【ガーナ編】学校の様子と教員の生活スタイル

日本と同じ6-3-3-4制

「ウェゾ(ようこそ)!」

教室の外に並べられた木の机で宿題をチェックしていた教員が、現地語のあいさつとともに、青いペンを握ったままの右手を振り上げながら笑顔で迎えてくれた。

二輪車で、でこぼこ道を走り、村を通り抜け、街中から1時間ほど――。電線なんて視界に入らない真っ青な空の下に、ところどころ青く茂る芝生が広がる校庭(とは名ばかりの広い空き地)があり、その向こうにわらぶき屋根の小屋と、ガーナではお決まりのクリーム色に下半分が茶色に塗られた壁にトタン屋根の校舎が見えた。

休み時間の教員は外の机で課題チェックをしたり、おしゃべりをしたり

ここは、ガーナ共和国アカチサウス郡にある公立小学校で、私の青年海外協力隊(現在のJICA海外協力隊)としての巡回先でもある。

ガーナの教育制度は日本と同じ6-3-3-4制で、小中学校の9年間が義務教育。公立と私立の学校があり、義務教育段階において授業料は無償だ。

算数(数学)、理科、社会、英語、エウェ語(現地語)に加え、体育や音楽、情報(ガーナではICT=Information Technology and Communicationという)などが時間割に並んでいる。しかし名ばかりの時間割になっていることも少なくない。

PCを見たことがない教員も多数

私は青年海外協力隊として、郡の教育事務所(日本で言う教育委員会)に配属され、ICTの巡回指導を担当した。ガーナの小中学校のICTは、日本での小学校外国語活動に似ており、当初は指導科目にはなっていなかった。

2008年ごろから教育省がICT教育の充実を強調し始めた結果、小学生から必修科目となった。指導内容はPCの機能や使い方、WordやExcel、中学生になればPCの中のパーツやその働きなども学ぶ。

一方で、多くの小中学校教員が教員養成校に在籍していたころには、ICTはカリキュラムに含まれていなかった。それどころかPCなんて触ったことも、見たこともない教員も多く、教科書と学習指導要領があっても、実体験に基づいて子供に教えることには困難が伴う。さらに学校にPCの実物がないことや、電気すら通っていないことも珍しくない。そのような状況下で、ICTの授業をサポートするために、私は今日も村の小学校を巡回する。

二輪車に積んだ十数個の壊れたキーボードとマウス、キーボードのキーを拡大印刷した巨大キーボードポスターなどの教材を荷ほどきしていると、男性教員か男子生徒が駆け寄ってきて、代わりに教室まで運んでくれる。女性に対して自然と手を差し伸べてくれるのは、ガーナ人の大好きなところの一つだ。

教育事務所の数名のスタッフと小学校からそれぞれ30~60円ずつの寄付を募って、元協力隊員が立ち上げたNPO法人を通じて入手した中古のラップトップ1台も授業で活用する。

私のデモンストレーションの後に、エウェ語で改めて説明してくれる教員

まずは私がデモンストレーションをしながら英語で説明し、教員に現地語に訳してもらって、その日の課題を覚えてもらう。

グループに分かれた子供たちは順番に出てきて、教員の現地語での説明をもとに作業をする。この授業スタイルを取ることによって、現地の教員も実技のやり方を覚えられると考え、チームティーチングを心掛けた。

残りの子供たちは、壊れたキーボードでタイピングやマウスの使い方などを試す。ラップトップどころか、キーボードもマウスも実物を見るのは初めての子供が多いので、喜々として触りたがる。マウスを耳に当てて「Hello ?(もしもし?)」「Yes, I’m fine!(はーい、元気だよ!)」と、携帯電話に見立てて電話ごっこをする子供もいた。

教員の昼食と給食

田舎の学校では、教員配置数の問題や児童数の関係で、2学年を1クラスにまとめている場合が多いので1日2~3回の授業を行う。

上級生による「授業終わりです~!」の叫び声で、1日の授業が終わる。始業と終業の合図は、教室の外につるされたさびたタイヤのホイールをカンカン鳴らしたり、係の生徒が「始まり(終わり)です!」と叫んで回ったり、学校によってさまざまだ。

そのタイミングを見計らって、学校周辺の村の女性たちが、教員のために用意した昼食を持ってきてくれる。青空のもとに並べられた(教員たちが採点で使っていたものと同じ)机を囲み、1つの皿に盛られた食事を教員と私でシェアして手で食べる。

いくつかの学校では村の女性たちが集まって、教員だけでなく子供たちの給食も用意しており、1週間のメニューが貼られている学校もある。給食は親たちの寄付や食材の持ち寄りによって提供されており、給食を導入するか否かは保護者会のような場で決められる。

キリスト教徒のガーナ人は食事の前に必ずお祈りをする

昼食を食べ終えると私は教育事務所に戻る。教員たちは残って、授業中に提出された課題のチェックをしたり、保護者がふらっとやって来て世間話や悩みを話したりするのを聞いたりした後に家路につく。

さまざまな通勤形態

学校が所在する村にもともと住んでいる教員や、周辺に一部屋借りて週末だけ街にいる家族のところに戻る教員、街中から二輪車で毎日通う教員など、教員の生活スタイルも通勤形態も多岐にわたる。若い教員ほど街中から通いたがる傾向が強いと、ある年配の校長は教えてくれた。

しかし街中から通う場合、問題がある。雨季の期間中、通勤できなくなってしまう日があるのだ。雨だからという理由で学校の授業がキャンセルになるのは、ガーナでは珍しいことではない。

二輪車以外に通勤手段がないので仕方ないとは思いつつも、子供に学校で学んでほしいと願う親は多いはず。そんな保護者の思いと教員の思いがかみ合わなかった小学校のエピソードを、次回の記事で紹介します。

【十田(中野)麻衣=とだ(なかの)まい】JICA技術協力プロジェクト専門家。専門はアフリカの教育開発学(初等教育・高等教育)。


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