【希望の言葉】綾瀬はるか、石原さとみ、猪狩ともかさんら

今年7月に開催が予定されていたオリンピック・パラリンピック東京大会が延期となった。これまで学校現場では、一線で活躍する著名人を招いてオリパラ教育を実施し、夢に挑戦する姿勢や努力の大切さ、美しさを児童生徒に伝えてきた。学校だけでなく社会全体が混とんとしている今こそ、その熱いメッセージを振り返り、児童生徒を明るい未来に導くためのヒントを読み解きたい。教育新聞が過去に取材した女優の石原さとみさんと、綾瀬はるかさん、仮面女子の猪狩(いがり)ともかさんの言葉を振り返る。


女優・石原さとみさん

東京都世田谷区立経堂小学校を訪問したのは、「東京2020聖火リレー公式アンバサダー」を務める女優の石原さとみさん。児童らと聖火リレーに関するトークセッションやゲームを楽しんだ。聖火リレーの意義や夢をもつ大切さなどを、児童一人一人に熱心に語り掛ける姿が印象的だった。

トーチを手に公式ユニホームに身を包んだ石原さんが登場すると、児童は手作りの応援メガホンを掲げ大歓声を上げた。

石原さんは「五輪の主役は選手だが、聖火リレーは私たち一人一人が主役。聖火リレーで生まれる大きな光やエネルギーを実際に感じることで、自分の中でも変化が起こるはず。ぜひ皆さんの目で見て、応援してほしい」と児童に呼び掛けた。

イベントでは、石原さんが司会進行を務め、クイズを出題。今回の聖火リレーで使うトーチについて、桜の花びらをモチーフにした形状であることや、オリンピック用が「桜ゴールド」、パラリンピック用が「桜ピンク」というカラーネーミングであることなどを児童に説明した。

石原さとみさん

石原さんへの質問コーナーでは、一斉に児童が手をあげて大盛り上がり。石原さんは発表する児童一人一人に名前を尋ね、その名前を呼びながら真剣にアドバイスした。

担任教諭のような教師になりたいという児童には「どうしてなりたいのか、そのためにはどうすればいいのか、自分の中で繰り返し『なぜ』と問い掛けて。そして、その夢を口に出すと思いが強まったり、新たな発見があったりして、夢への近道になる」とエールを送った。

その児童の担任教諭を見つけると、「そんなこと言われると、感動しちゃいますよね」と笑顔で語り掛けた。

イベント後、記者団に感想を語った石原さんは前日から緊張していたと打ち明け、「体育館に入った瞬間から、『来てよかった』と思った。とても楽しかった。皆の受け答えもハキハキしていて、まっすぐこちらを見てくれて、興味津々なのがすごく伝わってきました」と笑顔で話した。

女優・綾瀬はるかさん

女優の綾瀬はるかさんは、東京都江東区立有明西学園の児童と交流。同区にあるパナソニックセンターで、パラ競技のボッチャを楽しんだ。さらに児童が将来の夢を発表して、綾瀬さんとともに挑戦する大切さや、夢を追うことについて考えを深めた。

このイベントに綾瀬さんが登場したのは、児童にはサプライズ。スペシャルゲストとして綾瀬さんが会場に呼び込まれると、感動のあまり泣き出す児童もいたほどだった。

6年間かけて、全国の東京大会を目指すアスリートと交流を深めてきた綾瀬さん。そこで感じたことや真剣にスポーツに打ち込むアスリートの姿を写真や映像とともに、児童に説明した。

「毎日の練習や積み重ねが結果につながっている。皆さん楽しみながら目標に向かっていて、その姿は素晴らしかったし、美しいなと思いました」

綾瀬さんの言葉に大きく頷く児童たち。自身と年齢の近いアスリートの姿が紹介されると、「夢を持って諦めない気持ちを持てば、しっかりと実現できると感じた」「努力は裏切らない」といった前向きな発言が相次いだ。

