【Withコロナ挑戦記】学校再開後のオンライン活用

新型コロナ感染第2波への不安を抱えながら、休校による遅れを取り戻そうと苦心している学校現場が多い中、東京都調布市立多摩川小学校の庄子寛之教諭は、自身が企画したオンラインイベントでつながった人たちとの縁を生かしながら、新たな授業スタイルの創造に取り組んでいる。インタビュー2回目は、学校再開後におけるオンラインを活用した授業の工夫、今後「1人1台」になった時に必要な教師の心構えについて聞いた。(全3回)

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東京と鹿児島の学校を「Zoom」でつなぐ授業
――6月から大半の学校は再開していますが、コロナによる休校が与えた学校教育へのインパクトは相当大きなものがあったと思います。

再開後は授業の遅れを取り戻さなければいけないし、そのために運動会や学芸会などの行事は中止もしくは縮小になっています。今はコロナ対応として「しゃべってはいけない」ことも多いので、教師が「教える」ことが多くなってしまっているのではないかと思います。

しかし、子供が「しゃべってはいけない」中でも、小さな工夫はたくさんできます。例えば、私のクラスでは一人一人が小さなホワイトボードを使って、そこに自分の考えや意見を書き、「しゃべれない」ではなく、「しゃべらないことを楽しむ」授業をしています。

――学校再開後もオンラインを活用しているのでしょうか。

例えば、5月27日のオンラインイベント後に、鹿児島県阿久根市立尾崎小学校の教頭の山口小百合先生とつながることができたので、今は同校とうちのクラスをZoomでつなぎ、総合的な学習の時間で、持続可能な社会について一緒に考える授業をしています。

初回は、まずお互いの学校紹介をしました。それ以降は、それぞれの学校の課題についてZoomで話し合うような形で進めています。

学校再開後は「しゃべらないことを楽しむ」授業に取り組む

鹿児島県では、県内の小学校などの45%に複式学級があるそうです。今つながっている学校も、全校児童が8人しかいません。だから、鹿児島の学校の子供たちは、Zoom越しに39人いるうちの学級を見て、「なんでこんなに人がいるの?」と驚いていました。

反対に、うちの学級の子供たちからしたら、全校生徒が8人ということが驚きです。本校はここ10年で児童数が増え、教室も足りなくなってきたので、新校舎ができました。今は3密を避けるために、校庭で遊ぶ際も、児童を半分に分けているほどです。

一口に言えば、本校は「人が多すぎる」という問題を抱えている。それに対して、鹿児島の学校は「人が少なすぎて存続の危機」という問題を抱えています。

こうしてオンラインでつながれば、自分たちが置かれている状況とは全く違う、知らない課題も身近に感じることができるし、解決策を一緒に考えることもできます。

コロナの第2波に備えた学校のオンライン化については、正直ほとんど進んでいないのですが、こうして学校再開後もICTを活用することが、第2波が来たときにも生きるのではないかと思っています。

子供を取り締まるのではなく、良さを伸ばす
――コロナ禍において「GIGAスクール構想」が大幅に前倒しされるなど、1人1台端末の環境整備がぐっと前進する流れになっています。

今年の1~2月に、調布市教育委員会から依頼を受けて、私が当時担任していた5年生の学級で、1人1台端末の実証実験を行いました。

私は正直、ICTに詳しくなかったので、1人1台の環境整備にあまり必要性を感じていませんでした。それでも始めて数日で、それが確実に必要であり、子供たちの学びが深まるという実感を得ました。1人1台になることで、学校の授業スタイルは大きく変わると思います。

その2カ月間、さまざまな授業で活用することで、私たちが思っている以上に子供たちがタブレット端末を使いこなせることが分かりました。大人が信頼していれば、子供たちは大人の想像を飛び越えて素晴らしい取り組みをします。

また、1人1台が実現すれば、知識の詰め込みは必要なくなると思います。最低限の読み書き、計算の反復学習は必要だと思いますが、それ以外に関してはICT端末を使って調べたり、調べた後に自分の考えを書いたり、対話する授業にどんどん変えていく必要があると考えます。

1人1台ずつの端末を活用することによって、「正解のない問い」に取り組む時間を増やしていく。そういう教育がこれからは必要だと思います。

――1人1台になった時に必要な教師の心構えは、どんなことでしょうか。

1人1台になることで、授業風景が大きく変わります。子供たちがみんな前を向いて座っていることはなくなるし、ざわざわしながら子供同士が話し合う、調べ合うようになります。ぱっと見、まとまりのない授業に見える。

