員養成課程で受け入れているが、この数をさらに8000人増やさないと間に合わないペースだ。

地方格差

スウェーデンの教員は学校長と面談して採用される。公立学校の教員は、かつては国家公務員だったが、1990年代の分権化改革によって地方公務員に変更された。学校に雇われた市の職員という扱いになり、定期異動はない。

スウェーデンの教員給与の推移。中央統計局(SCB)のデータを基に筆者作成

そのため、都市部で人気のある落ち着いた学校と、それ以外の学校とで採用に大きな隔たりが生じており、北部ヨックモック市などでは、資格を持った教員が雇えないという事態になっている。

全国の教員給与月額の平均は幼稚園で約33万円、基礎学校(日本の小中学校に相当)で約38万円、高校で約40万円となっている。図にあるように、教員給与は上がり続けているが、同時に他の業種の給与も上がっているため、優位性が無い。教員給与の地域差は大きく、首都ストックホルムと田舎の町では1割以上の開きがある。

教員資格認証制度の導入

スウェーデンでは最近まで、大学で教育に関する授業を受けた人は誰でも教壇に立つことができた。しかし、教員組合が教職の専門職化と待遇改善を狙ったキャンペーンを展開した結果、2011年に教員資格認証制度が導入された。これにより、資格を持たない教員は単年度でしか契約できず、担当生徒の成績をつけることさえ許されなくなった。教員組合のもくろみでは、資格を設けることで教員養成課程の入学希望者を増やし、質を高めるとともに、資格を持った教員が他の職に流れるのを防げると考えていた。

しかし、教員資格認証制度は待遇改善への寄与は限定的で、かえって教員不足に拍車をかけているように見える。教員養成課程を持つ大学には新入生の受け入れ圧力がかかっているが、教育実習先や指導者を確保することを考えると、容易に定員を増やすことはできない。

また、教職を去った人を対象にした大規模アンケート調査では、10人に7人がストレスや仕事量の多さなどの労働環境を離職理由に挙げた。これに次いで、半数が給与や労働時間などの労働条件を挙げた。他の職種に興味がわいたという前向きなキャリア選択は4割程度にとどまり、多くの人が教育職に魅力を感じながらも、やむなく離職したことが推測される。

管理職も不足

さらに深刻なことに、教員を励ます立場にある管理職のなり手も不足している。最近では複数の学校を1人の校長がまとめて担当することが一般的になっており、校長が学期途中に退職し、補充がないまま新年度を迎える学校や、1年で3回も校長が代わる学校もある。

校長は教員や非常勤の確保に明け暮れ、在職中の教員とは限られた予算の中で給与交渉をしなければならない。教員にとっては多くの場合、今の学校にとどまるよりも他校に転職した方が条件交渉を有利にできる。そのため、校長は優秀な教員にとどまってもらうために、自分よりも高い給与を提示することもある。

その上、学校の責任者としてマネジメントやリーダーシップが要求され、日々のトラブル対応で疲弊している。管理職のストレスは並のものではないが、雇用者側でもあるために世論に訴えることもできない。

教員不足は世界的な課題

教員不足は世界的な課題で、全世界で6900万人の教員が足りないという。教員の高齢化は各国で進行していて、多くの国がじきに大量退職時代を迎える。

一方で、教師に期待される役割はますます増えている。学校への要望が多様になり、事務作業が増え、心理的負担が重くなっていて、「やりがいはあるが、やりたくはない」仕事になりつつある。

教員の社会的地位が高いと言われてきた日本にも、この波は押し寄せている。他国の対応から学び、早めに手だてを講じる必要があるだろう。

(林寛平=はやし・かんぺい 信州大学大学院教育学研究科准教授。専門は比較教育学、教育行政学)

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