【北欧の教育最前線】LGBTQ+関連のイベントと学校

北欧は性的マイノリティーの権利に関して先導的に取り組んできた。ストックホルムでは、毎年プライドパレードが行われる。これはLGBTQ+が社会の一員であることを示し、それぞれの生き方を尊重するための社会運動だ。今回はプライドの様子や学校とのかかわりを紹介する。


老若男女が楽しむお祭り

2018年7月末に「ユーロプライドストックホルム(Euro Pride Stockholm)」という1週間のイベントが開催された。毎年開催されるストックホルムプライドに、欧州の都市が持ち回りで行う「ユーロプライド(Euro Pride)」の開催が重なった形だ。プライドは、LGBTQ+(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア他)に対する社会の理解向上をうたう祭典である。

レインボーフラッグが掲げられた王立ドラマ劇場

中心部に設けられた「ユーロプライドハウス」という会場では、LGBTQ+に関するセミナーや討論会などが行われた。スウェーデンで初めて性的マイノリティーの人々にフォーカスした法律事務所による無料の法的相談会や、ゲイの合唱団によるワークショップも開催された。

「ユーロプライドパーク」という会場では、さまざまな企業のブースが設置されていた。LGBTQ+に関連したクイズや、レインボーカラーのメイク体験などに参加できる。レインボーカラーで装飾されたリストバンドやサングラスといったグッズも配られていた。これらには、企業のロゴが入っていて、企業の宣伝の一環としても利用されている。

プライドパークに参加する人々

印象的だったのは、イベント会場に幅広い年齢の人々が訪れていたことだ。赤ちゃん連れの家族や、子供からお年寄りまで、さまざまな人が参加していた。

夜7時になると、広場の中心に設置されたステージで、著名なアーティストによるライブが開催された。まるで、音楽フェスのような雰囲気だ。そして、メインイベントであるストックホルム市内を行進するパレードが盛大に行われた。

学校では賛否あり

学校がプライドイベントを行うこともある。ヒューディクスバル市のホースタ学校の生徒は、2年間の活動をもとにミュージックビデオを作成し、市のプライドイベントで発表した。歌詞も子供たちが考えたものだ。

「おかしなことがあったら“ダメ”と一緒に言おう」

「何を信じていてもいい、お互いにリスペクトしよう」

「LGBTでも“ヘテロ”でもいい、誰のことが好きでもそんなことは関係ない」

2年間、さまざまな理由に基づく差別について学習していく中で、子供たち自身が歌を作るというアイデアを思い付いたという。

地域のプライド期間中に、レインボーフラッグを掲げるプリスクールや学校もある。プライドを主催する団体は、学校向けに研修も提供している。

一方で、学校でのプライドイベントに反対する声もあるようだ。保守系のメディアでは、子供がパレードへの参加を強制されているように感じたり、自分の性別を疑うことを奨励しているように感じたりするという保護者の意見が紹介されている。また、プライドは、政治的なメッセージや利害関係も含んでおり、安易に学校に持ち込むべきではないという意見もあった。

みんなが暮らしやすい社会

ホースタ学校のミュージックビデオには、「みんなが幸せであることが大事」という歌詞が出てくる。プライドが、みんなが暮らしやすく、みんなが幸せになる社会を後押しするイベントだとしたら、その視点はスウェーデンの社会に浸透しているように見える。

例えば、スウェーデンの公共施設のトイレは男女の区別がない個室であることが多い。学校でも、男女別のトイレではなく、個室が廊下に並んでいるのをよく見掛ける。これは、性的マイノリティーだけでなく、障害がある人を含めて全ての人にとって使いやすい。

誰かの立場に立つ、ということ以上に、「誰もが暮らしやすい社会を目指す」というメッセージこそが、プライドが伝えてくれる価値なのかもしれない。

(松林杏樹=まつばやし・あんじゅ、信州大学教育学部卒業。
中田麗子=なかた・れいこ、東京大学大学院教育学研究科特任研究員。専門は比較教育学)


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