【となりの大学生】東大生がコロナ後の学校支援

長期休校による学習の遅れなどを取り戻すため、夏季休業を返上しての補習など現場の教職員に多大な負担が強いられる中、人材確保が喫緊の課題となっている。そんな「ピンチの学校現場」を救うため、大学生らが立ち上がり、児童生徒のサポートに乗り出した。東京大学の学生が中心となり立ち上げた「となりの大学生」もその一つだ。学習支援にとどまらず、アフターコロナを見越してオンラインで進路相談に応じるなど、包括的な支援を展開している。同団体代表であり、東京大学医学部3年生の藤村優さんに話を聞いた。


4チームで包括的なサポートを

団体を立ち上げたきっかけについて「ニュースを見ているだけの自分に、もやもやしていた」と振り返る藤村さん。

「今後歴史に残るであろうコロナ時代に、当事者であるにも関わらず、何もできない自分に心苦しさがありました。大学生の私にできることを考え、教育支援だと思い付きました」

思い立ったのは4月初旬、藤村さんが学内の知人らにLINEで呼び掛け、およそ25人が集まった。立ち上げから1カ月足らずだが、コロナ禍で通常の学校生活が送れていない児童生徒の支援策を次々と具現化させてきた。

「となりの大学生」の特徴は組織を4分割し、学習支援にとどまらず包括的なサポートを提供する点。現在は「共通の理念をもった学生団体」ではなく「異なる方針をもった教育支援グループの連邦組織(プラットフォーム)」という認識で活動しているという。

  1. Study班(学習サポート隊)
    主に高校生向けに学習支援を実施。オンライン自習室を開放し、学習支援などを行う。
  2. Recreation班(おもしろ発見隊)
    日常の雑学をきっかけに、学びに興味をもってもらうことが狙い。楽しく学ぶことをモットーに動画コンテンツなどを作り、オンラインでの双方向授業を構想する。
  3. University班(先輩ン家)
    双方向の対話を通して、学問や生活など「大学生のリアル」を高校生が知り、 進路に役立てる機会の提供が目標。地方の生徒をメインターゲットに、オンライン進路相談会を開催する。
  4. Communication班(推薦受験サポート隊)
    東大推薦入学生が多数在籍。推薦入試に興味のある生徒対象に、オンライン相談会を開催。

 

学習支援を柱に、外出自粛など、これまでの日常生活を送れなくなった子供たちのために楽しみながら学びを深める方法の提案や、受験に不安を抱える中高生に向けて丁寧な進路相談を提供する。

地方の中高生に進路相談

代表の藤村さんが所属するUniversity班では、特に地方に住む中高生に向けた進路相談支援を充実させようと動いている。

「地方の中高生は都市部の中高生に比べ、平時でも情報収集が困難な面がある」

となりの大学生代表で、東京大学医学部3年生の藤村優さん(オンライン会議システムで取材)

藤村さん自身は東京出身だが、メンバーには地方出身者が複数いる。彼らから地方の中高生の実態について聞き、支援したいという思いが以前からあったという。

5月末には2日間に渡り、メンバーの母校である島根県立津和野高校の生徒を対象に、オンライン進路相談会を開催した。U班にとって初めての本格的なイベントだったが、藤村さんたちは手応えを感じたという。

生徒からは大学生活だけでなく、アルバイトや一人暮らしなどについて、幅広い質問が次々に投げ掛けられた。

「専門学校と大学のどちらに進むべきかといった、答えに悩む問い掛けもありました。中には大学のイメージをぼんやりとしか持てていない生徒さんもいたので、自分たちの経験を基に、できるだけ具体的なアドバイスを心掛けました」

中高生にとって年齢が近い大学生は、いわゆるお兄さん、お姉さん的存在のようで、オンラインを介しても距離が縮めやすいと話す。

「高校生も私たちもリラックスして、ざっくばらんに話せる距離感がいいなと感じました。自分たちも何年か前まで同じ立場だったので、なかなか高校生から言葉が出ないときでも、当時の悩みを振り返りながら話せました」

参加した高校生や教員からも好評で、定期的な開催の要望もあったという。

学校現場とのマッチング不足も

一方で藤村さんは学校外の存在が、学校の中に入って活動することの難しさも感じていると明かす。活動に当たり複数の学校や教委に声を掛けたが、なかなか実現までたどり着かないケースが多いという。

「声掛けしても『難しい』と断られることがあり、もどかしさを感じています。私たちは困っている子供たちや学校をサポートしたい思いで活動しているので、そこを理解してもらうことが一番の課題です」

学校再開で現場の教職員に過剰な負荷がかかる中、文科省や一部の自治体では元教員らを対象にした「人材バンク」の取り組みが進む。しかし他方で、「何かしたい」と行動に移す支援者と学校現場がうまくマッチングできていない現状もあるようだ。

学校現場の通常再開に合わせるように、同団体も今後の活動の方向性について、さまざまな可能性を視野に入れている。

藤村さんは「コロナ禍で培った学校現場のオンライン文化は、今後も残り続けるのではないか」と、オンラインだからこそできる支援の在り方について構想する。

「例えばコロナ以前、地方に住む中高生がオープンキャンパスに参加するためには予算面など、都市部の中高生に比べハードルが高かった。しかし今回の事態で、離れていてもオンラインでつながれ、自分の将来像について考えを深められることが分かりました。同じく学習支援など他の支援についても、オンラインであればこれまでチャンスがなかった児童生徒にも届けられるのではないかと期待しています」

藤村さんは、今後も積極的に学校現場で活動していきたいと前を向く。

「コロナ禍でまだまだ学校は混乱していると思います。大学生の私たちだからこそできる学習支援や進路相談などで、全国の子供たちをサポートしていきたいです」

(板井海奈)

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