【北欧の教育最前線】学びの土台をつくるデンマークの「0年生」

北欧には幼小接続をスムーズにする、さまざまな工夫が見られる。スウェーデンの就学前クラス (関連記事はこちら)と同様に、デンマークには幼稚園クラスと呼ばれる、いわゆる「0年生」があり、学校教育への導入として重要な役割を果たしている。

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楽しく学べる環境づくり
0年生の初登校日。保護者向けのお知らせなどを入れるファイルには「わたしを見て」と大きな字で書いてある

0年生では、幼稚園を卒園したばかりの子供たちがスムーズに学校生活を送れるように総合的な準備をする。目的は、学校生活に慣れ、言語、数学的視点、自然現象、創造的・音楽的表現、身体と動き、参加と共同性の6つの要素をバランスよく伸ばし、学習の土台づくりをすることである。

わが家の子供は現地の公立小学校に通っている。0年生の個人面談で驚いたのは、ほとんど勉強の話が出なかったことだ。担任の先生たちとの面談はリラックスした雰囲気で行われ、「学校に楽しく通っているか」「クラスの中でどんな様子か」「誰と仲が良いか」といったことが主な話題だった。

デンマークには「楽しい環境でこそ学べる」という考え方が浸透している。友達と良好な関係を築き、学校が楽しいという土台があってこそ、学ぶ意欲が湧き、学力が伸びるという考え方だ。そのため、特に長い学校生活への導入となる0年生では、勉強より子供の様子や交友関係を重視しているようだ。

仲良しの友達ができればそれで良いというわけではなく、クラスの同級生全員との交流を大切にしている。先生は、子供に「誰と仲が良いか」「あまり話さないけれど仲良くなりたい子は誰か」などアンケートをとり、その回答を基に席替えをしたり、小グループを結成したりする。あまり一緒に遊ばない生徒同士をあえて同じグループにすることもある。

デンマークの義務教育は10年間で、多少の例外はあるが基本的にはクラス替えをしないので、0年生で良いスタートを切ることは長い学校生活を左右する重要な鍵となる。

机に向かうのは最長20分

勉強に関しては、子供に無理をさせず、好奇心を刺激する。面談で先生が「0年生は、集中して机に向かえるのはせいぜい20分。連続して20分以上、机に向かわせることはない」と言っていたのが印象的だった。子供が飽きないように授業時間を細かく区切り、小グループで活動をしたり、iPadを使って数や文字のアプリで遊んだりするなど、好奇心をもって学習できるように工夫されている。

また、遠足にもよく出掛ける。身体を動かすという目的もあるが、実際に五感で感じたことは印象に残り、結果として効率的な学びにつながると考えられているからだ。遠足では、港を散歩してカニの数を数えたり、森を散歩して拾った枝の数を数えたりもしているようだ。子供たちはこういった体験を通して、勉強は勉強として独立したものではなく、私たちの日常生活や現実世界に結びついた実践的な道具なのだということを体感する。

そのほか、季節ごとの行事はもちろん、誕生日をクラスでお祝いしたり、登校100日目を記念日としてお祝いしたりするなど、楽しいことを積極的に取り入れている。また、時間割には1つの教科のように「遊ぶ時間」もしっかり確保されている。おかげで、わが家の子供たちは頑張って勉強しているという感覚もなく、毎日楽しく学校に通っている。

子供にとって最良の選択を
筆者宅で開催した0年生の誕生会。誕生会は学校で開催することもあれば、クラスメートを家に招待することもある

0年生は1962年に初めてデンマークに導入され、80年に全国に設置された。導入当時、参加は任意だったが、次第にほとんどの家庭が0年生への入学を希望するようになり、2009年には義務教育の一環となった。しかし、その対応は画一的ではなくフレキシブルである。

長期的な学校生活を見据え、総合的にまだ準備ができていないと判断された場合、担任が保護者と話し合って0年生をリピートさせることもある。年齢に応じた横並びの措置ではなく、長期的な視点に立って、子供自身にとって最良だと思われる判断をする。そのため、同じクラスに年齢の異なる生徒がいるのは当たり前の光景となっている。

現在、コロナ禍の影響で、デンマークは全国的にロックダウン中である。今年に入ってからオンライン授業が続き、やっと学校生活に慣れてきたばかりの0年生の在宅学習が長期化することに関しては、懸念の声が大きかった。また、低学年のオンライン授業は親のサポートなしには成り立たないところもあり、在宅ワークをする親にとって大きな負担となっていた。

こうした背景もあり、デンマーク政府は2月8日から0年生を含む低学年の登校再開に踏み切った。0年生にとって登校できることの意味は大きい。親としてはこの決定に安堵するとともに、今後とも継続して登校できることを願っている。

(針貝有佳=はりかい・ゆか デンマーク在住ライター・翻訳家・リサーチャー)


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