【各国の消費者教育】フェアトレードタウンが支える学校教育

大阪教育大学教授 鈴木真由子
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ドイツでは、小売店でもスーパーマーケットでも、消費者は当たり前のようにエコバッグを持参しています。ペットボトルの飲料は、デポジット制です。ボトルの種類やサイズによって返却される金額は異なりますが、リサイクルボックスに入れるとお金が戻ってきます。陳列されている板チョコのほとんどに、フェアトレードマークがついています。レストランのメニューには、ベジタリアン対応かどうかの表示も確認できました。

ドイツは先駆的立場で環境教育に取り組んできました。リオデジャネイロの環境サミットで採択されたアジェンダ21(1992年)の後、ベルリン自由大学デ・ハーン教授主導の下、BLKプログラム21(1999年~2004年)を策定し、環境教育に関する教材や実践を蓄積してきました。

このプログラムでは、ESDを通して自然科学や数学的な力、文章の読解力などの習得を目指しています。後継プログラムであるTransfer-21(04年~08年)では、「多様な主体による協働」をキーコンセプトに、それぞれの州の学校教育にESDの導入を求めてきました。

本号では、学校教育を支えている地域社会のあり方として、今年3月に訪問したフェアトレードタウン(バイエルン州ヴェルツブルク市)の様子をご紹介します。

フェアトレードショップツアー

市内にあるフェアトレード関連のショップをめぐるツアーに参加しました。ボランティアの2人のガイドによって、洋品店や雑貨店、化粧品店などを巡って歩きました。フェアトレードの意義を紹介するパンフレットや教材は、手作り感満載。地に足が着いた活動と感じました。

実際のジーンズを使った教材(写真1)

ガイドの1人は、早期退職した男性、もう1人はご自身もビーガン(卵や乳製品も食べない厳格な菜食主義者)である大学生の女性です。いずれも、フェアトレードの趣旨に賛同し、何かしらの活動に関わりたいと望んでボランティアの研修を受けたとか。最近は、フェアトレードに関心を持つ高校生などの若年層が増えているそうです。

写真1は、ジーンズの価格の何パーセントが誰の手に渡るのかを、実際のジーンズを使って示した教材です。

エコ商品であることが表示されている(写真2)

写真2は、ノンシリコンのシャンプーやクリームです。オーガニックを示すマークや、EUの原産であることなど、環境に配慮したエコ商品であることが分かりやすく表示されています。こうした商品は、フェアトレードを掲げている店のみならず、ごく一般的なドラッグストアやスーパーマーケットにも多数陳列されていました。

容器のない店

食料品や雑貨を売っている店の1つは、「容器」のない店でした。写真3は、種実や穀物を販売しているコーナーです。消費者は、それぞれ持参した容器に、必要な量を入れて購入します。

「容器」のない店(写真3)

店内の一角には、容器を持参しなかった消費者のために、ふたのついたガラスビンなどが並べられています。それらの多くは、常連客が寄付したリサイクル品です。新しい容器自体も販売されていましたが、ほとんどの消費者は持参した容器か、リサイクルの容器を使っているようでした。

店主が課題だとおっしゃっていたのは、表示です。通常、商品情報は容器に直接印字されるか貼付されたシールに記載されていますが、「中身だけを売る」システムでは、それができません。訪ねた店では、商品ごとの情報を載せたカードや一覧表を別途作成して、表示の代わりに提供していました。

手前は商品情報を掲載したカード(写真4)

写真4はせっけんです。奥に見えるのが別売の容器です。手前が商品情報を掲載したカードです。

これに近い販売方法は、かつての日本でも当たり前の光景として存在していました。駄菓子屋にいけば、ガラス瓶に入った菓子をスコップですくい、小ぶりな紙袋に入れて買うことができました。酒やしょうゆなどは、空き瓶を持参して「中身だけ」購入するのが一般的でした。買い物籠を手に、容器持参で食材を買う――ほんの半世紀前の日常です。現代のドイツで、そうした光景が確認できました。

市民の間でつながる善意

容器のない店の入り口に、ダンボールの掲示がありました。書かれている金額は、その日までに集まっている寄付金の総額です。どこかに寄付するのかと想像していましたところ、思いも寄らない使い方をしていました。

木製の手作りコイン(写真5)

写真5は、レジ横のカップに入れられた木製の手作りコインです。レジで支払う際にお金が足りない、あるいは手持ちのお金が無い消費者は、こちらのコインを使って買い物ができる仕組みです。原資は、消費者の寄付金ですので、お店自体が負担しているわけではありません。市民の善意がお店を介してつながっていることを示唆していました。
訪問した街には、もちろん大型の店舗もありました。それと同時に、意思のある小売店が共存できている点に感銘を受けました。そこには、そうした店を支援する意思のある消費者市民の存在があります。このような環境が、学校教育を支える基盤になっていると思います。

次回は、ニーダーザクセン州の消費者学校銀賞校の取り組みについて報告します。


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