【ラグビー部にみる部活動の潮流(3)】コーチングから垣間見える部活動の指導観

静岡聖光学院中学校・高校ラグビー部監督 佐々木 陽平

対極的なマレーシアと英国のコーチング

本校は今年3月、マレーシアの王立マレーカレッジが主催する7人制ラグビーの国際大会に参加した。5カ国から招待校が参加すると聞き、期待が膨らんだ。また、マレーカレッジには日本語を学ぶクラスがあり、その日本語の授業にも積極的に参加してきた。

環境は大変過酷で、40℃近い気温の中、1日3試合をこなす必要があった。参加したどのチームも能力が高く、よく訓練されていた。何より、ラグビーがこれほどマレーシアに根付いていることに大変驚いた。

この大会では、参加者は交通費のみを負担すればよく、滞在費は全て主催者が持つ。実際に、私たちの負担は航空券代と保険代程度で、LCCを利用すれば7~8万円で貴重な海外遠征ができた。ちなみに、本校でも滞在費を負担する形で海外から高校生を招き、国際サミットを開催する予定だ。

大会に参加する中で一つ面白いことに気付いた。ハーフタイムにおけるコーチの振る舞いだ。

マレーシアのチームは、ハーフタイムでまくしたてるように話すコーチが非常に多かった。校長や大応援団が応援に来ている学校では、ベンチの反対側で応援していたある程度地位が高いと思われる教員が、ハーフタイムにグラウンドを横切り、選手を叱咤激励している場面さえ見られた。結果的に、その試合は後半にスコアをさらに離されて敗退してしまった。試合が終わった後も、炎天下で選手たちに長時間説諭しているチームが多かった。

ゴミ拾いを行う本校のラグビー部員(佐々木教諭提供)

また、7月に英国ハロウ校を招き親善試合をしたときは、前半に本校が試合を優勢に進めることができた。ハロウ校の2人のコーチは、第1回でも触れたが、元スコットランド代表で、それぞれオックスフォード大学とケンブリッジ大学の出身だ。

彼らは決して声を荒げることなく、選手たちになぜそのプレーを選択したか質問を繰り返していた。経験豊かな彼らは、当然、改善のための答えを持っているはずだが、選手が自ら課題に気付くような声掛けをしていた。後で彼らに聞くと「課題に気付くことができれば、解決のために自然と話し合いが始まる」と答えていた。

この2つの対極的な事例は、各国の文化や教育システムが強く反映していると考えられる。ただし、どちらが優れたコーチングであると断言することはできないだろう。トップダウンの指導が必要な場合もあれば、生徒の主体性を重視した指導が必要な場合もあるはずだ。

主体性で世界と渡り合う日本の高校生

本校のラグビー部は選手の主体性を養うため、大会・試合のテーマを選手たちだけで決定し、試合中のハーフタイムは選手たちだけで後半に向けた話し合いをしている。試合の最も重要な場面で意思決定を選手に任せることは、将来リーダーとして活躍する人材の育成のために有益だと考えているからだ。そのため「思考の質で相手を上回り、試合中に成長できるチーム」をスローガンの一つにしている。

ただし、ただ放任しているわけではない。選手の決定したテーマは必ず指導者が確認するようにしているし、ハーフタイムの過ごし方については、3年前からリーダーシップコーチに指導を仰いでいる。

実際に、この国際大会では、選手たちが主体的に話し合いを進める中で徐々に海外の戦い方に順応していき、初日の予選プールでは全敗だったが、敗者トーナメントでは優勝できた。大会中に成長している姿を目の当たりにし、とても頼もしく感じた。

本校の生徒の影響を受け、整理整頓して並べられたユニフォーム(佐々木教諭提供)

遠征中、さらに良いことが起こった。大会前に、選手たちでこの遠征のテーマを「日本文化の良いところを積極的にアピールする。特に3S活動(整理・整頓・掃除)に積極的に取り組む」と決めていた。試合の前後に実際に選手がゴミ拾いをしていると、その様子を観客がSNSに公開し、マレーシア国内に一気に拡散。地元メディアに取り上げられ取材を受けることになった。

海外の他の学校も整理整頓を意識するようになり、当初はテント前に乱雑に置かれていたユニフォームが、私たちの影響を受けて整頓して並べられるようになった。また、開催校の校長からも「日本の整理・整頓・清掃の文化は私たちも見習うべきである」と称賛を受けた。

高校生の持っている力には驚かされることばかりだ。部活動においては自ら課題を抽出し、解決できる力を養う、つまり主体性を持って活動させることが、世界と対等に渡り合うために重要になると痛感した。

(おわり)


【プロフィール】

佐々木陽平(ささき・ようへい) 1977年、北海道生まれ。北海道羽幌高校ラグビー部監督などを経て、2016年、静岡聖光学院高校ラグビー部監督に就任。練習は週3日、各90分という短時間練習ながら、部員が自ら考え、行動する「主体性ラグビー」を実践し、第98回全国高校ラグビー大会に静岡県代表として出場。2018日本ラグビーフットボール協会ジャパンラグビーコーチングアワード「フロンティア」賞受賞。

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