【学び合う校内研究】常に試行錯誤し、改善を重ねる

教師の授業力を高めるためには、教員間で授業を見合う環境をつくることが必要――。そうした認識の下、校内研究の協議会の進め方や授業の見方を変えることで、教師が学び合う関係を生み出してきた東京都大田区立松仙小学校の研究主任・松村英治教諭。インタビューの2回目では、授業を見合うことが必要だと思ったきっかけや、周りからの信頼を得るために実践してきたことについて聞いた。(全3回)

この特集の一覧

「授業を見合う関係」を学校全体に広げる
――授業を見合う関係づくりの必要性を感じたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか。
校内研究を変えることで学び合う関係を生み出している

一番大きなきっかけは、初任校で先輩教員と日頃から授業を見合い続けていたことです。教師になって以来、自分なりに授業を改善しようと頑張ってはいたのですが、その先輩教員と授業を見合い、意見を言い合ううちに、2倍、3倍のスピードで自分の授業が良くなっていくのが分かりました。こうした関係を学校全体に広げていくことができたらいいなと、当時から考えていたんです。

そして、今の学校に異動した1年目に研究副主任、2年目には研究主任となり、校内研究を通して授業を見合う関係づくりに取り組むようになりました。

――若くして研究主任を務められていますが、校内研究の改革を進めていく中で、どのように周りを巻き込んでいったのでしょうか。

まず、相談されたらどんなことでも徹底的に相談に乗るようにしました。わざわざ声をかけていただくことは、とてもありがたいことです。どんなに忙しくても手を止めて、1時間でも2時間でも相談に乗りました。そうした姿を周りの人に見てもらうことで、相談してくれる人が増えるだろうとも思っていました。

本校に着任して1年目には、誰でも相談できる場をつくろうと思い、毎週木曜日の午後5時から自主学習会のようなものを開いて「生活科や総合的な学習の時間で困っている人は、いつでも来てください」と呼び掛けました。

当時、私は研究副主任でしたが、研究主任の先生が、しっかりとサポートしてくださいました。自主学習会に誰も来ない週も、必ずその先生だけは来てくださり、2人でどうするかを話し合ったりしていました。その先生がいてくださったからこそ、そうした取り組みを続けられたのだと、今でも感謝しています。

改革は「やってみてダメだったら、また考えるの試行錯誤を繰り返している」と松村教諭

また、「研究授業の分析を翌朝には出す」ということも、自分に課していました。私は飲みに行くのが好きなので、校内研究後に飲みに行くと日付が変わってしまうこともありましたが、それでも必ず帰宅後に授業メモを見返し、翌朝一番には「研究推進だより」を出すようにしていました。

やらなくてはいけないことであれば、「これをやってください」と言えば、皆さんやってくれます。でも、必ずしもやらなくてもいい授業研究を「やろう!」と思ってもらえるかは、研究主任のリーダーシップや日頃の振る舞いによると思います。当時はどうすれば周りから信頼を得られるかを考え、できることは何でもやっていました。

やってみてダメだったら、また考える
――組織を変えていく上で、実感していることはありますか。

組織では往々にして「何を言ったか」ではなく、「誰が言ったか」が大事なときがあります。自分が言って動いてくれないときでも、別の人が言ったら動いてくれることもあります。組織全体を変えていくのは、1人ではできません。いかに仲間をつくるかが大事だと思います。

現在は、自分のやっていることに共感してくれる仲間が増えてきています。また、それが世代を問わず広がってきていることで、改善のスピードが上がってきていると感じています。

1人でできないことは、たくさんあります。私自身、周りに支えられながらここまで来られたと感じていますし、これからも大事にしていかねばならないと思っています。

――リーダーシップとは、どのようなものだと思いますか。

周りが何と言おうと、突き進むところは突き進む強さ。そして、変えていくべきところは、周りから意見を取り入れながら変えていく柔軟さ。その両方が大事だと思います。

本校の校内研究でもさまざまなことを変えてきましたが、変えて終わりではなく、今も試行錯誤をし続けています。やってみてダメだったら、また考える。そんなプロセスを、一貫して繰り返しています。

これまでは、案を練って、練って、完成してから導入することが多かったのですが、そのやり方では遠回りになることもあるし、スタートするまでに疲れ果ててしまうこともあります。だから今はプロトタイプのようなものをたくさん出して、それを基に改善を重ねていくようなやり方で実践しています。

校内で学びの場をつくり、スキルアップ
――日々、ご自身のスキルアップのためにされていることはありますか。
週案の自由記述欄の使い方を工夫し、スキルアップにつなげている

教師になって5~6年目までは、毎週末、外部の研究会に参加して、実践をまとめては発表するということを続けていました。ただ、結婚して子供も生まれると、そうした時間をつくるのが難しくなってきまして、今は校内でいかに学びの場をつくれるかを考え、行動しています。

例えば、空き時間には、他の先生の授業を見て回っています。また、「研究推進だより」などで授業の分析や感想を書いたりすることで、「授業を語る力」をつけるなどしてスキルアップにつなげています。

また、週案には自由記述欄がありますが、多くの人はそこに1週間の反省を書いています。私も以前はそうしていたのですが、「子供たちが国語の授業で一生懸命に話し合っていました」などと抽象的なことを書いても、「何のためにやるの?」と問い直したときに意味がないことに気付いたんです。

そこで、その自由記述欄の使い方を変えました。まず、1週間の中で、「この1時間を特に頑張る」と重点授業を決め、授業の流れや手だてを書くようにしました。「一人研究授業」のようなイメージで、終了後に振り返りを書く欄もつくっています。その他にも毎週3人ずつ「重点児童」を選び、どのように関わるか方針を書いて、同じく振り返りをするような形でも活用しています。


【プロフィール】

松村英治(まつむら・えいじ) 1988年、愛知県生まれ。東京大学大学院修士(教育学)。2012年度より東京都小学校教諭。東京都大田区立松仙小学校において、2016年度から研究主任として校内研究の改革を推進。全国の生活科やスタートカリキュラムの充実に向けて研修会の講師等も多数務める。主な著書に『仲間と見合い磨き合う「授業研究」の創り方』、『学びに向かって突き進む! 1年生を育てる』(共に東洋館出版社)がある。

この特集の一覧