続いて児童も、綾瀬さんに自分の将来の夢について発表。自ら用意したパワーポイントの資料を示しながら、弁護士や気象予報士など興味のある職業について説明した。

ロボットエンジニアを目指している児童は「介護ロボットやレスキューロボット、いつかは心を持ったロボットを作り、人を幸せにしたい」、建築士を目指す児童は「バリアフリーの家を作り高齢者や障害者の役に立ちたい。友達と買った島に家を建てるのも夢」と、思い思いの未来について語った。

綾瀬さんは、児童が前に立ち発表するごとに「そんな仕事もあるんだね」と、笑顔で耳を傾けた。

綾瀬はるかさん

質疑応答では児童に自身の夢について尋ねられると、「挑戦し続けていきたいという気持ちは、すごくある。見ていただく人を幸せにできる自分でありたいです」と、真剣なまなざしで答えた。

その後、綾瀬さんと児童はボッチャに挑戦した。都教委から「パラリンピック競技応援校(ボッチャ)」の指定を受け、日本ボッチャ協会と連携して活動する同学園の児童たち。初めてプレイするという綾瀬さんに投げ方のコツや、ルールを説明して、一気に距離を縮めた。

イベントの最後、綾瀬さんは児童と一緒にスポーツをして交流がさらに深まったとし、「たくさん食べて、たくさん遊んで、たくさん勉強して、明日も元気に過ごしてほしいです」とエールを送った。

仮面女子・猪狩ともかさん

自らの生き方を通し、困難に立ち向かう大切さを示したくれたのは、アイドルグループ仮面女子の猪狩ともかさんだった。

強風で倒れてきた看板の下敷きとなり、脊髄損傷による両下肢まひと診断され、車いす生活を余儀なくされた猪狩さん。「脚が動かなくなっても、車いすに乗りながらやりたいことはたくさんあります」――。事故からわずか1カ月後、ブログを更新し、「アイドル」として活動を継続すると宣言した。

懸命にリハビリを重ね、仮面女子の一員としてステージに立ちながら、パラリンピック東京大会の応援大使を務めるなど、アイドルの枠を超えて活躍している。そんな猪狩さんが積極的に参加するのが、子供たちに向けたパラスポーツの体験イベントだ。

教育新聞では昨年12月、猪狩さんに単独インタビューを実施。

パラ教育に注力する理由について、「実際に体験したり、触れ合ったりしないと分からないことだらけ。私自身も車いすで生活するようになってから、日々新たに発見することばかり。パラスポーツの体験イベントでは、スポーツの面白さを体感できたり、選手の人と触れ合ったりできる。子供たちが多様性を知るきっかけとしては、絶好の機会だと思います」と、前向きに語った。

さらに、パラスポーツの体験を学校の必修科目に取り入れてほしいと提案。

「パラスポーツを体験した後の子供たちが、当事者の気持ちを理解しよう、想像しようとしていた姿が印象的でした。少しの変化でもいいから、そのきっかけになるはずです」

仮面女子・猪狩ともかさん

学校教育に寄せる期待について、「子供時代からいろんな人と接して、社会にはさまざまな人がいると知っていれば、多様性を認め合える、優しい心を持った人間になれると思う。学校の先生には、子供たちがそのような環境に飛び込めるようサポートしていってほしい」と強調した。

インタビューを通して、常に感じたのは猪狩さんの前向きな姿勢だ。ネガティブな言葉や弱音がほとんど出てこない理由を聞くと、「アイドルだからです」と強いまなざしを向けた。

「アイドルはキラキラした部分を見せる職業だと思うので、マイナスな部分はファンの方に見せたくないんです。私が明るく表に出ている姿を見て、障害がある人へのイメージが変わればいいなとも思っています」と続けた。

障害の有無に関係なく、一人一人が個人として受け入れられたり、必要とされたりする社会。それこそが「多様性を認め合える社会」なのだという猪狩さん。「車いすのアイドルとしてではなく、『アイドル・猪狩ともか』として必要とされるようになりたい」という言葉が印象的だった。

(板井海奈)


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