【ソロモン諸島編】 カンニング、おしゃべりなどに対策

この特集一覧

歌うことが生活の一部

朝の賛美歌

金曜日の朝、職員室では週1回の職員朝会が行われている。教室ではリーダーが前に出て、生徒たちが賛美歌を歌っている。とてもきれいな歌声でハーモニーを奏でている。

ソロモン諸島では95%の人がキリスト教で、毎週日曜日の朝早くから教会にお祈りに行く。私も時々参加させてもらったが、誰でもウエルカムで快く迎えてくれる。神父の話を聞き、みんなで賛美歌を歌う。朝から心が洗われる気がする。心地よい時間が流れていた。

だから、歌うことが生活の一部となっているソロモン諸島の子供たちは歌がうまい。学校では金曜日の朝だけホームルームの時間がある。賛美歌を歌い、お祈りをし、担任の先生の話を聞く。私は同僚のエリザベス先生について一緒に教室へ行く。

エリザベス先生は現地語で話していることが多く、内容はほとんど分からなかったが、服装や頭髪をしっかりしなさい、みたいなことを言っていた。それから「リスペクト」という単語がよく出てきた。お互いにリスペクトしなさい、ということだろう。生徒たちは真剣な表情で先生の話にじっと耳を傾ける。そして、授業でも先生の話を静かに聞いている。ソロモン諸島ではそれが当たり前だ。神父の話を聞くように、目上の人の話をしっかり聞く。目上の人を敬おうという態度が身に付いている。一昔前の日本みたいだ。

宿題をやってこない理由

しかし、学習内容はあまり身に付いていない。初めて数学のテストを行ったとき、平均点が30点でびっくりした。授業中、真剣な顔で話を聞いていたが、理解していなかったことが分かった。だから、私は日本と同じように毎時間、宿題を出すことにした。これで学力が少しは定着するだろう。しかし、ふたを開けてみると、クラス40人中、宿題をやってきたのは2,3人だけ。あぜんとした。「なんでやらないんだろう。やる気がないのかな」と思いながら、やってきた生徒たちを褒めまくる作戦に出た。しかし、全く効果がなかった。

なぜ宿題をやってこないのか。ソロモンの人々の生活を知っていくうちに、その謎が解けてきた。私が派遣されていたキラキラの町の家には電気が通っている。しかし町から離れると電気が通っておらず、夜になると真っ暗闇。町から離れた地域から通ってきている生徒も大勢いた。ソーラーパネルを取り付けている家もあるが、その光は微々たるもの。だから、夜に宿題ができないのだ。

さらにもう一つの理由。特に女の子に多いのだが、家に帰ったら家事をしなければならない。洗濯機などないから、洗濯は手洗い。家族も多いので、兄弟の面倒をみなくてはいけない。ご飯も作らなければならない。ほとんど自給自足の生活だから、畑を耕さなければならない。たくさんの家事に追われ、宿題をやる時間はほとんどない。ソロモン諸島では家族みんなで助け合って生きていかなければならない。中高生は家族の中で、いい働き手なのだ。

では、どうすれば学力を定着させることができるのか?

宿題をやる時間がないのであれば、授業一発勝負しかない。ということで、毎時間の最後10分間に、その日習ったことの小テストを行うことにした。そして、次の時間に返却し、解説を行った。事前に間違った生徒をチェックしておいてその生徒に指名し、どうして間違ったのかを発表してもらい、みんなで一緒に考えるようにした。

最初は間違ったことに対して恥ずかしそうにしていた生徒たちだったが、私が「Nice Mistake(良い間違いだね)!」と大げさに褒めると、恥ずかしそうな顔からちょっとうれしそうな顔に変わった。間違えることは恥ずかしいことじゃない、というメッセージを伝え続けた。これはかなり効果があった。問題が解ければやっぱりうれしい。理解しようという気持ちで授業を受けてくれるようになった。さらに誰が理解していて誰が理解していないのかを把握できたので、授業中の個別指導もしやすくなった。

テストではカンニング

もう一つ、気になっていたことがあった。ソロモン諸島の学校でも定期テストがある。私が試験監督に行って驚いたこと、それはカンニングしまくり、という現状。文房具の貸し借りは当たり前、隣の子とコソコソおしゃべり。「ソロモンではこれが当たり前なのか?」と思いながらも、落ち着かないので、作戦を練ることにした。

まずは文房具の貸し借りをなくすために、定規と修正液を貸し出すことにした。ところが、返してくれず持って帰ってしまう。そこで、貸し出す文房具に一つずつ番号を振って、必ず回収することにした。また、消しゴム付きの鉛筆を準備して、売りもした。これがまた結構売れた。そうしていくうちに、テスト中のざわつきがだんだんと減っていった。

農業のテスト

また、ソロモン諸島の学校には「農業」という日本とは異なる教科があった。ソロモン人の生活に密着していると思った。彼らは農作業をし、収穫物をマーケットで売ってお金を得ていた。ここには働ける仕事があまりないので、農業をしてお金を稼ぐしかない。

生徒たちは学校の敷地内にある畑にチャイニーズキャベツと呼ばれる、白菜のようなものを植えて育てていた。そして、それはお金を出せば売ってくれるシステムであったため、私はいつも夕飯のおかずにしていた。定期テストには「農業」のテストもあった。

同僚に「テスト監督を手伝って」と言われたので、行ってみると、生徒たちは最初は教室の中でテストを受けていたが、途中からはぞろぞろと教室の外に出ていく。「何事だ?」と思って見てみると、農機具が並べてあって、その名前を答えるテストだった。「なんか、ソロモンらしいなあ…」と思った。そのころにはもう、いろいろなことに驚かない自分がいた。「これがソロモンスタイルか」と思えるようになっていた。

ソロモン諸島には「ソロモンタイム」という文化がある。私も最初は慣れなかったが、だんだんと居心地がよくなっていく自分がいた。次回は、ソロモンタイムと私がソロモンの人々から学んだことについて書きたいと思う。

(奥山美沙=おくやま・みさ 青森県出身。大学卒業後、数学の教員として青森県の中学校に勤務。現在は専業主婦)


この特集一覧
関連

あなたへのお薦め

 
特集