【J・エリオット氏】日本の子供たちは、人種差別にどう向き合うか

「青い目の人は茶色い目の人より優れています。青い目の子だけ5分余計に遊んでよろしい。茶色い目の子は水飲み場を使わないこと」――。1968年、白人プロテスタントの町・米アイオワ州ライスビルの小学校で、教師のジェーン・エリオット氏はある実験を行った。初日は、小学3年生の児童を青い目と茶色い目の2つのグループに分け、青い目の児童だけを優遇。茶色い目の児童には窮屈な襟をつけ、劣等性を繰り返し非難した。翌日にはそれぞれの立場を逆転。最後には差別的な扱いをなくし、クラスで「人種差別を受ける気持ち」を話し合った。エリオット氏は87歳になった今も人種差別と戦い続け、「日本の子供たちにも、違いを受け入れることを教えなければならない」という。


人種差別主義者が大統領に
――1968年の「青い目・茶色い目」の授業から50年以上がたちましたが、米国ではジョージ・フロイドさんの死をきっかけにした人種差別への抗議運動が起こるなど、いまだに人種差別が根強くあることがうかがわれます。

米国では近年、人種差別の歴史において、極めて重大な変化がありました。人種差別や性差別、年齢差別を容認し、同性愛を嫌悪する、民族主義的で無知な人物を、米国のトップである大統領の座に選んだことです。

ドナルド・トランプ氏が大統領の座に就く前には、確かに人種差別を無くしていく前向きな変化が起こっていました。ところが、トランプ氏はビジネス界の大金持ちを味方に付けて、20世紀後半から2000年代初頭に達成された多くのよい変化を、無かったことにしてしまいました。

もし今「青い目・茶色い目」の実験を体験したとしたら、そうした態度や振る舞いは変わり、信念も変わるでしょう。体験しないでいるよりも、よりよい市民になれるはずです。私が1968年に実験を行った時と比べて、この実験も受け入れてもらいやすいと思います。差別を受けてきた人々は声を上げ始めています。これからまた「トランプの世界」に逆戻りすることはありえないでしょう。

――日本では米国と比べて、「多様な人種の人々」はマイノリティーであり、多数派の側では自分自身の差別的な考え方や振る舞いを自覚していないことがあります。この状況に対して、教師は何をすべきですか。

私のWEBサイトでは、人種差別を考えるための学習教材を公開しています(注:WEBサイトにある教材では「よくある考え方」の例が提示されており、そうした考え方がなぜ、人種差別の観点から見て問題があるのか「答え合わせ」をすることができる)。

この教材を日本の現状に合わせて修正し、子供たちにやらせてみてください。子供たちに回答を求め、それぞれの回答についてグループで話し合ってください。

それから、マイノリティーの人々の出身国や地域について知るための本を紹介し、全員に「異なる文化は異なるものとして存在するのは事実だけれど、それでも全ての人々は『人類』という、一つの同じ人種のメンバーである」ということを認識させてください。

「多様な人種の人々」という言い方はやめてください。そういう考え方をしているうちは、問題を解決することはできません。

苦痛を受け入れるか、拒んで変革を起こすか
――日本の子供たちが外国などに行って、人種差別の被害者になるかもしれません。

もちろんその可能性はあります。完璧な国や地域などありません。人はどこに住んでいようと、家や宗教、学校や会社で教えられていることを、自分の内面に受け入れています。

私たちは、自分とは違う考え方をする人たちにも共感し、その違いを受け入れるように子供たちに教える必要があります。

ただし「受け入れる」といっても、身体的・精神的なダメージを受けない限りは、です。もし苦痛を受けたなら、その苦痛を受け入れながらも知恵を使って状況を変えていくのか、それとも状況を受け入れるのを拒み、私たちみんなのために変革を起こすのか、判断しなければなりません。

――教師は子供たちに、どんな知恵を授けるべきでしょうか。

私は、良識ある人は全員、19世紀の米国の黒人指導者であるフレデリック・ダグラスの言葉を読んでおく必要があると思います。

「正義が否定され、貧困が強制され、無知がはびこる。そしてある階級の人間たちにとって、社会はわれわれを圧迫し、略奪し、堕落させるための陰謀組織であると思い込まされる。このような場所では、人間、財産ともに安全にはならない」

「権力は要求なしには何も認めない。今までも、これからも。ある人間たちが静かに服従すれば、まさに不正と悪の措置が彼らに課される。それは言葉か打撃、またはその両方で抵抗するまで続く」

彼は「苦闘なくして前進なし」とも言いました。「フレデリック・ダグラス」とグーグルで検索して、彼の歴史と言葉を読んでみてください。地球上どこにいようと、自分には人間としての権利がある――という固い信念を持てるはずです。

(秦さわみ)

【プロフィール】

ジェーン・エリオット(Jane Elliott) 1933年、米アイオワ州生まれ。小学校教師であった1968年、キング牧師の暗殺に衝撃を受け、直後に「青い目・茶色い目」の教育実践を行う。後に教職を離れ、反人種差別の活動を行うダイバーシティ(多様性)・トレーナー、教育者として活動。


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