【各国の消費者教育】「まとめ」

横浜国立大学名誉教授 西村隆男
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世界の教室から「各国の消費者教育」もこの回で終わりです。これまでいくつかの国々の消費者教育事情をご紹介してきました。スペイン、オーストラリア、ドイツ、フィンランド、韓国、スウェーデンと、どの国の教室の表情を見ても、子供たちが生き生きとさまざまな活動をしていました。

子供たちがリアルな消費生活を感じながら学べるよう、アクティビティを中心に、身体を動かしながら考えを巡らしたり、商品の仕入れや販売、マネジメントを実社会同様に展開したりする実践の数々から、深い学びを感じ取れたのではないでしょうか。

それらの活動は、広告を批判的に読み解いたり、食品ロスの問題をどうしたら解決できるかを考えたり、見えにくくなっている世の中のお金の動きを、手作りのATMを使って学んでいました。いずれも社会との関わりを自分自身の生活課題としてつかむという消費者教育のゴールに向かい、さまざまな工夫が尽くされていました。

こうした実践には、準備時間もかかるでしょうし、他の学習すべき内容の時間に食い込んでしまうかもしれません。しかし、今を生きる子供たちに求められる学習そのもの、つまり生きる力の学びに他なりません。

日本の中にだけ目を向ければ、国内でのことがごく当たり前に感じてしまい、どんなこともこんなものだろう、やむを得まいと思いがちです。しかし、ひとたび海外に出ると、日本でのことが逆に不思議に見えたり、目からうろこと感じたりするものがしばしばあります。

9月末、スウェーデンにキャッシュレスの実情調査に出掛けました。ある中学校を訪ねると、20人ほどの生徒たちが「現金はこの数カ月見たことがない」とか、「ぼくたちはアイフォンさえあればお金のやり取りができる」と、15歳の子供が一斉にポケットからアイフォンを出して話してくれました。Swishと呼ばれる電子マネーをスマホ決済で日常的に利用しているのです。これほどまでに普及しているとは驚きでした。

つい先ごろは、フェアトレード全国フォーラムというイベントが静岡県浜松市で開催されました。ゲストとして招かれたのは、本連載でもドイツの消費者教育で紹介のあった、フェアトレードアンバサダーの生徒が活動し、フェアトレードスクールとして認定を受けたフランスの高校の先生でした。

ベルオルム高校のフェアトレードスクール認証ラベル(モレイラ先生提供)

元々は中退者の多い学校だったため、先生が課外活動で生徒にやる気を取り戻させようとして始めたフェアトレードショップの運営が、彼らに興味や関心を目覚めさせ、学校中でもさまざまな取り組みに発展し、校内で提供するコーヒーはすべてフェアトレードになったそうです。そうした学校の活動は高く評価され、フェアトレードスクールとしてはもっとも高い評価のスリービーンズ(*写真参照)となったそうです。

日本国内でもフェアトレードスクールを認定するしくみが検討されているようですが、フランスの先生は、ぜひ国際的な学校間の交流をしてみたいと意欲的な発言をされていました。

自ら考え、判断し、行動できる力が、いまこそ求められています。AIやITの発達で社会システムが激変しようとしている中で、人間にこそ求められるのは、自ら考えることや、想像力を鍛えることでしょう。消費者教育は、そうした今日の社会にもっとも求められている力を育むものではないでしょうか。


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