【ジブチ編】アフリカの現実と環境教育

汚れた街は撮影禁止

ごみはごみ箱に捨てる。そんな日本では当たり前のことが、ここジブチでは当たり前ではなかった。

開発途上国での生活は日本での生活と大きく異なり、衝撃を受けることが多々ある。私がジブチに来てジブチ人との生活の中で、まず初めに衝撃を受けたことの一つが、「ごみはごみ箱へ」ではなく、「その場にポイ捨てする」ということであった。

停車しているバスの横を歩くと、急にバスの窓から何かが飛んで来ることがある。紙くずやペットボトルなどのごみだ。決して人に当てようという悪意がある訳ではない。私たち日本人が、当たり前のように「ごみをごみ箱に捨てる」のと同じように、彼らも当たり前のように「ごみをポイ捨て」しているのだ。

もちろん、きちんとごみを持ち帰る人もいるだろう。ごみ箱があれば、きちんとごみ箱へ捨てる人もいるだろう。しかし、街での様子を見ると、それがきちんとできている人が少ないのは一目瞭然だ。街の商店街では、靴屋や子供服売り場など、さまざまな日用品のお店が立ち並んでいる。しかし一夜明けると、その商店街の前の通りは、靴の箱やビニール袋などで溢れかえっている。

そのような街のごみの様子を写真に収めようとしたことがある。活動先での啓発活動で写真を使用し、住民や子供たちに街のごみの現状について受け止めてもらいたいと考えたからだ。しかしある日、私が写真を撮っていると、住民に呼び止められた。「汚れた街の様子などを写真に収めることは禁止されている」と言うのである。

その話が本当なのか、交番に聞きに行くことにした。しかし、やはり「撮った写真は消すように」と注意を受けてしまった。不思議なことである。街を汚しているにもかかわらず、それを直視しようとしない。受け止めようとしないのだ。これが、アフリカの現実であった。

環境啓発に関する授業を行う

JICA海外協力隊としてジブチにやってきた私は、この環境問題を無視することはできなかった。ある日、活動先の地域開発センターの職員と近隣の小学校を訪れた際、校長先生と環境教育について話をする機会があった。ジブチの小中学校では、「自分たちの学校は自分たちで」というテーマで、月に1回、学校清掃活動が行われている。

日本では毎日、児童・生徒が学校の掃除を行うが、ジブチでは基本的に掃除婦さんが掃除をする。前回の記事でも紹介したように、学校は「知識を得る場所」であり、日本でいう特別活動や行事などを通して、子供たちの情操を育むといった狙いはないようだ。

しかし、今回は幸いにして、校長先生が環境教育に興味を示してくれたため、後日、担当教員、地域開発センター職員、そして隊員の私とで、その学校における環境啓発活動の可能性を話し合う機会をもった。そして、小学4年生と5年生を対象に、環境啓発に関する授業を行うことになった。

学校清掃活動に取り組む子供たち。ジブチでは貴重な機会

当日の授業では、まず「ごみが落ちている街」と「ごみが落ちていない街」の写真を子供たちに見せた。どちらが「きれい」で、どちらが「汚い」のかが視覚的に理解できたようだった。

その後、「バスに乗車中、ごみが出たらどうする?」と問い掛けると、子供たちからは次のような意見が出てきた。「自分のかばんにしまう」「家に持ち帰る」「家のごみ箱に捨てる」など。

普段の生活で、これらを心掛けるジブチ人を私はほとんど見たことがない。しかし、小学生がこのような意見を持っていることはうれしいことであった。そこから実際に、日常の行動に移せるか、自分のこととして考えられるかどうかは、日本の道徳教育と同じかも知れない。

ロールプレーとポスター

さらに、世界のごみ山の存在などを写真とともに説明したり、ごみを捨て続けた結果についても考えさせたりした。自分たちが暮らしやすい衛生的な環境についても考え、実際に、バスの中をイメージしてごみを持ち帰る練習も行った。

数人の児童が、みんなの前でごみを捨てたり、拾ったりするロールプレーは、担当教員が事前の打ち合わせで、「ぜひ取り入れたい」と申し出ていたアイデアであった。「ごみは家に持ち帰らなきゃ!」とのセリフを自発的に交えて実演してくれた児童もいた。

そのロールプレーの後に、最後の活動として「ごみのポイ捨て禁止」ポスターを一人一人に作成してもらった。普段、図工の授業がないジブチの小学校では、子供たちにとって「ポスター作り」はたやすいことではない。啓発を意識する標語の文字の部分と、ごみ箱のイラストは色塗りができるようにし、それ以外の部分は子供たちの発想に委ねた。ごみをごみ箱に捨てている自分の様子や、ジブチ国旗を描いている児童もいた。

一人一人がオリジナルの「ポイ捨て禁止」ポスターを作成

授業の最後に、数人の児童に授業の感想を聞いてみた。「ごみをポイ捨てしないようにしたい」「ちゃんとごみは持ち帰る」「他の人にもポイ捨てしないように呼び掛けたい」「自分たちの国の環境を自分たちで守りたい」などの声を聞くことができた。

現場の関係者とともに実施したこの活動は、今のジブチの環境問題を大きく変えるものではないかも知れない。しかし、日本人という外国人とともに、自分たちの国でのより良い環境や生活を考えた事実は、彼らにとって印象に残る出来事であったと思う。子供たちの心の片隅に少しでも残り、今後さらに環境問題と保全について考える上でのきっかけになってくれればと願っている。

(遠藤浩之=えんどう・ひろゆき、茨城県の小学校教諭。青年海外協力隊の任期を終え、現場復帰)


関連