【学び合う校内研究】授業を核にした学校づくり

形骸化しがちな校内研究を「教員が主体的に学び合う場」へと改革し、注目されている学校がある。東京都大田区立松仙小学校では2015年度から、生活科と総合的な学習の時間を中心とした研究に取り組んでおり、研究主任の松村英治教諭がそれをけん引している。教員8年目と若手ながらリーダーシップを発揮し、校内研究を改善してきた松村教諭に、インタビューの第1回では、改革の目的について聞いた。(全3回)


主体的に学び合える仕組みの協議会
――校内研究のあり方を根本から見直し、改革されている理由を教えてください。

子供たちが学校で過ごす時間の6割以上は授業です。子供たちの中には「給食が楽しみで学校に来ている」「休み時間にドッジボールがしたい」という子もいると思うのですが、そうした時間はわずかです。子供が本当に「学校に行きたい」と思うには、授業が面白くなければいけません。

「同僚と授業を見合うことが同僚性の構築にもつながる」と松村教諭

校内研究は必ずしも学校運営に必要なものではありません。研究をやらなくても学校は回ります。しかし、授業は私たち教師にとって、最も本質的で大事な仕事です。授業研究に魅力を感じ、「授業を改善したい」「授業研究は面白い」と思えたら、大きな充実感につながります。また、同僚と授業を見合うことが、良き同僚性の構築にも、働きやすい学校づくりにもつながっていくと考えています。

この「子供たちのために」という視点と、「教師のために」という視点の両面から、授業を核にして学校づくりを進めていくことが大事だと考え、校内研究改革に取り組んでいます。

――これまでの校内研究から変えた部分はたくさんあると思うのですが、特に影響が大きかったことは何でしょうか。

一番大きかったのは、「協議会」を変えたことです。意見を言いたい人や言える人しか発言できない場ではなく、一人一人が主体的に学び合える場にしたいと考え、協議会の時間中、参加者全員が頭をフル回転させて語り合えるように進め方を工夫しました。

これが現在の校内研究の流れです。協議会のグループ協議には「ラウンド・スタディ方式」(※)をアレンジしたものを取り入れています。

最初にグループをつくったら、「ラウンド1」で15分ほど、その日の授業について、メンバー同士で視点や考えをシェアします。「ラウンド2」では、グループのホスト役のみが席に残り、他のメンバーは別のグループに移動・分散して、それぞれのグループで出た意見などをシェアします。「ラウンド3」でもう一度、最初のグループに戻って別のグループの意見などもシェアした後、成果や課題をまとめ直していきます。

そして、最後の「ファイナルラウンド」で、グループで出た意見をまとめた短冊を出し合いながら、全体で協議をして考えを深めていきます。

「授業の見方」を変える
――実際に協議会を見させていただきましたが、子供たちの表情や小さなつぶやき、発言など、子供の言動を話題に交えながら進んでいく様子が印象的でした。

協議会で子供たちの具体的な言動が話題に出るのは、「授業の見方」を変えてきたことが大きいと思います。

研究授業では、「先生がどう教えているか」「発問はどうだったか」など、授業者の動きや言葉に目がいきがちです。もちろん、そこに目を向けることも大事だと思いますが、その結果として「子供がどう動いたか」を見ないと、大切なことが見えてきません。

「こんなに誰でも意見を言える協議会は全国に他にない」と講師からも評価されている

一般的な研究授業では、授業中、先生たちは教室の後方に固まっていることが多いと思います。メモを取っている人もいれば、取っていない人もいます。ただ、本校が取り組んできている生活科と総合的な学習の時間の研究では、子供たちが個別に活動したり、グループで話し合ったりする時間が多いので、子供たちを見ないと協議会では確かな意見を語れません。

そこで、子供の近くまでいって、子供の動きや振る舞いを見たり、つぶやきを聞いたりしてメモを取るなど、「授業の見方」を変えていきました。

――どのようにして、そうした課題意識を共有していったのでしょうか。

まずは自分が率先して子供の近くに行き、メモを取るようにしました。その後は、そのような動きをしてくださった先生がいたときに、そのことを毎回発行している「研究推進だより」に載せて、全体にフィードバックしました。そうしていくうちに、だんだん先生たちの「授業の見方」が変わっていったんです。

今では研究授業でグループワークが始まると、先生たちはバーっと自分が気になった子供たちの所へ行って、一生懸命メモを取っています。

「授業の見方」が変われば、協議会での語り合いも変わってきます。ゆくゆくは、個々の教員が自分の授業の中で子供をどう見るかも変わっていくと思います。

「何のためにやるの?」と問い直す
――校内研究の協議会で、校長あいさつや副校長の謝辞がないのにも驚きました。

校内研究のみならず、本校では無駄なことはとことん見直しています。「無駄」という言葉にはいろいろな捉え方があると思いますが、本校では「何のためにやっているのか意味を見いだせないこと」と捉えています。意味を見いだせないものは、やっていても徒労感や疲労感が大きいだけです。

私が本校に着任した当時の校長が、何に対しても「何のためにやるの」と問う人でした。その意識が学校全体に浸透し、「何のためにやるの」がみんなの口癖になっていったのです。何のためにやるのかを常に問い直し、意味がなかったらやめる、変えるということが、当たり前にできている学校だと思います。

協議会では、授業での子供たちの具体的なエピソードが飛び交っている

校長のあいさつや副校長の謝辞についても、そこに時間を割くより、その日の授業者が授業のことや協議会のこと、学んだことなどを最後に語ってもらった方が、講師への謝辞にも、自分自身の振り返りにもなると思ったからです。

研究紀要も印刷するのをやめ、CD-ROMにしました。冊子の研究紀要は印刷するのもとじるのも大変ですし、業者に頼むような予算もありません。データであれば、先生たちが別の学校に異動してからも使いやすいと考えました。

現在、公立学校の「働き方改革」が進められていますが、私は「教員がやりたくないからやめる」「大変だからやめる」というのは、趣旨が違うと思っています。そうではなく、誰にとっても意味がないのだったらやめていくべきです。本校では「去年もやっていたから、今年もやる」というような取り組みはほとんどありません。

※石井英真、原田三朗、黒田真由美編著『[Round Study]教師の学びをアクティブにする授業研究』(東洋館出版社)を参照。

(先を生きる取材班)


【プロフィール】

松村英治(まつむら・えいじ) 1988年、愛知県生まれ。東京大学大学院修士(教育学)。2012年度より東京都小学校教諭。東京都大田区立松仙小学校において、2016年度から研究主任として校内研究の改革を推進。全国の生活科やスタートカリキュラムの充実に向けて研修会の講師等も多数務める。主な著書に『仲間と見合い磨き合う「授業研究」の創り方』、『学びに向かって突き進む! 1年生を育てる』(共に東洋館出版社)がある。

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