これからどう見直す? ブラック校則改善の戦略

「下着は白に限る」「髪を黒く染めてくるよう指導する(黒染め指導)」などの「ブラック校則」。社会問題としての世論の高まりを受けて、今、当事者である子供たちが声を上げている。多くの人にとって「非合理的」「時代遅れ」と映る学校のルールを見直すためには、どんな戦略が必要なのか。各地の動きから、これからの校則のあるべき姿を探った。


ブラック校則に苦しむ生徒たち

「個性を伸ばせと教えられても 同じカッコして模範解答 後ろの正面おいらのコピーか?」――。

自分の音楽で校則の問題を社会に訴えるBIKIさん(BIKIさん提供)

中学3年生ながらメジャーデビューを目指して本格的なバンド活動をしているBIKIさんは、11月にオンライン上で配信したライブで「Break Down School Rules―ブラック校則―」という新曲を発表した。その激しい歌詞には、BIKIさん自身が中学校で受けた指導に対する疑問が込められている。

BIKIさんの校則に対するジレンマは、入学初日から始まった。「そんな長い髪で教室に入っちゃだめだ」。突然、校長から言われた言葉を、BIKIさんは今も鮮明に覚えているという。小学生の頃から音楽活動をしていたBIKIさんにとって、長髪は自己主張のための武器。そう簡単に切るわけにはいかない。なぜ長い髪で教室に入ってはいけないのか、校長や担任と何度も話し合ったが、納得のいく理由や説明は得られず、BIKIさんはオルタナティブスクールに通うことにした。

2年生になって、オルタナティブスクール側の事情で毎日通えなくなったことから、BIKIさんは再び中学校に通うことを希望したが、そのときも長髪であることを問題視され、教室に入れないまま保健室で勉強する日が続いた。その後、3年生になって校長が代わり、ようやく「髪を縛れば教室に入ってよい」ということになった。

「今の校長先生は自分の話をよく聞いてくれる。でも、まだ特別扱いで教室に入れてもらっている感じがする」とBIKIさん。「髪の毛の色が黒に限られたり、靴下の色が決められていたり、友達も先生もそんな変な校則があることに、何もおかしさを感じないのだろうか。そういういらない校則は早く取り除いてほしい」と話す。中学卒業後も、BIKIさんはそうした思いを音楽に乗せて呼び掛け続けていくつもりだ。

高校2年生の沢田真奈さん(仮名)も、校則で苦しむ生徒の一人だ。沢田さんが通う神奈川県の私立高校では、髪形や制服の着方が細かく定められ、定期的に教員による検査がある。沢田さん自身、あまりにも厳し過ぎるルールにストレスを感じ、担任に訴えたこともあるが、最終的には「我慢してくれ」の一点張りで話が通じなかったという。

沢田さんは「巡回中の先生に、通学路でスマホを操作しているのが見つかると学校に呼び戻されたり、学校指定のマフラーを付けていないと取り上げられて返してもらえなかったりする。生徒との信頼関係などなく、まるで支配されているかのようだ」と憤る。さらに生徒に対しても「おかしいと思っていても、大学への推薦を取り消されるかもしれないと感じて、表立って意見が言えない。進路を気にして校則について何も言えずに苦しむ人も、勇気を持って『おかしい』と声を発信してほしい」と話す。

さらに沢田さんは、教員の間に漂う雰囲気にも危うさを感じている。「若い先生はみんな疲れきっていて、ハッピーにはとても見えない。校則が変われば先生だって楽になれるのに。このままで本当にいいのだろうか。こんな学校では、そのうち、生徒が誰も来なくなるのでは」。

ブラック校則は現在でも学校に残り続けており、それに苦しめられている生徒は今も確かに存在している。

学校と生徒が手を携えて

一方で、教員と生徒が連携して校則の見直しに乗り出す事例も出ている。

生徒が主体となった「筑坂魅力化プロジェクト」の話し合い(筑波大学附属坂戸高校提供)

埼玉県坂戸市にある筑波大学附属坂戸高校(田村憲司校長、生徒473人)では、今年9月から生徒有志による「筑坂魅力化プロジェクト(Classi×マイプロジェクトサポート)」が立ち上がり、生徒が主体となって学校の魅力向上策を検討する取り組みを始めている。

もともと海外からの留学生や外国にルーツのある生徒が多く在籍し、グローバル教育に力を入れてきた同校。深澤孝之副校長は「かつては、ピアスや髪染めの禁止は日本の学校として当たり前だと考えていたが、外国にルーツのある生徒から『出身国ではピアスは普通だ』と言われることもあった。ブラック校則への批判の高まりや国際化の観点から、これまでの価値を一律に押し付けることに課題意識を感じるようになった」と打ち明ける。

学校としてこの問題に本腰を入れて取り組むようになったきっかけは、昨年の生徒総会で女子生徒の化粧禁止などを定めた校則について、疑問視する意見が相次いだためだ。総会後、生徒会役員は意見を述べた生徒からヒアリングを重ねるなどして、校則改正の理由をまとめ教員に提案。それを受けて、学校が生徒有志を募る形でスタートしたのが「筑坂魅力化プロジェクト」だ。

プロジェクトには現在、テーマごとに5つのチームがあり、その中の一つに「制服の標準服化」がある。「これまで校則で指定されていた制服を標準服に改め、普段の学校生活では標準服でも私服でもどちらでもよいようにする」という大改革には当初、生徒間でも慎重な声があり、反対意見の方が多かったほどだという。

