【ジブチ編】世界一暑い国の教育事情

暑さが学校に与える影響

「世界一暑い国」「夏の最高気温は50度を超えることも…」。インターネットで調べると、ジブチはこのような言葉で説明されていた。実際に空港に降り立ったときの、あの「ムッ」とした暑さ、まるでサウナの中にいるようなあの暑さが忘れられない。「これから約2年間、自分はここで生活していけるのだろうか」と不安になったのが、今でも思い出される。

私はここジブチで、JICA海外協力隊として約1年9カ月間活動した。ジブチは、私にとって初めて足を踏み入れたアフリカの地であった。言語、文化、宗教、気候、生活環境など、日本とは異なる場所での生活は大変刺激的なものであり、驚愕(きょうがく)することの連続だった。

ジブチの学校の各教室には、天井にバンテラと呼ばれる扇風機のようなものが設置されている。しかし、熱風をかき回しているだけなので、決して涼しい訳ではない。

小学校の教室の様子

昼間の気温が高くなる時間帯を避けるため、教師と子供たちは午前中の授業が終わると一度帰宅する。昼食や昼寝をとったあと、夕方4時ごろに始まる午後の授業のために再度、登校するのである。

気候が国民の生活や学校現場に与えている影響は大きい。街中のお店もお昼には一度全て閉まり、閑散とした街並みとなる。

ジブチの学校では運動会や音楽会などの行事はない。情操教育の重要性があまり認識されていないことも理由かもしれないが、暑さのため日中に長時間、外で活動することは控えざるを得ないのだ。

どの教科も授業はフランス語

ジブチにはソマリア系イッサ族と、エチオピア系アファール族という2つの部族が存在する。彼らの生活言語はそれぞれソマリ語とアファール語だが、かつてフランスの植民地だったジブチではフランス語とアラビア語が公用語となっている。イスラム教徒が大半を占めるため、コーランを読むためにアラビア語も必要不可欠なのである。1日に5回のお祈りをするためのモスク(イスラム教の寺院)も各地で見られる。

学校教育では、どの教科もフランス語で授業が行われる。小学校ではフランス語、アラビア語、高学年では英語も教科として学習することになっている。ジブチ人はフランス語、アラビア語、そしてソマリ語(もしくはアファール語)を習得している人がほとんどである。

英語に関しては、習得できている人は少ないようだ。日本と同じ状況といえるかもしれない。小学校では、他に算数・理科・体育の授業はあるが、音楽や図工といった情操教育はほとんど行われていない。

学校の夏休みは長い。フランスの教育制度に倣っているため、6月から9月の第1週目までが夏休みだ。また、6週間ごとに1週間の休暇もある。加えて、ジブチはイスラム教のため、毎年「ラマダン(断食)」の期間が1カ月ほどある。ラマダン中は、社会全体の活動が停滞する。日中は食事ができない上に、ジブチの暑すぎる気候のため、人々には活力があまりない。

テスト期間もあることから、年間の授業時数は明らかに日本よりも少ないと言える。実際に、教科書の内容が終わらない状況のまま、進級している児童生徒も多い。イスラム教の国であるジブチでは、毎週金曜日と土曜日が休日となり、日曜日から仕事や学校が始まる点も日本とは異なる部分である。

重要な地域開発センター

私は協力隊員として、首都ジブチ市の各地区に設置されている「地域開発センター」で、青少年の健全育成を目的に、さまざまなアクティビティをセンターの同僚と実施してきた。センターは国の青年・スポーツ省が管轄し、青少年にスポーツと文化活動の機会を提供している。もともとは非行防止のために設立されたという。

センターで絵画活動に挑戦。完成した絵を持って記念写真

学校が1年間のうち5カ月以上、休暇となってしまうこの国では、子供たちや住民が学校以外で学べる場の確保と、活動の充実が不可欠なのだ。そこで、市内に13カ所ある地域開発センターがその役割を担っている。日本の公民館や学童保育施設のようなところだ。

センターにもよるが、図書室やパソコンルーム、トレーニングルームもある。広いグラウンドがあるセンターでは、子供たちはよくサッカーをして過ごしている。

ジブチは日本ほど娯楽施設が豊かではないため、このセンターが子供たちにとって余暇を過ごす重要な場所となっている。地域住民の誰もが利用できる場所でもあり、家庭の事情などで学校に行っていない子供も多く利用している。

各センターにはその地域の小中学生で組織されたスポーツチームがあり、部活動のような側面もある。サッカーやバスケットボール大会、イッサ族やアファール族の民族ダンス発表会なども行われる。

はだしで、ボロボロのボールを追い掛ける子供たち

ジブチでは日本の中学校のように部活動が充実している訳ではない。学校は「知識を得る場所」であり、地域開発センターが「スポーツや音楽に触れる場所」として機能している。

センターでは地域住民に向けたアクティビティやイベントも豊富だ。裁縫教室、武道教室、ダンス教室、外国語教室など多種多様である。学校では経験できない体験をセンターで体験できる。子供たちや住民は自分のスキルを磨くなどしている。

次回は、ジブチの小学校で活動したときの教育現場の様子や、学校や地域開発センターで関わった人々について紹介したい。

(遠藤浩之=えんどう・ひろゆき、茨城県の小学校教諭。青年海外協力隊の任期を終え、現場復帰)


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