3年目を迎えるゼロ高 堀江貴文氏に聞く

実業家の堀江貴文氏が主宰を務めるサポート校「ゼロ高等学院」が、開校から3年目を迎える。堀江氏の理想はどこまで実現されたのか。堀江氏と内藤賢司学院長にオンラインで聞いた。堀江氏は「子供たちは理解し、積極的に活動している」と話すとともに、教育全体についても「不登校は10年以内になくなる」「学校も必ず変わる」と語った。(聞き手・教育新聞編集部長 小木曽浩介)


入学後も積極的な子供たち
――前回のインタビューは、初年度の入学式があった2018年10月6日でした。あの時、堀江さんは「思春期を過ぎたら、みんな大人。背中を押すぐらいしか、われわれにできることはない」「ゼロ高は気付くための手段。みんなが本質に気付くきっかけを与えるため」と話されましたが、この2年間、実際に子供たちに接してみて、いかがでしたか。

「ゼロ高をつくってよかった」と堀江貴文氏(Zoomで取材)

堀江 ゼロ高を立ち上げたのは、普通の子が普通に、その辺にいそうな子という意味での普通ですけれど、きっかけや気付きなどを得て、変われるといいなと思ったからです。13、14歳くらいになると体はもう大人ですし、SNS、スマホなどが出てきたことによって、大人と伍して戦える。しかも生まれた家柄とか、人種とか、性別とか、そういったものによらずに、平等なフィールドで戦えるようになっているんですよね、現代は。

しかし社会制度が全く追い付いてなくて、いまだにそういうものが全くなかった時代と同じことをやっている。そこにすごくギャップが生じていて、僕から見ると、そんな黄金時間というか、ゲームの無敵モードみたいな時間が全く生かされていないのは、もったいなくて仕方なかった。

その時間を生かすと社会はより発展するし、僕たち大人もよりベネフィットを得られる。自分たちのためにも、ティーンエイジャーがもっと活躍できる社会の仕組みにしてあげた方がいいという問題意識があるんですよ。

その問題意識に対して、実際に僕が具体的に起こせるアクションとしてゼロ高を立ち上げたのですが、子供たちもそれを理解して、積極的に入ってくるようになりましたし、入学後も積極的に活動しているので、「ああ、よかったな」と思っています。

――現在の生徒数は何人ですか? また、入学してからの子供たちには、どんな変化が。

内藤 いま1年生と2年生が計約130人います。「取りあえず進学校に」という進路に違和感を持って入学してきた子たちが多いですね。全国から集まっています。入学当初は、大学進学以外の選択肢がないという状態だった生徒たちが、堀江と話すなどして、「寿司屋をやってみたい」「服を作ってみたい」「絵を描いてみたい」というように、自分の興味関心にちゃんと向き合って、内省できるようになってきています。生徒たちが自分で決断して、「大学に進学したい」「起業したい」「就職したい」と変化してきました。それは、とても意味があることだと思います。

――コロナ禍の学校活動への影響はありませんか。あるいは一斉休校を受けてオンライン授業が一般化してきた結果、生徒の問い合わせが増えたということなどは。

「生徒たちは自分で決断するようになった」と内藤賢司学院長(同)

内藤 ないですね。ゼロ高としては全く変わってないです。問い合わせに関しても、順調に増えてはいるのですが、コロナ前と増え方が変わったかというと、そうでもありません。私もコロナの影響でかなり増えるのかなと思っていましたが、どうも「状況が分からないからこそ、地元の普通高校に行く」という選択をする保護者が多いようです。危機感から保守的な選択をしてしまうのかもしれません。

ゼロ高に入るか、入らないかはともかく、子供たちは他の世界があるということは理解するべきです。いろいろな世界を自分の目で見て学ぶことと、何より選択肢があるということを伝えたいです。

不登校は無くなる
――増え方が変わっていないのは意外でした。オンライン教育は不登校対策としても注目されていますし。

堀江 不登校という問題は、そもそも学校に行かなければいけないことが前提になっていますよね。でもそれは、例えばゼロ高やN高みたいなオンラインスクールが「キャズム」を超えれば解決しますよ。キャズム理論というのがあって、15%を超えると、オンラインスクールが珍しくなくなって、「僕はN高だから」「私はゼロ高だから」と言えるようになる。僕は10年以内に15%を超えると思っています。

