【北欧の教育最前線】スウェーデンで広がるeスポーツ教育

北欧諸国の放課後活動の様子を紹介するこのシリーズ、3回目はスウェーデンのeスポーツを取り上げる。スウェーデンの子供たちの放課後活動といえばサッカーが圧倒的な人気で、フロアホッケー、乗馬、器械体操、水泳、テニスと続く。週に一度以上、運動をしている生徒は中学校で67%、高校生では74%に達する。ここに割って入るようにして、サブカルチャーとみられてきたeスポーツがメジャーになりつつある。


民主的・開放的なスポーツ競技へ

スウェーデンの国語審議会が「e-sports」を「新語」に登録したのは2013年のことだ。eスポーツはコンピューターやテレビゲームを使って他者と競い合うことを目的とするが、ポーカーなどの賭博は含まれない。17年には世界で2億人以上のプレーヤーがいるとされ、スウェーデン国内でも競技人口が急速に増えている。

スウェーデンではeスポーツ協会が発足し、全国体育協会に加盟している。サッカーやフロアホッケーと同じように、健全なスポーツ競技として社会的認知を広げようとしている。

eスポーツ協会を構成する地域クラブでは、14年に「行動規範(Code of Conduct)」を策定した。eスポーツは大会で過度な競争をあおってトラブルが生じたり、高額の賞金を巡ってチート(ずる)をする人もいたりするため、対策が課題になることがある。「行動規範」では、大会の主催者に適正な運営のポイントをアドバイスしている。

プレーヤーに対しては、フェアプレーの大切さや対戦相手を尊重すること、肯定的な言葉掛けやコミュニケーションの重要性を説明している。また、プレーヤーの保護者に対しては、分からないことは子供に尋ねること、そして保護者も関心を持ち、ゲームの基礎を学び一緒にプレーしてみること、そして子供が参加する大会に行ったり、地域クラブの運営に参画したりすることを勧めている。

地域クラブを取りまとめるeスポーツ協会は、関連法案に対する意見表明なども行っていて、ポジティブで民主的・開放的なイメージを普及させたい考えだ。

高校でeスポーツが学べる

趣味や放課後活動であったeスポーツだが、最近では正規の教育課程として取り入れる高校が増えている。スウェーデンでは、2015年に2つの高校にeスポーツの専門科目が設置され、20年には80の高校でeスポーツ教育が提供されている。

進学情報サイトによると、eスポーツ教育は人気があるが定員が限られているため、競争率が高くなっている。そのため、進学するにはしっかり勉強して成績を上げることが重要だという。

初めてeスポーツの専門科目を設置したアーランダ高校は、体育に力を入れる学校だ。サッカーやハンドボールは国の指定を受けた本格的な授業を提供している。eスポーツは正規の課程になるため、生徒は大学進学の要件も満たすことができる。

授業ではプレーヤー育成のために、さまざまな指導を行っている。個人戦やチーム戦での防御、攻撃、調整などのゲームの実践を教えるほか、身体面、心理面でのトレーニングも行っている。さらに、ネットいじめやネット依存、ゲーム中毒といったeスポーツの負の側面についても学ぶ。

職業としてのeスポーツプレーヤー

スウェーデンのゲーム市場は、ヨーロッパで2番目に大きいと推計されている。最大の市場はロシアだが、スウェーデンの人口規模を考えるとその熱狂ぶりが分かるだろう。特にYouTubeやTwitchでのゲーム実況の消費が大きいことが知られている。

最近では、莫大(ばくだい)な賞金を稼ぐスター選手が生まれ、注目を集めている。スウェーデンのトッププレーヤーである「S4」ことグスタフ・マグナソン氏(28歳)は、これまでに2億円以上の賞金を稼いでいる。また、ヨテボリを拠点にする「The Alliance」のように、多国籍のプレーヤーが所属するチームも結成されていて、賞金ビジネスが成り立っている。こうしたプロ選手たちの華々しい活躍に憧れる中高生は多い。

(林寛平=はやし・かんぺい、信州大学大学院教育学研究科准教授。専門は比較教育学、教育行政学)


関連
この連載の一覧

あなたへのお薦め

 
特集