【北欧の教育最前線】お誕生会は一大事!

ノルウェーでは子供のお誕生会は一大イベントだ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ノルウェー首相が子供向けの記者会見を開いたが、子供たちの関心事の一つは「誕生会はやっていいのか?」だった。また、ノルウェー公衆衛生機構による感染予防ガイドラインには「誕生会」もトピックに取り上げられている。

風船、ピザ、プレゼント

準備万端! 農家の納屋が会場のお誕生会(撮影:ハンナ・ハフスタ=シャルベ氏)

風船が飾られ、ピザやソーセージ、炭酸飲料が並び、自家製のケーキがふるまわれる――これがノルウェーの誕生会だ。招待客はクラスの全員、あるいは女子全員か男子全員である。

みんな約50~150クローネ(約540~1600円)相当のプレゼントを持ってくる。場合によっては、幼稚園時代の友達とのパーティー、親戚とのパーティーなど、クラスの子を招いたパーティーだけでなく、何度も行う家庭もあるという。

筆者も子供の誕生会に参加する機会が幾度となくあったが、どれもにぎやかでカラフルなパーティーだった。お誕生日の子供の家で行われることもあれば、広い公園で開かれることもあった。

海賊船の形のお誕生会ケーキ(撮影:シャニーン・ブレンナ氏)

ノルウェーの住宅は総じて大きいため、大勢の子供を招いても支障がないことが多い。ちなみに、現在は、コロナ感染予防のために、誕生会はできるだけ屋外で行うことが推奨されている。

ティーンエージャーになると誕生会の様子も変化する。女子は大人抜きで「食事会」を開いたり、男子は映画館に繰り出したりするようになる。

家庭と文化の間で板挟み

誕生会は、子供たち自身にとっては権利であるが、保護者にとってはほとんど義務であるという。それゆえ、学校の保護者会や親同士の世間話の中でも、関心の高いトピックだ。

多くの子供たちが、誕生会を心待ちにしている一方、誕生会が悩みのタネである家族もいる。移民の背景をもった家庭だ。

車がのっている手作りお誕生会ケーキ(撮影:ハンナ・ハフスタ=シャルベ氏)

誕生会文化の研究者によると、例えばムスリムの家庭は比較的、子供の誕生会を重視していない。よく知らない家庭で行われる誕生会に子供を送り込むことへの抵抗や、宗教的に食べられないものが出されるのではないかという不安から、招待されても参加しづらい場合がある。

クラス全員を招待して、全員が参加するという暗黙のルールが問題を表面化させる。移民の背景をもつ子供は、しばしば家庭とノルウェー文化の間で板挟みになってしまう。

ある女の子は、クラスの子の誕生会に7年間招待され続けて、一度だけ参加を許されたという。ただし、姉が一緒に行くことが条件だった。

文化の融合の場

しかし、誕生会を文化の融合の場として肯定的に捉える意見もある。鶏肉のソーセージやベジタリアンピザを用意するなど、多様な背景をもつ子供に配慮するケースも見られる。

お楽しみのプレゼント開封(撮影:シャニーン・ブレンナ氏)

また、移民家庭では、「通常の」パーティー食に加えてエスニック料理を出したりする。お互いの文化を理解し、自分の文化を見つめ直し、共生の道を探る機会にできるかもしれない。

長年変わらず続けられていた典型的なお誕生会は、異文化との出合いによって徐々に形を変えていくかもしれない。誕生日は年に一度の大切な日。保護者たちは悩みながらも、子供たちに楽しくて喜びにあふれた思い出を作ってもらおうと工夫を凝らしている。

(中田麗子=なかた・れいこ 東京大学大学院教育学研究科特任研究員。専門は比較教育学)

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