――10年後には、不登校は無くなっているということですか。

堀江 ええ、10年以内に解決する問題だと思います。いまの増加率やペースを考えると、10年以内にそうなるんじゃないですか。高校に入る年齢の子たちの15%以上がオンラインスクールを選ぶようになると、一気に雪崩を打ったように、リアルな高校には行かなくなりますよ。

学校も必ず変わる
――不登校問題がというより、学校そのものが変わる、と。

堀江 教育が面白いのは、その時代の変遷で変化してきているからです。だから時間はかかるけれど、学校も必ず変わると思います。ただインターネットが作り出したイノベーションのスピードに、現実世界が全く追い付かなくなってきている。やっと今DX(デジタルトランスフォーメーション)なんて言っているわけです。僕はインターネットに出合ったころにその話をしていたから、なんと25年前ですよ。もう本当に驚異的な遅さです。

でもこれは、100年前だったら普通なんですよ。現実世界は100年前の物差しで動いているんです。学校はまさに100年以上前のシステムで動いているということです。とはいえ、変わることは変わるんです。

例えば日本の学校教育でいうと、数学などは大きく変わったんです。江戸時代から明治時代になって一番大きく変わったのは、実は数学なんですよ。江戸時代の算術はどこに重きが置かれていたかというと、数列と幾何学です。でもそれが明治時代になって微積分になった。

これは必然で、昔はほとんどの人たちが農民で、自分の土地から納める税金、つまり年貢を計算しなければいけなかったし、お金を借りて新田開発などをするので、複利計算がすごく大事だったから、数列を教えられていたわけです。

けれどいま、数列と幾何学は逆に置いていかれているというか、微積分などの方が大事になっているんですよね。それは工業化社会で、化学を重視するという流れの中で、学校教育も変わってきてシフトしたわけです。

だからそういう意味で言うと、学校も変わることは変わるんです。しかしインターネット以前のスピードでしか変わらないから、大きなギャップというか、問題が生じるんです。特に子供たちはデジタルネイティブなので、一番ギャップを感じていると思うんですよ。

あるべき教育の形への対応を
――コロナ禍で、学校の役割も見直された側面がありますね。

堀江 コロナによる一斉休校で出てきた保護者からの不平不満に、昼間に子供を預かってほしいということがありましたよね。勉強よりも、むしろ学童保育の方が大事なんじゃないかと思いました。

実は、僕の母は学童保育をやっているんですよ。会社を辞めた後、マンション経営がしたいと言うから、「そんなことではなく、もっとボランティアのような仕事をしなさい。あなたは子供が好きなんだから、学童保育がいいでしょ」とアドバイスしました。それで彼女は学童保育を選んで。現場に行くと、母はすごく必要とされているわけです。子供たちにも慕われて。

それを思うと、いま必要なのは学童保育とオンライン教育なんですよね。もちろん障害のある子たちについては、別の議論として考えなければと思いますが。

教育そのものはオンラインでよいとなれば、かなりスリム化できると思うんですよね。
例えば職人の世界はYouTubeなどの動画が出てきたことによって、すごいパラダイムシフトが起きていて、要は動画で教えられちゃうんです。動画で教えられるというのは、教育においてものすごいイノベーションですよ。国・数・英の勉強は、もう動画でいいとなる。

――ゼロ高では、「先生」はどういう役割をしているんですか。

内藤 「君だったらできるよ」と寄り添うことですね。

堀江 しかしそれも、先生は社会のことを知らないじゃないですか。だから社会を知っている大人の方が、実は適任だったりするんですよね。実社会がどういうものであって、どういうトラブルが起きて、どういう解決方法があって、「私はこうしたよ。あなたも頑張れ」と言ってあげられる大人となると、学校の先生ではないんですよね。

だから「私たち教員にいま何ができますか」と問われたら、「いますぐ先生以外のことをやっておいた方が」と思います。残酷ですが、いまの状況は近代国家ができたときの話に似ているんですよ。侍であることが逆に邪魔になってしまうというか、「刀の使い方なんか分からなくていいよ」みたいな。

このインタビューを読んだ教師の皆さんは、僕に対して怒りを覚えるかもしれないですよ。「ホリエモンは何を言っているんだ」と。けれど痛みを伴う改革は絶対必要なわけですし、教師は「いらなくなった士族」のようになりたくないのであれば、これからあるべき教育の形というところに対応していかなければいけないんです。


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