土日の部活動 地域展開の課題と可能性

学校の働き方改革の一環で、文科省は土日の部活動を地域が担い、教員は関わらなくてもよい環境づくりを2023年度以降に整備していく方針を示した。地域スポーツクラブの活用や競技志向ではない新しい部活動の展開など、すでに一部の学校では地域との連携が進んでいる。部活動を地域が担う形にするには、どのようなハードルを越えなければならないのか。新たな取り組みを始めた学校を取材し、部活動の専門家に話を聞いた。


各地で進む総合型地域スポーツクラブへの移行
富士見丘中学校の「トレーニングスポーツクラブ」

体育館に入ると、練習をするバスケットボール部の隣のコートで、体幹を鍛える筋肉トレーニングに取り組む生徒の姿があった。東京都杉並区立富士見丘中学校(渋谷正宏校長、生徒234人)では、一部の部活動を外部に委託している。その一つ「トレーニングスポーツクラブ」を指導するのは、スポーツイベントの運営や外部指導員の派遣などを行う民間企業「Sports&Works」のインストラクターだ。活動は週に2回だけ。特定の競技をするのではなく、体力づくりをしたいと考える生徒や、普段はクラブチームに所属している生徒などが参加し、トレーニングやダンスなどさまざまなプログラムに取り組んでいる。

以前から中学校の部活動の在り方に課題を感じていた渋谷校長は、着任2年目の17年度から、同校の部活動改革に着手。テニス、陸上、吹奏楽の各部を学校指定部活動と位置付け、複数顧問体制で教員の負担を減らしながら活動を継続できるようにした。一方で、野球部などの部活動は順次部員の募集を停止することとし、思い切った精選にかじを切った。

それと同時に、将来的な総合型地域スポーツクラブへの移行を想定し、外部に運営を委託して実施する「トレーニングスポーツクラブ」や「ボランティアクラブ」を創設した。「もともと都心で部活動への依存度が低いこともあり、部活動の中身を変え、競技志向から脱却する必要があると考えた。そこで、まずは脱中体連、次に脱教員、最後に脱学校の3段階で改革を進めることにした」と話す。しかし、第3段階の総合型地域スポーツクラブへの移行は、思うように進んでいないという。

その理由については、「部活動の指導や運営をしてくれる外部人材の確保や組織づくりには時間がかかる」と説明。その上で「日中は体育館などの学校施設を地域に開放して、その管理や運営をしながら、放課後は部活動の指導をするような総合型地域スポーツクラブができれば、経営も安定し、地域に開かれた学校づくりも進む」と理想像を語る。同校は現在、新校舎の建設が進んでおり、渋谷校長はこの新校舎こそが部活動の脱学校を達成する大きな鍵を握ると見ている。

岐阜県羽島市立竹鼻中学校(増田恭司校長、生徒551人)は今年4月から、全ての運動部の休日の活動を地元のスポーツクラブへ移行することを決め、注目を浴びている。

決定に至った理由は大きく3つ。1つ目は部活動の指導を地域人材に任せることで、教員の負担軽減を図るため。2つ目は、生徒の部活動の選択肢を増やし、休日の過ごし方の充実を推進するため。そして3つ目は、保護者の負担を軽減するためだ。

同校の杉山正高教頭は「休日の部活動のクラブ化によって、生徒はより主体的な活動と競技力の向上を望めるようになる。教員は土日に休養する時間を十分確保できる」と狙いを説明。この試みに期待を寄せる。

一方、土日の部活動のクラブ化では、さまざまな課題も想定される。真っ先に挙げられるのは、部活動顧問とクラブ指導者の連携だ。部活動とクラブで指導方針が違えば、生徒は混乱する。また、そうした心配から部活動顧問の教員が自ら希望して土日のクラブ活動で指導する場合、かえって負荷が増大することも懸念される。こうした課題について杉山教頭は「すでにスポーツクラブの指導者が部活動指導員として平日に指導している部もある。顧問が土日のクラブにも参加する場合は、月曜の授業に支障がないよう自己管理を徹底してもらうなど、来年4月のスタートまでに、それらの課題は整理していきたい」と話す。

部活動の分割で解消できた課題と得られた成果

山形県北西部に位置する庄内町では、部活動の「分割」で、運営上のさまざまな課題に対応することにした。

スポーツ庁の「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」に基づき、同町が独自に策定したガイドラインでは、小中学校のスポーツ活動を▽部活動▽支援クラブ活動▽その他の活動(生涯スポーツ活動)▽スポーツ少年団(小学校)――の4つに分類。従来からの部活動を、他の3種のスポーツ活動が補完する関係に整理した。このうち支援クラブ活動は専門知識のある指導者が担い、必要があれば部活動をフォローし、技術向上などもサポートする。

部活動と支援クラブ活動はどちらも学校や教育委員会の管轄のため、実質的には部活動が2つに分割された形とも言える。部活動の指導は基本的に学校の教員、支援クラブ活動の指導は保護者会と教育委員会が委嘱した地域指導者が担う。しかし、実際には両者が綿密に連携を取り、ほぼシームレスに部活動の現場で指導に当たっている。顧問の教員と地域指導者は、監督とコーチのような関係に近い。

また、生徒は部活動のみ参加することも、部活動と支援クラブ活動の両方に参加することもできる。現状はほとんどの生徒が2つのスポーツ活動を掛け持ちしており、実質的には一つの連続した活動になっている。

