「選択的不登校」に備える 豊福晋平准教授に聞く

子供たちに元気よく学校へ通ってもらいたい気持ちは、教員も保護者も同じ。しかし地域の感染状況を見て、「選択的不登校」を検討する家庭が出てくる可能性がある。それに学校はどう備えるべきか。教育情報化と、学校評価・広報の効率化を実践的に研究する国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの豊福晋平准教授に聞いた。


保護者の葛藤
――学校内感染を防ぐためには保護者の協力が必要という状況ですが、現状をどう見ていますか。

3月から始まった一斉休校と外出自粛の生活に、子供も保護者もかなりのストレスを抱えたことと思います。学校が再開されて、子供たちに笑顔が戻ってきたと思ったら、一足先に学校再開を進めていた北九州市で第2波が発生しました。

保護者の葛藤を図式化すると、このように表現できる(森田亜矢子・画)

保護者の多くは学校内での感染リスクと、自宅学習のつらさとをてんびんに掛けるような葛藤が生まれていると予想します。特に高齢者の同居家族がいるご家庭では、学校内でのコロナ感染リスクに対する不安は強い。子供自身は元気であっても、子供を介して同居家族が重症化するリスクは深刻です。

選択的不登校の形をとり、子供の登校を控えれば、子供を介したコロナ感染リスクはゼロにできるものの、仕事をしながら子供に自宅学習させることもまた、保護者にとっては「地獄」です。

どちらを選択しても保護者の不安とストレスは少なくないということを、われわれ教員も理解しておくべきです。市中のコロナ感染はコントロールできなくても、保護者の不安とストレスを少しでも削減するための手だてはあります。

学校と保護者をつなぐコミュニケーション・ライフライン
――具体的にどのような手だてが有効でしょうか。

保護者と学校とのコミュニケーション手段が、「代表電話回線だけ」という学校が少なくないと思います。私は保護者と学校をつなぐ仕組みを、「コミュニケーション・ライフライン」と呼んでいますが、多くの学校でこのライフラインが作られていません。

以前からトラブル回避のために、「担任の個人的な電話番号やメールアドレスを、保護者や子供たちとのやりとりに使ってはいけない」という規則を、教育委員会が設けている自治体が多いからです。

しかしながら、この混迷した状況の中で、代表電話しかコミュニケーション手段がないというのは非常に問題です。なぜなら、保護者の多くは「これは電話するほどではないのではないか」と考え、不安やストレスを心の内に秘めてしまうからです。これらが積もっていくと、居住エリアの近くで第2波が発生といった大きなストレス要因が発生した時に、一気に爆発してしまうリスクがあります。

日々、小さな不安でも声を拾えて対応できていれば、第2波が起こった時にも学校と保護者が力を合わせて、コロナ感染拡大に対峙(たいじ)していけます。そのためには、学校と保護者をつなぐコミュニケーション・ライフラインを早急に確立させておくべきだと考えています。そして、そのために必要になるのは、ここでもまたICT環境整備です。

――ICT環境整備の内容も多岐に及ぶと思いますが、どのような優先順位で考えたら良いでしょうか。

すでに自治体のICT環境整備の進捗(しんちょく)に差が出始めています。遅れている自治体でも、今まさに取り組んでいることと思います。端末の入手は今すぐには難しいというところもあるでしょう。ICT環境整備の中でも、優先順位を持って取り組んでいく必要があると考えています。

学校HPでのこまめな情報発信も信頼関係に効くと語る豊福准教授

最も順位を上げて取り組んでいただきたいのが、保護者とのコミュニケーション・ライフライン。これは、例えばグーグルの「G suite」や「Microsoft Teams」などのプラットフォームを導入し、教員と生徒にIDを発行しさえすれば、即日からでも整えられます。費用もほとんどかかりません。保護者の不安に寄り添って、学校に対する満足度を高める効果は大変高いものです。

授業のオンライン化や、オン・オフを併用するハイブリッド化は一朝一夕に確立するのは難しいので、半年ないしは1年くらい試行錯誤する期間が必要になるでしょう。しかし最初にコミュニケーション・ライフラインを確立させておくことで、これからしばらく続くであろう「Withコロナ」の状況でも、学校と保護者が一丸となって課題に対処していける信頼関係の基盤ができます。

家庭の同居家族の状況などによっては、選択的不登校の家庭が出てくることは避けられないかもしれませんが、その家庭の子供たちを孤立させないためにも、ICT環境整備はまず「コミュニケーション・ライフラインの確立」から着手してほしいと願います。

(森田亜矢子)


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