【コロナ禍の夏休み】「登校2週間前」からの行動に注意

コロナ禍の緊張感と制限が伴った1学期を何とか越え、「短い夏休み」に入った学校現場。しかし新型コロナウイルス感染症の猛威は都市部のみならず、全国各地に再び広がりを見せ、予断を許さない状況が続く。感染リスクや慣れない学校生活の疲れを抱えながら、今年の夏休みをどう過ごし、2学期に向けどのような心持ちで挑むべきだろうか。子供の感染症の専門家であり、新潟県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の委員である齋藤昭彦・新潟大学医学部小児科教授と、全国養護教諭連絡協議会の常任理事である、さいたま市立高砂小学校の辻野智香養護教諭に聞いた。


何とか踏みとどまった1学期

齋藤教授は、学校や児童生徒を巡る新型コロナウイルス感染症の現状について、「感染が全国的にさらに広がってきて、学校での児童生徒、教師の感染報告が相次いでいる。最初はそれぞれを追跡できていたものの、今ではフォローしきれないほど増えている。保護者から感染した児童生徒が学校で感染を広げたり、教師が児童に感染させたりなど、さまざまなケースが出ている」と、状況の変化を指摘する。

一方で、「ここまで全国的に感染が広がると、学校現場で感染者が出るのは、ある意味、当然だ。ただ、これまでのデータを検証すると、学校内で大人と同様の大規模なクラスター発生や、学校で感染した子供が重症化した事例は国内で報告されていない。何とか踏みとどまっていると感じる。これは子供そのものが、ウイルスの伝播力が低いことの証明だ。そして何より、現場で感染防止策に取り組む教職員の皆さんの努力のたまものと評価できる」と話す。

感染リスクと隣合わせで運営してきた学校活動は、はや2カ月余り。マスク、手洗い、ソーシャルディスタンスの確保……。細かいルールを一つ一つ守りつつも、それが日常となってしまった今、現場では疲れや慣れが蓄積されている感も否めない。

齋藤昭彦・新潟大学医学部小児科教授

齋藤教授によると、先月末に報告されたイスラエルのある中高一貫校のデータが、小児科医らに衝撃を与えている。

報告によると、イスラエルの学校は全国的に3月13日から閉鎖、5月14日に感染防止策をとることを条件に全面再開にかじを切った。

該当の学校では再開時、全校生徒に向けて、感染防止対策の説明会を実施。しかしこの期間、熱波が到来し気温が40度を超えたことを受け、マスクの着用を免除し、教室を閉め切った上でクーラーをつけて授業を行った。その後2人の生徒が、感染症状があるにも関わらず登校したと判明し、結果、校内で大規模なクラスターが発生。全生徒(1161人)と教職員の大半(151人)を検査したところ、生徒153人(13.2%)と教職員25人(16.6%)が陽性だった。

「マスクをしていなかった、人が密集した、密閉された空間という状況が重なった。感染防止策をとらなければ、やはり学校でも大規模なクラスターが発生するという、一つの参考データになるだろう」と、引き続き学校現場でも感染予防策に留意するよう警鐘を鳴らす。

まずは子供に平穏な日常を

文科省が7月17日に公表した調査によると、全国の学校の95%が夏休みなど長期休業期間を短縮すると回答。夏休みの日数については、小中学校で最も回答が多かったのは「16日」、次いで「23日」、高校も同様に「16日」と「23日」がボリュームゾーンで、大半の学校が2~3週間に短縮することが明らかになった。

今年の夏休みは「2~3週間」が最多

萩生田光一文科相は「新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、子供たちの学びを保障するため、さまざまな工夫によって学校における指導を充実することは大事」と、夏休みの短縮を評価しつつも、「やはり夏休みにしかできない、貴重な体験学習や経験がある。準備をしていた児童生徒たちが、そういう機会を失うことがないように、出欠などについては柔軟な対応をしてほしい」と述べ、さまざまな状況に配慮して出欠を取り扱うように求めた。

