【イスラエル編(中)】新型コロナという答えのない課題

多様な文化を受け入れるインターナショナルスクール

エルサレムに住むわが家の小学5年と中学3年になる2人の子供は、英国系のインターナショナルスクールに通っています(現在、新型コロナウイルスの影響で一時帰国して、オンラインにて継続中)。

生徒は、ヨーロッパ、アジア、米国と地元の生徒が中心です。日本から来て1年半ほどたちましたが、来る前に特別に英語教育をやってきたわけではないので、全て英語で行われる授業についていくのは大変です。英語が苦手な子供の対応に慣れた先生方と、特別プログラムのおかげで、どうにか頑張って学んでいます。

言葉とともに、子供たちにとって学校生活で戸惑うことは、日本と異なる文化です。例えば、学校には日本のような細かなルールがありません。小学3年でこちらに転校して来た娘は、当初は、「学校に○○を持って行っていいか?」とよく聞いてきました。日本の学校だと、例えば、「小学校低学年は、シャープペンシルは禁止ですよ」といった細かなルールがあります。しかし、こちらの学校では最低限必要なものの説明や、スマホ持ち込みに関するルール以外の細かな指導はありません。

昼食も日本に比べて自由です。学校内に小中共同の小さなカフェテリアがあり、そこで自分が食べたいものを選んで食べても良いです。家からお弁当を持ってきても構いません。食べる場所も自由です。みんなクラスの席に座って、同じものを食べて、食べ残さないように指導される――なんてことはありません。さまざまな国から来た子供たちが一緒に学んでいるので、文化や宗教が違えば、食べ物の好みも、食べられる物も違います。

本質的な問いと、答えのない課題

国際バカロレア認定校なので、授業も日本の一般の学校とは異なる点が多いです。特に興味深いのは、子供たちに考えさせ、意見を言わせたり、書かせたりする授業が多いことです。

例えば、中学3年の息子は「人体実験の是非についてみんなで議論をして、とても面白かった」と話していました。宗教と科学の関係について文章を読んで、プレゼンテーションを考えていることもありました。最近は、多文化主義や植民地政策について調べて、自分の意見を書く、という宿題をやっていました。

英語では理解も表現にも限界があるので、「こういう勉強が日本で、日本語でできたら超面白いのになあ」とよく言っています。中学生という多感な時期に、科学、宗教、政治、倫理などに関する普遍的な内容について、子供なりに考え、意見をまとめる経験は、今後の人生において、本質的に物事を考える土台を作っていくものだと思います。

小学校5年の娘も、「学校の教室に監視カメラを置いた方が良いか、置かない方が良いかについてみんなで考えて、一人ずつ発表する授業があった」と話していました。実際に、学校で監視カメラの設置について是非を検討しているそうです。そして、子供たちの発表を他の学年の生徒が聞いて、どちらが良いか手を挙げて投票をしたそうです。これは、実際の社会にある正解のない課題を、学校の中で考える授業といえるでしょう。

このような授業を受けたわが家の子供たちは、最初は先生が期待する答えがない授業に戸惑っていたようですが、徐々に面白がって授業に入り込んでいるようです。そして、大人が思っている以上に自分の意見を考えて表現できるようになってきています。

新型コロナをしっかり学ぶ意義

今、世界は新型コロナウイルス感染症が巻き起こす答えのない問題に直面して、悪戦苦闘しています。子供たちも、学校に行けない中で、日常生活が今まで通り行えない状況と、メディアが伝える情報に不安を感じています。学校現場では、学校での学びの継続ができないことから、学力の低下が危ぶまれています。

答えのない課題を学ぶ意義を実感してきた立場としては、今できない普段の勉強を無理にやることだけでなく、現在直面する問題にしっかり向き合い、それを生きた教材として学ぶことも大事な学習活動ではないかと思うところです。

例えば、世界での感染の広がりと被害状況から、現在進行形の地理を学ぶ。ウイルスの仕組みや感染の仕方と対策から、身近に役立つ生物を学ぶ。人類の感染症の経験を通じ、現在に役立つ歴史を学ぶ。感染数の急激な拡大や収束のデータから、実生活に直結する数学を学ぶ。海外のさまざまなニュース記事や映像から、生きた英語を学ぶ。各国の対策とその効果から、さまざまな問題解決の試行錯誤の事例を学ぶ。あふれる情報の中で、効果的な情報の取り方を学ぶ。差別心や不安による行動から人の心や道徳を考える。大変な中働く医療従事者の様子から仕事の意義を考える。日本の対策と国民の反応から、社会と政治を考える。

この人類において未曽有の危機であるコロナウイルスへの対応は、歴史にも残る事件であり、今後の世界の在り方にも影響を与えるものです。通常通りの教育プログラムから一歩離れて、休校中にコロナについてしっかり理解するための課題に取り組むことも大事な学びだと考えます。

今起きていることに向き合うことで、今後の世界の変化をしっかり受け止める子供を育てるとともに、学ぶことは社会とつながっていて、生きる上で役に立つことを再認識する機会にできないものかと考えるところです。

(内藤徹=ないとう・とおる エルサレム在住。フリーランス。元JICA地球ひろば推進課長)

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