コロナ禍の学校活動 「対策講じて継続」に自治体苦心

新型コロナウイルス感染拡大の波が、首都圏や大阪などを再び襲っている。東京では7月15日、感染状況の警戒レベルを最も高い「感染が拡大している」に引き上げた。全国で長期にわたった一斉休校の影響で児童生徒の学びの遅れが深刻な中、感染の第2波に見舞われた地域では学校活動と感染対策をどう両立させたらいいのか。

教育新聞が「強まる第2波への警戒感 再び一斉休校すべき?」をテーマに13日から募っている「Edubate」の読者投票では、15日現在、「地域で感染第2波が来た場合、再びその地域の学校を一斉休校にすべきだと思いますか?」の問いに、「思う」が65%に達し、「思わない」の24%を大きく上回る。

一方で、大阪府が感染の第2波、第3波が起こっても原則として一斉休校を求めない方針を打ち出すなど、多くの自治体は学校関係者から感染者が出ても休校措置は必要最小限に抑え、感染対策を徹底しながら学びの遅れを取り戻そうと苦心している。


学びの遅れに最大限配慮する姿勢の都教委

都教委は6月19日付で、都立学校の「新型コロナウイルス感染症対策と学校運営に関するガイドライン」を改訂した。臨時休校に関しては、「学校の再開後、再度、感染者が増加する事態が想定される」と、厳しい現実を直視した上で、「今後、新型コロナウイルスとともに社会で生きていくためには、感染リスクはゼロにはならないという認識に立ち、感染症対策の徹底と学習の保障の両立を図り、第2波に備えていくことが必要」と、学びの遅れに最大限配慮する姿勢を示している。

具体的には、児童生徒や教職員から感染の疑いがあることが判明した場合、感染がないと確認できるまで、疑いを受けた児童生徒や教職員は出席停止、自宅勤務とするが、校内での集団発生が疑われる場合を除いて、原則として臨時休校は実施しないとした。

感染者が判明した場合は、感染者の行動範囲を消毒し、校内での濃厚接触者の特定がなされるまで、原則としてその学校を臨時休校にするとしている。出席停止の措置をとる児童生徒らを必要以上に増やさないよう、感染者と接触していても、濃厚接触者に特定されなかった児童生徒や教職員は、感染症対策を徹底して行っていたのであれば、原則として登校は可能と考えられるとした。

一斉休校は求めない方針の大阪府

大阪府は7月3日に開いた新型コロナウイルス対策本部会議で、感染拡大の第2波、第3波に見舞われても、原則として府内の学校に一斉休校を求めず、府立学校は分散登校とオンライン授業を組み合わせて対応するとの方針を打ち出した。

感染が拡大し、府民に警戒を呼び掛ける段階になっても、学校で授業形態の制約や教室の人数規制はしないとした。警戒最高レベルの非常事態を示す段階となってから、分散登校、短縮授業、オンライン授業を組み合わせた対応を求め、教室の人数を15人から20人程度に減らし、感染リスクの高い活動は実施しないとしている。

対策本部会議では3月から3カ月に及んだ一斉休校の効果と影響について検証し、長期休校で子供たちの生活リズムが乱れ、心理的に不安定になる児童生徒もいたこと、学びの保障に学校や地域、家庭による差が見られたこと、子供が家庭で過ごすようになって保護者の負担が増したことなど、負の側面が大きかったと結論付けた。

日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会が5月に「医学的知見」として、「学校や保育施設の閉鎖は新型コロナウイルス感染症の流行阻止効果に乏しい」との見解を示したことも、府内が感染拡大の第2波に見舞われても、原則として一斉休校を求めないとした根拠の一つに挙げた。

吉村洋文知事は「学校から陽性者が出た場合、(当該校の)一時的な休校は必要だが、できるだけ教育活動は進めていきたい」との認識を示した。

独自の感染予防対策をする北九州市

5月下旬に感染拡大の第2波が起きた北九州市では、市教委や学校が独自の取り組みを交えて、学校活動の早期再開につなげた。

同市内では守恒小学校の児童6人が新型コロナウイルスに集団感染し、厚労省から児童間で感染が広がった可能性があると指摘された。5月29日から20日間に及んだ臨時休校の間、児童の体調や心の内面に不安が見られないか、学校側が保護者と連絡を取り合い、感染防止策を話し合った。緊急時の児童の心の変化をどう支援すればいいか教職員がスクールカウンセラーから研修を受け、小児科医や市教委、地区のまちづくり協議会、PTAなどを交えた意見交換会も行って、早期の学校再開に備えた。

6月18日の学校再開後は独自の感染予防対策として、児童が一定の間隔をとって密集や密接を避けることができるように、天気に関係なく傘を差して登下校することを決めた。

教室では机と机の間隔を最大限広げるため、机の配置を放射線状にするよう工夫し、机上には飛沫(ひまつ)防止のガードを付けた。教室は入り口と出口を決め、一方通行にした。各学年に5クラスずつあるが、昼休みに外へ出て校庭で遊べるのは毎日1クラスずつとし、密集しないようにした。

吉田一憲校長は「学びを止めないことと、感染を拡大させないことの両立につなげるため、独自の対策も考えた。マスクをしていて子供たちの表情は見えにくいが、教員には子供たちの心の状況をよく見てくださいと言っている」と話す。

北九州市は校内で新型コロナウイルス感染を疑う児童生徒間のいじめが起きないよう、子供向けに30秒の啓発動画を作成し、7月2日から公開している。「私たちが戦う相手は新型コロナ」と、差別や偏見を許さないメッセージを投げ掛ける内容になっている。

「最善策を見つけていく期間が続く」

学校再開に当たり、教育新聞が6月に取材した新潟県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の委員である齋藤昭彦・新潟大学医学部小児科教授は「どれだけ対策を講じても校内で感染者が出ることや、学校がクラスター化するリスクはゼロにはならない」と言及した。

専門家として、「状況は刻々と変化する可能性がある。いろいろな対策を立てながら、成功・失敗を経験し、最善策を見つけていく期間がしばらく続くだろう」と、予断を許さない状況が続くと強調。

その上で、「どれだけ教職員が注意していても、今後も学校がクラスター化する事例が発生する可能性はある。そのときに文科省や教委、教職員、保護者、学校に関わる人間がいかにパニックを起こさず、現状をしっかりと把握し、なぜ、その事例が起きたのかを冷静に判断し、対処できるかが非常に大切だ」と、Withコロナ時代を見据えた学校運営について落ち着いた対応を求めた。

収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症。徹底した感染症対策を講じながら学校活動を続けていくのには、児童生徒のみならず、教職員や保護者にも大きなストレスがのしかかる。感染症対策で運動会、修学旅行など子供たちが楽しみにしていた学校行事が延期や中止に追い込まれ、部活動や校外活動も制約がかかる。これから盛夏を迎え、マスクを着けてさまざまな活動をするのは熱中症のリスクもある。

「今まで当然としてやってきたものが、当然でなくなっていることが大きい」と、全国高等学校長協会の萩原聡会長(都立西高校長)は話す。過去に例のない障壁を前に、子供たちの学びの遅れをこれ以上広げたくないと懸命な自治体は、学校関係者や医療関係者と連携を強めながら、難しいかじ取りを乗り切ろうとしている。

(山本泰人)


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