この制度を開始してから2年目を迎える同町では、中学校の部活動と支援クラブ活動がうまく連動し、成果を生んでいるという。

同町教委の髙橋一枝指導主事は「スポーツ活動に2つの枠組みがあることは、特に練習時間の順守に有効だと感じている。例えば、部活動は1時間で終わらせ、その後は支援クラブとしての練習に切り替わるといった具合に、2つの活動を柔軟に使い分けることでメリハリができ、練習の質や効率が高まった。もちろん、トータルの活動時間には基準を設定しているので、掛け持ちによって活動が過剰になることはない」と説明する。

町内に2校ある中学校では、活動時間が減ったにもかかわらず、大会などの成績は上がったという。

さらに思わぬ効果として、保健室の利用数も減少しているという。髙橋指導主事は「練習の時間や内容が適正になったことで、これまでより生徒の疲労がたまりにくくなったことが、要因ではないか」と分析する。

同町は地域リソースを最大限に活用し、最終的には4つのスポーツ活動をスムーズに連動させることを目指している。現状はそのファーストステップをクリアしたに過ぎないが、学校や教育委員会、保護者、外部指導者らが定期的に研修や会合の場を持つなどして、次なるステップへ向けて歩みを進めている。「部活動と支援クラブ活動の連携はある程度形になりつつある。ただ、その他のスポーツ活動との連動となると、中体連の壁もあり、なかなか難しい部分がある。地域のスポーツ施設などと連携できれば、多様な競技にも対応できるようになり、スポーツの選択肢はさらに増える」と髙橋指導主事は展望を語る。

アウトドア部が担う地域再生
アウトドア部の活動としてカヌーを楽しむ生徒ら(まつのやま学園提供)

小中一貫校の新潟県十日町市立まつのやま学園(相澤顕学園長、児童生徒80人)では、ある部活動が地域の魅力発信のシンボルとなっている。

同学園がある松之山地区をはじめ、少子化の影響が深刻な同市では、既存の部活動の再編が課題になっている。そうした中で、20年度から同学園に新設された2つの部活動のうちの1つが「アウトドア部」だ。名称からも分かるように、大会での勝利を目指すわけではなく、釣りやカヌーなど、純粋にアウトドアを楽しむことを目的としている。一般的な部活動と大きく異なるのは、松之山地区の「資産」を最大限に生かすことが、創部の目的に含まれていることにある。

同地区には、ブナの原生林や日本三大薬湯で知られる松之山温泉などがあり、豊かな自然に恵まれている。同部の副顧問を務める山崎正義教頭は「『地域の宝』を教育活動はもとより、部活動にも生かすことができないか」と考えたことが、創部の原点にあると説明する。ちなみに、顧問は教員ではなく、地元でキャンプ場を経営する外部人材が務めている。

さらに山崎教頭は「『学園をいつまでも地域に残す』ため、地域にとって大きな魅力となることを目指した」との思いを明かす。19年度に同地区で生まれた子供の数は、わずか3人。「何もしなければ過疎化が進む地域では学校がなくなってしまう」との危機感が、学校関係者にはある。

そこで同校は小規模特認校制度を活用し、県外を含む校区外から子供を受け入れられるようにした。「松之山に住んでみたい」「松之山の学校へ通ってみたい」という家庭を増やすためにも、地域の魅力を高める可能性を持ったアウトドア部に寄せる期待は大きい。

その成果は早速表れている。近隣の中学校から問い合わせがあったり、地域や移住をテーマにした雑誌に取り上げられたりと、アウトドア部の活動に注目が集まりだしているのだ。

山崎教頭は「アウトドア部の活動は『遊ぶことの楽しさ』『変わりゆく自然の素晴らしさ』など、人間が豊かな心を持って生活していく上で大切なことを教えてくれる。子供たちにとっても、大人にとっても、さまざまな可能性を秘めている。その可能性を探ることが、地域の可能性を探る原動力となり、学校と地域が手を取り合って共に未来へ向かって進んでいくことにつながる」と展望を語る。

地域展開で本来の「クラブ」の姿に
学校の働き方改革を踏まえた部活動改革のスケジュール

改革が各地で進んでいるとはいえ、休日の部活動の軸足を学校から地域に移していくことは容易なことではない。全国の部活動について調査研究を行っている長沼豊学習院大学教授は、こうした改革を部活動の「地域移行」ではなく「地域展開」と捉えるべきだと強調する。現状の形を維持したまま地域で行うのではなく、地域の状況に合わせて多様化させていかなければ、持続しないとの指摘だ。

中でも大きなネックとなるのは、大会の在り方だと長沼教授は言う。

「これまでの部活動は大会が中心で、負けたら終わり。大会で勝つことを目指したチームづくりをしてきた。しかし、地域が主体となれば、目的に合わせてリーグ制を敷くことだって考えられるし、引退という概念もなくなり、生涯スポーツとして学校卒業後も続けられる」

こうした改革を進めるためには、伝統ある大会の主催者側にも変革が求められることになりそうだ。

地域を基盤に展開することになれば、部活動は学校教育から社会教育に位置付けが変わることになる。「大会運営や指導者の派遣では、企業などの参入も視野に入れることになるだろう。その際、経済的に厳しい家庭には必要な支援をするなどして、誰もが気軽にスポーツや文化を楽しめる環境づくりが欠かせない」と長沼教授。

「20年後には一層少子化が進む。昭和の時代の部活動を続けられるはずはない。地域が主体となって運営する本来の『クラブ』としてのコミュニティーに、早く脱皮しなければいけない」と打開策を提案する。

(クローズアップ取材班)


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