そうした授業風景を教師が良しとできるかどうか。これまで良いとされてきた授業風景の解釈を変えられるかどうかに鍵があると思います。

1人1台になることで授業風景が大きく変わると予想している

また、タブレット端末は、教師が子供よりも知識を持っていないと使えないものではありません。むしろ、教師も子供と一緒に学び続ける意識を持たなければいけません。

そして何より、子供たちを取り締まるのではなく、自由を与えて良さを伸ばすことを意識するべきです。

そのためには、良い意味での「ゆるさ」や「自由度」がポイントになるでしょう。教師はつい「これをやりなさい」「こうしなさい」「これをやっては駄目」と、指示をしてしまいます。しかし、大切なのは、子供たちが自分で決めることです。子供たちに決めさせることが、子供を叱らないこと、取り締まらないことにもつながると思います。

教師たるものが「ゆるい」を実践することに、難しさを感じる方もいるかもしれません。「ゆるい」を実践するために大事なことは、まず自分の中の「良い教師像」を変えることです。そして、もう一つは周りの評価を気にしないことです。

周りの評価は気にしない
――横並び主義の学校社会において、周りの評価を気にしないというのは非常に難しいと思います。そうなれた理由は、どのようなところにあるのですか。

私は教師以外のこともいろいろとやっているのですが、その一つにラクロスがあります。昨年度は、女子ラクロスのU-19日本代表のヘッドコーチをやらせていただき、その経験が大きく影響を与えていると思います。

代表チームのヘッドコーチだったので、良い結果が出ないとすぐに「この人じゃ駄目だ」と言われます。しかし、いちいち周りの評価に右往左往してしまうと、自分の方針がブレてしまいます。

今回、U-19日本代表チームのテーマを「主体性」としました。例えば、ウオーミングアップも全員で一緒にやるようにはしませんでした。海外メディアに「日本人なのに、なんでこんなにバラバラなんだ!」と特集されたほどです。

日本人は何でも一斉に同じことをやりがちですし、やらなければいけないと思っている節があります。でも、体が小さい選手もいれば、大きい選手もいる。筋肉量が少ない選手もいれば、多い選手もいる。たくさん走るポジションの選手もいれば、ゴールキーパーのようにあまり動かないポジションの選手もいます。それなのに、同じウオーミングアップをする必要があるでしょうか。

昨年度は女子ラクロスのU-19日本代表のヘッドコーチも経験

「みんなの気持ちを一つにする」といった精神論がそうさせているのだと思うのですが、試合前に「頑張りたくない」選手なんて、いないわけです。

特に、日本代表レベルになれば、自分の体のことはその選手に任せるのが一番です。自分の心拍数をどれくらいまでウオーミングアップで高めておけば、ベストパフォーマンスが出せるかは、選手自身で考えさせるべきだと思っていました。

私は、選手が「主体性」を身に付けることで、どの年代の代表にも呼ばれる選手に育てたいと思っていました。各年代の代表ヘッドコーチは、それぞれ個性が強い。でも、ヘッドコーチが誰だろうと、選んでもらえるような選手を育てたかったのです。

学校でも同じことが言えます。どんな環境でも、どんな担任でも、それにちゃんと対応して生きる力を持っている子を育てたいと思っています。

今年度は6年生の担任ですが、中学生になって「担任と合わないから中学校生活は楽しくない」とはなってほしくない。自分を幸せにするかしないかは、自分で決めることだということを伝えて、子供たちが自分で判断できる機会をなるべく増やすように心掛けています。

(松井聡美)

【プロフィール】

庄子寛之(しょうじ・ひろゆき) 東京都調布市立多摩川小学校指導教諭。前女子ラクロス19歳以下日本代表監督。2019世界大会日本史上最高タイ5位入賞。学研教育みらい道徳教科書編集委員。みずほフィナンシャルグループ金融教育プロジェクトメンバー。文部科学省がん教育教材作成ワーキンググループ委員。著書に『学級担任のための残業ゼロの仕事のルール』、共著に『before&afterでわかる! 研究主任の仕事アップデート』、編著に『Withコロナ時代の授業のあり方』(いずれも明治図書)など多数。


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