さいたま市立高砂小学校の辻野養護教諭は、夏休みの過ごし方の指導について、「何より子供のメンタル面に寄り添いたい。平穏な日常を送らせてあげたい」と話す。

高砂小では土日を含め、8月1日からおよそ2週間の夏休み期間に突入した。保健室からは、歯磨きチェックシートの配布など、あえて「いつもと変わらない指導」を心掛けたという。

辻野養護教諭は学校再開時を振り返り、「手洗いや消毒の仕方、給食の食べ方、授業中や休み時間のソーシャルディスタンスの取り方など、テレビの校内放送を駆使して、とても細かく指導してきた。今ではその新しい生活様式が、すっかり子供たちの当たり前になっている。その分、本来であればこの期間に指導していた規則正しい生活や歯磨きなど、“当たり前の内容”に割く時間がほとんどなかった。コロナ禍の学校でできなかったことにじっくり取り組んで、少しでも日常を感じてほしい」と話す。

そして「感染拡大防止のための新しい生活様式は、学校だけでなく地域や社会全体で取り組んでいる。子供たちも相当なストレスの中、学校生活を送ってきた。なかなか外出もできない休暇となるが、自宅では平穏な日常を取り戻し、心を休めてほしい」と強調する。

公共交通機関はなるべく避けて

夏休みの過ごし方について、齋藤教授は「子供たちにとっては、とてもかわいそうな夏休み。出掛けること自体が制限され、移動手段や旅先での行動などこれまで通りではなく、変化が必要。常に感染のリスクがあること、感染を広げてしまう可能性があることを念頭に行動してほしい」と警鐘を鳴らす。

その中でも特に危惧するのが移動手段だ。「駅には人が集まるし、電車やバスは不特定多数の人が近くに寄って来る。できるだけ公共交通機関は避けて、車などで移動してほしい。ただ車を使っても、サービスエリアなど人が集まる場面は複数ある。混まない時間帯に行く、できるだけ滞在時間を短くするなど工夫してほしい」と呼び掛ける。

夏休みの一大イベントの一つが、お盆の帰省だ。帰省の可否を巡っては政府や各都道府県などで、判断が分かれている。

齋藤教授は「都道府県をまたぐ移動、特に感染者が多い地域からの移動は、できるだけ自粛したほうがいい」と指摘。「万が一、子供たちが感染した状態で実家に帰省し、この感染症にリスクの高い高齢の祖父母に感染を広げてしまうことは、残念な事態だ。また家庭内感染も広がりつつある今は、リスクを避けるべきだろう」と話す。

登校2週間前から特段注意を

それではこの夏休み、どう過ごせばいいのだろうか。

齋藤教授は今年の夏休みは2~3週間ほどと短く、外出できない子供が多いとした上で、「2学期が始まる日に、子供たち全員が元気に登校し、可能な限りウイルスを持ちこむリスクを少なくすることが重要。ウイルスの潜伏期間を考慮して、学校再開の2週間前からは感染リスクの高い行動はできる限り避けてほしい」と呼び掛ける。

さらに家庭内での感染を防ぐため、保護者や児童生徒と同居する家族、そして教職員たちも同様に、「学校再開の2週間前」からの行動に配慮するよう強調。「児童生徒本人だけでなく、家庭と学校現場一丸となって、学校を守るために準備を進めてほしい」と話す。

この1学期の学校現場の取り組みについて、齋藤教授は「何とか乗り切ったことは大変素晴らしく、各学校の先生方に敬意を示したい。現場の先生は何を、どこまでやればいいのか分からない手探りの状態から、自分たちでいろいろと考案しながらやってきた」と評価する。

一方で「2学期以降は、これらの独自で進めてきた感染防止対策を一つ一つ検証して、有効かどうか見定めるときがきている」と話す。

例えば一部の学校で取り入れるフェースシールドや教卓の周りを囲うビニールシートなどについては、専門家からもその有効性を疑問視する声が相次いだ。

さらに熱中症の危険性の視点から、マスクの着用についてもさらに工夫をしていく必要がある。

齋藤教授は「着けるタイミングと、外すタイミングのメリハリをつけるといい。例えば、周囲に誰もいない通学路や、学校内でも誰もしゃべっていない環境では外してもリスクが低い」とアドバイスする。

(板井海奈)


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