【ガーナ編】教員と保護者のすれ違い 村の学校で授業参観

雨で学校に「行かない」教員

熱帯気候に属するガーナに四季はなく、雨期(4~9月)と乾期(10~3月)に分かれる。小学校から高校までは日本と同様に3学期制を取っており、3学期の4~7月がちょうど雨期とバッティングする時期だ(学年度は9月に始まり、1学期は12月まで。2学期は1~3月となっている)。

青年海外協力隊の私と同様、自宅から勤務校まで二輪車で通う現地の教員も多いため、大雨が降った日はどうしたものか…。電車は通っておらず、タクシーも無いに等しい。タクシーは基本的には街の外に出るための移動手段であって、通勤で使うことは無い。

かといって車を持っている教員に私は出会ったことがない。また、基本的に幹線道路以外は舗装されていないため、ひとたび雨が降れば泥道に変わり、場所によっては大きな深い水たまりもできる。そうなると学校に「行かない」という選択を取る教員もまれではない。

雨期に通学路に現れる川

巡回先の一つに、本格的な雨期が始まると、水たまりどころか通勤路に川ができてしまう小学校があった。とても小さな村の小学校で1クラスだけなので、街の中心地に住む若手教員1人だけが配置されていた。

雨期に入る前に巡回指導に向かおうと、道なき道をかき分け二輪車で突き進むと、目の前に川が現れた。対岸から教員が「バイクはその草むらに止めておいて! 左側を回れば浅いから渡れるよ!」と言いながらズボンをまくり上げてこちらまで来て、ラップトップの入ったバックパックや教材を運んでくれた。私も靴を脱ぎ、泥で滑らないように慎重に川の端っこを歩いて渡り切る…ということもあった。

教員と村人とのすれ違い

教員が街中から通勤できるのは、乾期と(運が良ければ)雨期の初期、終盤だけで、限られた期間に授業が行われていた。一度だけ指導主事と一緒にその学校に行ったことがあった。

授業や子供たちの様子などについて、指導主事が教員から話を聞いている際に、ぽろっと「この村の親たちは学校運営にあまり協力的ではないから、学校運営会議に呼んだって来やしない…」と吐露した。その言葉がずっと心に引っ掛かった。

それから何度か授業を重ねたころに、村中の人たちが一堂に会す集会に呼んでもらえたので、遊びに行った。農作物の収穫をお祝いしたり、生活で困っていることを話し合ったりする中で、話題が学校のことに及んだ。

すると「いまの教員はこの村に住んでいないし、何よりも学校に来ないことがあるなんて信じられない!」との村人の声があり、「そうだ! そうだ!」と賛同まで上がった。

教員も村人たちも学校を良くして、子供たちに学んでほしいという思いは同じはずなのに、コミュニケーションを取る機会に恵まれず、すれ違っていることが分かった。

居ても立っても居られず、何かできないか考えた結果、私のICT授業への授業参観を教員に提案してみたところ、少し不安げな顔をしながらも了承してくれ、児童らを通じて村人らに参観日を伝えてくれた。

当日、川には遭遇せず二輪車で学校の目の前に到着すると、農作業で忙しい合間を縫って参観に来てくれた村人たちも、ちょうど着いたところだった。

「ンド ナミ! ンコ ネニャ アクヴィ!(おはようございます! 私の名前はアクヴィ=ガーナでの現地名=と言います!)」とエウェ語であいさつをすると、外国人がエウェ語を話すなどと夢にも思っていなかった村人たちの歓迎ムードが一気に高まった。

現地の人たちの言葉であいさつや自己紹介ができると、その地になじみ、文化や慣習を知ることの入り口になる。

前のめりになる村人たち

集まってきた児童らが教材を運んでくれ、授業参観を開始した。教員が率先して村人向けにラップトップやキーボード、マウスについて説明してくれた。少し張り切っているようにも見える。

児童が操作する様子を熱心にのぞき込む村人たち

今日の授業の課題は、前回、自分で打った名前のフォントと色を好きなものに変えることだ。私のデモンストレーションが終わり、児童たちが一人ずつ前に出てきて実践する番になると、村人たちは食い入るようにラップトップの画面をのぞき込む。教員の説明を一生懸命に聞いて、ラップトップで何が起きているのか理解しようとさらに前のめりになり、たまに教員に質問もする。

残りの児童が壊れたキーボードでタイピングの練習をしている隙を見て、恐る恐るキーを押してみるおじいちゃんもいた。児童が課題を終えると拍手が起こり、子供たちは照れくさそうにしている。

1時間ほどの授業が終わり、「面白かったよ、ありがとう!」とエウェ語で声を掛けてくれた。記念の集合写真撮影後に、村人たちはまた農作業に戻っていった。

キーボードに恐る恐る触れるおじいちゃん

後日、児童らが課題で作成した名前と集合写真を印刷しラミネート加工したものを、学校に届けに行った。キーボードに興味を示していたおじいちゃんが偶然にも、孫を連れて学校にやって来た。

教員が「参観日にやった課題を、アクヴィがきれいに印刷してくれました」と説明すると、おじいちゃんはそれらをいとおしそうな目で見つめていた。授業参観が、教員も努力をしていること、村人も子供たちの学びに興味があることを、双方が知る契機となっていたらいいと願わずにはいられない。

次回は、自身が生まれ育った故郷の教育をより良いものにしたいと奮闘する、最も身近で最も尊敬するガーナ人の姿を紹介したいと思います。

【十田(中野)麻衣=とだ(なかの)まい】JICA技術協力プロジェクト専門家。専門はアフリカの教育開発学(初等教育・高等教育)。


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