【上智大生がつくるパラ教育】子供に伝えたい壁の壊し方

全国の学校を巡り、パラスポーツの出張授業をする上智大学生の学生プロジェクト「Go Beyond」。代表・山本華菜子さん(同大学院修士1年)と、リーダーの野原真子さん(同大2年)、藤井清蘭さん(同大2年)は「私たちが当時知りたかったことを子供たちに教えたい」と話す。インタビュー後編では、自身を省みながら児童生徒にメッセージを送り続ける彼女たちに、大学生から見た今の学校教育について聞いた。

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大学生が授業する意義
――皆さんはどのような思いを持って、児童生徒の前に立っているのでしょうか。

山本 私たち大学生が、子供たちに伝えられることとは何なのか。子供たちと年齢の近い私たちだからこそできる授業の意義を、常に考えています。

プロジェクトを通してさまざまな障害のある方と関わってきた中で、私たち自身、「小学生や中学生の頃に知っていたかった」と感じることが、次々に出てきています。

左から代表の山本さん、リーダーの藤井さん、野原さん

そんな私たちだからこそ、今の小、中、高校生に知ってもらいたいことを、彼らの立場に立って扱うことに大きな意義があると思います。

もちろん、障害のある人を講師として招いて、要望や思いに耳を傾けることも大切です。私も実際に小学校時代、そのような機会はありましたが、障害者を助ける方法を学んだことが印象的で「障害者=手助けしなければならない、大変な人、かわいそうな人」というイメージが強くなってしまいました。実際にメンバーからも、そのように誤解していたという声が多く聞かれます。

私たち学生が伝えられるのは、そのイメージをどう超えるのかということ。困っている友達に声をかけるように、障害のある人に対して行動を起こすための必要な勇気やきっかけをつかみ取るための手法です。

「助ける対象」だけではだめ

藤井 私が小学校の頃は「街で障害のある人を見かけたら、お手伝いしましょう」と教わったように記憶しています。実際に、手助けするところまではできても、関わって友達になるというイメージは持てませんでした。

小学校や中学校は、通常学級と特別支援学級に分かれていて触れ合う機会が少なかったりします。そのため、障害がある人は「助けてあげる対象」であり、友達になって一緒に何かに取り組める可能性に気付きにくいと思います。私自身もそうでしたし、そういう環境のせいで壁をつくってしまう子供は多いように感じます。

野原 関わる機会が少ないがために壁をつくってしまって、その壁がいつの間にか差別など一番悪い形になって表に出てしまうように思います。

その壁を壊す力がパラスポーツにはあります。パラスポーツは障害のある人もない人も一緒に楽しめ、面白さや悔しさなどいろんな感情を共有できて、チームワークを育むことができる。そういう要素がぎゅっとつまっています。

謝られると悔しい
――確かに、「助ける対象」とどこかで思っている人は多いのかもしれません。

山本 私たちも活動を通して、自分たちが見えない壁をつくっていたと感じることがあります。

何か手助けをしたとき、「こんなことさせてごめんね」「面倒掛けてすみません」と謝られることが多いように思います。そんな時、「いいですよ」「気にしないでください」と、何気なく返してしまわないでしょうか。その言葉こそが、心のどこかで相手を「助ける対象」と思っている証拠だと思うんです。

出張授業では、子供目線に立った内容を盛り込む(Go Beyond提供)

プロジェクトで活動をすればするほど、そんな場面に出くわすと、「どうして謝るんだろう」と疑問を抱くようになっていきます。私たちはただこの時間が楽しくて一緒に過ごしているだけで、謝られるようなことは何もしていません。

野原 私も「ごめんね」なんて謝られるとめちゃくちゃ悔しくて、自分がまだまだ力不足だと反省します。

活動を通して、障害のある友達がとても増えました。取材や授業のときはこうやって障害について話していますが、正直、普段は「障害って何?」みたいな感じです。私にとって彼らは、心を許せる友達の1人にすぎません。

――学生の目線から、学校の教員に向けてメッセージはありますか。

藤井 小中学生時代の私のように、「障害のある人=助ける人」という価値観を持つ子供を減らしてほしいと思います。手助けした後、一歩踏み込んで個人として向き合うととても楽しいことがあると、子供たちに伝えてほしいですね。

先生はスペシャリスト

山本 全国各地の学校を回らせてもらっていますが、今の子供たちはうらやましいなと心の底から思います。先生方がさまざまな工夫を凝らして、多様な人と関われる機会をつくってくれているからです。

先日、7校の中学生が一堂に会し、パラリンピックについて学ぶイベントに参加しました。パラリンピックを学べるだけでも恵まれているのに、その学びを違う環境で育ち、違った価値観を持つ、違う学校の仲間と共有できるなんて、とてもぜいたくなことです。自分一人で考える以上に、深い答えや思考が生まれます。

子供時代に自分の頭で何かを深く考えたり、誰かの影響を受けて価値観が変わったりなんて経験は、なかなかできるものではありません。いろんな人と関わりを持てば自分の興味・関心も広がるし、感動も生まれるのではないでしょうか。私も平昌パラリンピックに行ったことがきっかけで、人生が180度変わりました。

先生方は、子供たちの世界を広げるスペシャリストだと思います。私たち団体としても、そんな先生方の力になれるよう、出張授業でお手伝いしていきたいです。

共生社会はフルーツポンチ
――最後に皆さんが描く「共生社会」について聞かせてください。

山本 団体として、決まった定義はありません。メンバーそれぞれの立場や価値観、感じ方で、描いてほしいと考えています。私の場合もさまざまな世界に飛び込みながら、日々、「あれもいいな」「これも楽しそう」とどんどん付け足している段階です。

ただ、一言で表すときは、「ミックスジュースではなく、フルーツポンチ」と言っています。全盲のスイマーとして6度パラリンピックに出場した河合純一さんの言葉です。

小中高での出張授業をさらに増やしたいと意欲を語る

ミックスジュースのように全ての素材をつぶして一つのものにするのではなく、フルーツポンチのように素材の味や形がそのまま生きているような社会。いろんな味があるからこそおいしい、そんな姿が共生社会だという考え方です。

例えば、私は理系なので計算は得意ですが、文章読解は苦手です。同様に、歩くのは難しいけれど車いすをこぐのはすごく早かったり、目が見えないけれど話しただけでその人の特徴を瞬時に判断できたりするなど、人それぞれ得意、不得意があります。

人それぞれの得意な能力が必要とされ、生かせる場がある。それが共生社会の一つの形だと思います。

(板井海奈)

◇ ◇ ◇
ソフィアオリンピック・パラリンピック学生プロジェクト「Go Beyond」
https://gobeyondatsophia.wixsite.com/sophia
Twitter:@Gobeyondsophia
連絡先:go.beyond.at.sophia@gmail.com
(出張授業の申し込みなどはこちらへ)
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