【カンボジア編(上)】休み時間 教員は副業で駄菓子屋に

午前・午後の2部制

そこにいるだけで時を忘れるほど魅力的な青い空、透明な海、白い砂浜。知る人ぞ知るカンボジアのリゾート地「シハヌークビル」。首都プノンペンからバスで6時間ほど、カンボジア南部に位置するシハヌークビルは、中国による開発が進み、日々変化を続けている一方で、一歩路地に入ればカンボジアらしさの残る「ザ・リゾート」と「ザ・カンボジア」のどちらをも味わうことができる場所だ。

海街ならではの新鮮な海産物が所狭しと並ぶ市場は、いつも活気に溢(あふ)れる。そんなシハヌークビルが、青年海外協力隊として参加した私の任地だった。「小学校教育隊員」として小学校を2校巡回し、4、5、6年生の理科の授業支援を行った。7年前、観光目的でカンボジアを訪れた時とはまるで違う、現地の人と暮らす毎日は驚きの連続だった。

そこに暮らす人々の台所である「ピチニカムマーケット」の隣にある「チアシム小学校」。町の中心にあるこの学校には1000人を超える児童が通う。校舎は平屋建て。児童数に対して教室数が足りておらず、カンボジアの小学校では午前・午後の2部制をとっている学校がほとんどだ。

午前は7時~11時、午後は1時~5時。児童だけでなく教員も午前と午後で変わる。そして月ごとに午前・午後が入れ替わる。1月は午前に登校した児童は、2月には午後登校するといった具合だ。

校内の様子

門をくぐってまず目に飛び込んでくるのが、校庭のど真ん中に設置された国旗掲揚台。日本ではまずありえない位置だ。午前の部は学校が始まる朝7時、午後の部は学校が終わる夕方5時に掲揚台前に全員が集まり、毎日国歌を歌う。

「ガーンガンガンガンガンッ !!」

「チャイム」として鳴らされるホイール

思わず耳を押さえたくなるほどの大迫力で打ち鳴らされる金属音は、授業の開始と終了を知らせる「チャイム」。校舎の柱に車のホイールがぶら下げられ、時間になると金属の棒で思いっきりたたくのだ。

担当するのは毎年、ホイールがぶら下がっている前の教室の児童。担当する児童は腕時計を身に着けて、時間になると全校に響きわたるように力いっぱいホイールをたたく。その音を聞くと教室で授業を受けている児童たちは大喜びで手をたたき、歓声をあげる。

休み時間が大好きなのは日本の子供もカンボジアの子供も同じ。チャイム担当の児童がついつい遊び過ぎてホイールをたたき忘れ、休み時間が長くなってしまうのはご愛敬(あいきょう)だ。

人気なのは、女の子ならゴム跳び、男の子ならサッカー。「あれをしたらダメ、これをしたらダメ」という大人はおらず、児童らは自由にサンダルを脱ぎ捨ててはだしで駆け回る。

教員の副業

この休み時間、児童にとっては楽しい時間、教員にとっては稼ぎ時。信じられないことに教員のほとんどが、休み時間になると駄菓子屋さんに変身する。副業だ。

校舎の裏のトタン屋根の下が、それぞれの先生のお店。食べ物、飲み物、お菓子、遊び道具、文房具――と、品ぞろえ抜群。子供たちはここで自由に買い物ができる。朝食や昼食を買う子から、買ったおもちゃで早速遊ぶ子まで。

校内に並ぶ教員の駄菓子屋

校内で買い物ができるとあって、教員の駄菓子屋はいつも大盛況。その結果、先生が授業に遅れてくるなんてことは日常茶飯事。「勤務中に副業なんてけしからん」と思う一方で、その背景には月250ドル~300ドルという、教員の給料の低さがあることを忘れてはいけない。

華やかな折り紙で飾られた教室には、椅子と一体となった木製の机が並ぶ。教室に入ると、児童たちが全員立ち上がり、合掌してあいさつをしてくれる。合掌の形をしたあいさつは「ソンペア」と呼ばれるカンボジアの大切な文化。小さなころから年上を敬うことを教えられている子供たちは、あいさつがとても上手だ。1年生から6年生までどの子も丁寧にあいさつをしてくれる。

あいさつを終えると授業が始まる。教科はクメール語、算数、理科、社会、体育、英語。理科の中には日本でいうところの保健や家庭科の内容が含まれ、社会には図工や音楽の内容が含まれる。

私はこの学校で1年9カ月、理科の授業支援を行った。その中にも、たくさんの驚きがあった。

(猪股史子=いのまた・あやこ、埼玉県の小学校教諭。青年海外協力隊の任期を終え、現場復帰)


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