【各国の消費者教育】行政の支援システム

(公財)消費者教育支援センター専務理事・首席主任研究員 柿野 成美
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教育行政が消費者教育の中心的役割を果たすスウェーデン

少し古い情報ですが、スウェーデン大使館が発行したファクトシート(2009)に、スウェーデンの消費者教育は、教育庁と消費者庁の二つの政府機関が責任を負っており、教育行政にその中心的役割があると明記されていて驚いたことがあります。日本を含む多くの国では、どちらかと言えば消費者行政がその役割を担い、教育行政との連携の困難さを抱えているからです(このことは、OECDのレポートにも記載されており、世界的な傾向にあることも述べられています)。

スウェーデン消費者庁の学校支援

スウェーデン消費者庁では、教員経験を持つ職員が「学校コーディネーター」として、教員からの相談をメールで受け付けたり、授業で活用できる教材や授業プランを作成してWEB上で提供したりしています。教材は、消費者の権利、パーソナルファイナンス、広告、持続可能な消費と幅広く、発達段階に合わせて厳選された教材が用意されているという印象です。

連載(上)で登場した小学校の教員は、消費者庁作成の教材「smarta val(スマートな選択)」に関わり、授業でもその教材を活用していました。この教材は、父子家庭の普段の食生活が描かれているものですが、最初にどのページについて話し合いたいかを生徒に尋ね、考える時間をとった後、もっと深く学びたいことを発表させていました。

知的障害者が消費者の権利を行使するために
「HELT RATT!」

知的障害者向けの映像と教師用解説書「HELT RATT!(絶対的に正しい)」=写真=では、消費生活を送る上で必要となる知識や行動例を、障害者本人が登場した映像で考えさせるものとなっています。

大変評判が良く、教材には教育長や学校長、教員が高く評価していることを表す「いいね!」や☆印がたくさん付けられていました。

内容は、商品に不具合があった時の返品や、契約が合意によって成り立つことなど、消費者として権利を行使するための基本的な理解を促すものでした。障害者を単に保護する対象とするだけでなく、消費者としての権利を行使できるよう、自立を支援する教材構成になっていると言えます。

持続可能な消費の広がり
7~9年生対象のパワーポイント教材

最近では、「Miljomassigt hallbar konsumtion」(環境面からの持続可能な消費)をテーマとした、7~9年生対象のパワーポイント教材が公表されています。教員と共に作成したもので、買い物、家の中、食事、旅行に焦点を当てています。すべて無料でダウンロード可能です。

スウェーデンでは、学校向けに定期的に教材を提供するほか、一般市民向けにも持続可能な消費の情報提供を盛んに行っています。最近では、他省庁と連携し、衣服の製造、販売、使用、廃棄段階での環境への影響を消費者に知らせる「テキスタイルスマート」という取り組みも始めました。

スウェーデンでは、社会全体として持続可能な方向に進んでおり、商品についている環境ラベルも多く消費者教育の実物教材の宝庫でした。

(参考文献)
  • 消費者教育支援センター(2017)『海外の消費者教育 ノルウェー・スウェーデン』
  • 柿野成美(2019)『消費者教育の未来―分断を乗り越える実践コミュニティの可能性―』法政大学出版局

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