標準服化チームのリーダーで生徒会長の進藤将希さん(3年生)は「10月に約2週間のトライアル期間を設けてみたところ、8割の生徒が私服で過ごしていた。その後に実施した生徒へのアンケートでは、標準服化への賛成が8割以上になり『やってみたらよかった』という反応が多かった。当初反対していた生徒も、単に『嫌だから』ではなく、『制服によって高校生らしさを自覚することになる』といった意見を寄せるなど、しっかりとこの問題について考えてくれた」と振り返る。

こうした状況を受けて、同校では来年度から標準服化に踏み切る方針だ。

プロジェクトの広報班リーダーを務める塩川遥香さん(2年生)は「私たちの活動はブラック校則というよりも、国連の持続可能な開発目標(SDGs)やジェンダーへの意識がきっかけとなっている」と言い、標準服化が現実味を帯びてきた背景については「生徒と先生の距離が近いという校風も大きかった」と説明する。

一方で塩川さんは、ドイツで1週間ホームステイをした経験から、「ドイツの学校には日本のような校則がない。日本の学校は、なぜこれほどまで足並みをそろえようとするのか。統制を取るためかもしれないが、それが自分で考えることを難しくさせているのでは」と、日本の学校の校則の在り方に疑問を投げ掛ける。

生徒から声が上がってもルールがなかなか変わらないのが日本の学校だ。なぜ同校では、これほどまでスムーズに見直しへの筋道が描けたのか。

この点について深澤副校長は「本校のカリキュラム・デザインの中心にあるのは、生徒自身が何を大事にし、何をしたいかということ。教科の学びだけでなく、本来は生徒指導もその考えに基づかなくてはならない。それが今、学校全体に浸透してきたということだと思う」と分析する。それに対し進藤さんは「生徒が学校を変えようとするときには、先生に『この生徒たちなら任せられる』と信頼を勝ち取れるかが大事だ」と、教員と生徒間の関係性の大切さを指摘する。

学校の外からも見直しに向けて働き掛け

自治体として校則の見直しに本腰を入れて取り組んでいるのが、熊本市だ。同市教委が今年度から新設した学校改革推進課では、学校の働き方改革や市立高校改革などと並び、校則の見直しも主要な改革項目の一つに掲げている。

学校の校則に必要のないものが「ある」と答えた割合(熊本市教委が実施したアンケートを基に作成)

市教委が今年、市立の小中高校を対象に実施した実態調査では、校則の見直しについて「行われている」と答えた学校が9割以上に上ったが、児童生徒が見直しに参加している割合は小学校や高校ではほとんどなく、中学校でも半数程度に過ぎなかった。また、校則について「見直しが必要」だと答えた割合は▽教職員 29.6%▽小学生 30.3%▽中学生 34.7%▽高校生 46.2%▽保護者 17.0%――と、一定数が校則の見直しの必要性を指摘。必要がないと思う校則が「ある」と答えた割合は▽教職員 14.5%▽小学生 7.4%▽中学生 27.8%▽高校生 42.7%▽保護者 16.6%――だった。

さらに市教委では、10月に教育委員が現場の意見を直接聞くオンライン広聴会も開催。生徒や教員、保護者など38人が参加し、グループに分かれて活発な議論を繰り広げた。参加者からは「マフラーの着用や髪形のツーブロックがなぜダメなのか、明確じゃない」「先生の言う『中学生らしさ』とは、どういうことなのか」「LGBTへの配慮を考えると、制服などを男女で分けるではなく、個別に対応できるようにすべきだ」などの意見が出たという。

こうした議論を踏まえ、市教委では「児童生徒の意見を聞くこと」など、校則を見直す際の具体的な指針となるものを今年度中に策定し、各学校に取り組みを促す方針だ。

また、学校の外部からの働き掛けが、校則の見直しにつながったケースもある。

岐阜県大野町で学習塾を経営する山本真平さんは「学校が早く終わった日は、午後4時まで外出禁止」といういわゆる「4時禁ルール」の存在を知り、独自に実態調査や廃止を呼び掛ける署名活動を行ってきた。山本さんは「4時禁ルールがあることで、学校が早く終わった日に塾へ行って勉強しようとすると怒られる。これでは塾としてもしんどい。生徒から話を聞くと、校則に対する不満も大きかったし、他にも『町外への子供だけでの外出禁止』など、独自ルールがあることが分かった。まずはこの4時禁ルールから変えていこうと活動を始めた」と振り返る。

しかし、いざ山本さんが4時禁ルールについて調べていくと、これらのルールをいつ誰が主体となって決めたのか学校が把握していなかったり、教育委員会の説明が年によって変わったりすることもあった。また、4時禁ルールは大野町だけでなく、周辺の自治体にも同様のルールが存在する一方で、飛騨地域にはないことも分かった。

これらの情報を基に山本さんが地元のマスコミに働き掛けたところ、ニュースとして取り上げられることとなった。ちょうど岐阜県教委が校則の見直しに着手していたことも追い風となり、瞬く間にこの4時禁ルールは多くの自治体で廃止されることとなった。

山本さんは「内部だけでなく外部からも圧力がかからないと、学校は動かない。保護者や地域、弁護士など法律の専門家も巻き込む必要がある。そもそも学校外のトラブルも全て教師が見なければいけないという発想がおかしい。『今までがこうだったから』という思い込みをやめて、生徒にとってより良く、教師にとっても働きやすい学校にすることを第一の目的にして、ルールを考えていかないといけない」と指摘する。

(藤井孝良)


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