【教員免許更新制】教員研修の体系化

10年に一度、全30時間の講習を受けて教員免許を更新する「教員免許更新制」。教育に関する最新の知見を学び、指導技術のアップデートを図る目的で導入された制度だが、昨年11月に教育新聞が実施した「Edubate」の読者投票では、77%(投票数4272件)が「見直すべきだ」と答えている。導入から10年を迎えた教員免許更新制の成果と課題をシリーズで探る。第1回では、教員免許更新制の現状と課題を整理する。

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更新制度を軸とした教員研修の体系化

2009年に導入された教員免許更新制は、教員に必要な最新の知識・技能を定期的に身に付けることを目的に、10年に一度、教員免許の更新を行う制度。更新には、大学などで行われる免許状更新講習を2年間で30時間以上受講・修了し、都道府県教育委員会に申請して手続きを行わなければならない。毎年、幼稚園教諭から高校教諭まで、公立・私立を問わず約9万人の教員が更新をしている。

制度創設から5年後の16年に一度見直しが行われ、それまで必修領域12時間、選択領域18時間だった講習内容が、必修領域6時間、選択必修領域6時間、選択領域18時間となった。

新設された選択必修領域では、各大学などが、カリキュラム・マネジメントやアクティブ・ラーニングによる指導改善、道徳教育、英語教育、教育の情報化といった、教育を巡る最新のトピックや重要課題などを主な講習内容として扱っている。

更新制を軸とした教員研修の体系化のイメージ

教員免許更新制は導入から10年が経過し、免許更新のサイクルが一巡したことになる。そんな中、昨年4月に中教審に諮問された「新しい時代の初等中等教育の在り方について」では、教員免許更新制に関する検討事項として「免許更新講習と研修等の位置付けの在り方などを含めた教員免許更新制の実質化」が示され、中教審教員養成部会で検討が進められている。

その方向性として提案されたのが、教員人生を通じた計画的・継続的な研修システムの確立だ。教員には、免許更新講習だけでなく、初任者研修や中堅教諭等資質向上研修などの法定研修、大学や教育委員会が実施する各種研修・講習会など、さまざまな研修や講習があるが、それらの内容は必ずしも体系化されたものではなかった。そこで、教員が各研修で学んだ内容やその履歴を「ラーニングポイント」として蓄積。10年ごとの免許更新のタイミングで評価した上で、次の10年の研修計画を立てるようにするものだ。

教員免許更新制度を所管する文科省総合教育政策局の長谷浩之・教員免許企画室長は「これまでバラバラだった研修や講習をつなげ、免許更新の際にその成果を評価できるようにし、大学での養成から採用、研修、そして教職大学院まで、体系的・効果的なものになるようにしていきたい。年末までに具体的な方向性を固めたい」と話す。

負担軽減を図る教委も増加

こうした各種研修と更新講習の体系化には、教員の負担軽減を図る狙いもある。特に10年目の教員を対象に行われてきた10年経験者研修と更新講習の時期が重なるケースが多く、教員の負担が大きくなることが指摘されてきた。

そうした課題を踏まえ、17年に教育公務員特例法の一部が改正され、10年経験者研修は中堅教諭等資質向上研修と改められることとなった。その上で、文科省では都道府県教育委員会などに対し、更新講習の科目と中堅教諭等資質向上研修の科目の合理化や相互認定の促進を図るよう通知している。

実際に、文科省が19年に実施した調査では、更新講習を開設している35自治体のうち、大学や教育委員会での更新講習の受講により現職研修の一部を免除したり、更新講習の受講を現職研修の一部に組み込んだりしているのが7割以上の27自治体に上った。

また、教員の自己負担となる約3万円の更新講習受講料についても、一部を無料化したり、教育委員会が一部負担したりしているケースも15自治体あるなど、費用面での負担軽減も進んでいる。

大学の少ない地方の教員が更新講習を受ける際の地理的な制約については、自宅などから通年で受講できる通信教育型の普及も進んでいる。09年度の段階では220講習、受講者数1万5235人にとどまっていたが、18年度には524講習、受講者数21万3484人にまで拡大した。

教員研修の今後の方向性を説明する長谷教員免許企画室長

長谷室長は「研修と更新講習が相互乗り入れをすることで、職務として更新講習を受けられ、重複や負担の解消につながる」と話す。

免許更新制が教員不足の一因?

一方で、自治体からは「非正規教員等の採用候補者が免許状を更新しておらず、採用できなかった」などの声が一定数存在することも文科省は把握している。

また、大学で教員免許を取得して一度は民間に就職したものの、改めて教員を目指そうとしている人や、出産や育児などの理由で離職した後に教員として復職しようとしている人などの免許状が失効してしまっているケースがあり、それが「教員不足」の一因になっているとの指摘もある。

実際には、更新講習を修了すれば免許状は復活するのだが、現職でないと知らない場合もあり、更新が完了するまでの間にタイムラグが生じることも少なからず影響している現状がある。こうした状況を踏まえ各自治体は退職教員の再任用も進めているが、20年4月2日以降に満65歳となる人は、更新講習を受けなければ21年度から教員になれないなどの問題もある。

これら「教員不足」問題への対策として、文科省では昨年1月、採用後の一定期間内に更新講習を修了する見込みがある場合や、再任用等の教員について過去の勤務実績などを考慮して、免許状未更新者に臨時免許状の授与が可能なことを教育委員会に通知している。しかしながら、臨時免許状の授与には慎重な都道府県もあり、今後この制度の活用がどれほど広まるかは未知数だ。

この問題でもう一つ、文科省がテコ入れを図ろうとしているのが、今年度補正予算案で1億1100万円が盛り込まれた、教職に関するリカレント教育プログラムの開発だ。民間で働いている教員免許所持者がキャリアを生かして教職を目指そうとした際に、アクティブ・ラーニングなどの最新の指導法や、学校現場の課題などを学べるような講習を開発する。

長谷室長は「現状の更新講習は主に現職教員向けで、これから教員になろうとする人を主に対象としたプログラムがなかった。このリカレントプログラムは通信教育で受けられるようにするなど、広く展開していきたいと考えている。更新講習を兼ねることで、民間から教員を目指す人の門戸を広げることにもつながる」と期待を寄せる。

教員免許更新制の導入から10年。長谷室長はその制度的意義について「免許の更新手続きをし忘れる、いわゆる『うっかり失効』をした人数は、ここ数年ごくわずかで、10年間で制度が浸透してきたといえる。更新の要件は決して高いものではなく、免許である以上、ブラッシュアップは必要だ」と話す。

(藤井孝良)

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