【北欧の教育最前線】スウェーデンおむつ論争

スウェーデンでは「おむつ」が熱い注目を浴びている。プリスクールで使うおむつを誰が買うべきか、最高行政裁判所の判決がもうすぐ出るのだ。


「保育料」には何が含まれるのか?

発端は、ヴァルムドー市にある私立プリスクールがおむつを提供していなかったことに対して、市が3万クローナ(約34万円)の罰金を課したことだ。行政裁判の第一審と第二審ではヴァルムドー市に軍配が上がった。つまり、プリスクールはおむつを提供すべきだと判断したのだ。私立園は「おむつは洋服と同じ扱い」と考え、最高行政裁判所に申し立てた。

スウェーデンのプリスクールは原則有償で、家庭の収入状況などによって保育料が決まる。しかし、全国的に保育料の上限が決められており、例えば今年度の月額は最大で第一子の場合1425クローナ(約1万6000円)、第二子は950クローナ(約1万1000円)、第三子は475クローナ(約5000円)である。

スウェーデンのプリスクールのおむつ交換台

この保育料に何が含まれるかについて、法的な規定はない。広く合意されているのは、給食費は必ず含まれ、洋服は含まれないということのようだ。そのため、ランチやおやつは園で提供されるが、着替えや雨具、防寒着は保護者が持っていく必要がある。

おむつはグレーゾーンで、ほとんどの自治体では保護者が持っていくものだった。今回の最高行政裁判所の判決によって、おむつが保育料に含まれるかどうかが判断される。

膨大なおむつ代

プリスクールがおむつを提供すべきと判断されれば、保護者にとって良い知らせだろう。子育て家庭にとって、おむつ代は大きな負担だ。スウェーデン公共放送(SVT)は子供1人あたり年間2000クローナ(約2万3000円)の節約になると試算する。また、おむつを定期的に園に持っていく手間も省ける。

プリスクールの先生たちにも負担軽減になる。2年前からおむつを提供している園の教員は、「保護者におむつの補充を頼む必要がなくなったから、良い関係性を作ることに集中できる」と肯定的だ。おむつが統一されて管理されていれば、おむつ交換の作業もより効率的にできそうだ。

プリスクールの倉庫には大量のおむつが並ぶ(ナッカ市)

一方、自治体はプリスクールのおむつ代を見積もり始めて戦々恐々としている。マルメ市はおよそ1万7000人の園児を抱えており、おむつ代は350万~1000万クローナ(約4000万円~1億1000万円)にも上ると推定されている。担当者は、「プリスクールの他の費用から回すか、他の分野の予算から回すしかない」と言う。

ナッカ市のプリスクールは、すでにおむつを提供している。比較的裕福な自治体として知られているが、ある園長は「おむつ代が高くて大変。毎年値上がりしている」という。

もしおむつが園で提供されることになれば、就園率が高いスウェーデンでは、大部分の家庭がその利益を享受することになる。しかし、それが自治体の予算を圧迫し、他の分野や活動にしわ寄せがいくことが懸念される。

最高行政裁判所はどう判断するのか。

(中田麗子=なかた・れいこ 東京大学大学院教育学研究科特任研究員。専門は比較教育学)

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